2013 Fiscal Year Annual Research Report
「ケトン体代謝により制御されるエピゲノム修飾と糖尿病の関連性の解明」
Project/Area Number |
24790244
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
上番増 喬 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10581829)
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Keywords | 糖尿病 / 栄養学 / エピゲノム / ケトン体 / 代謝の流れ |
Research Abstract |
近年、グルコースを代謝する過程で産生されるアセチルCoAが、ヒストンのアセチル化修飾に用いられることが明らかとなり(Science 2009)、栄養代謝とエピゲノムに関する研究が脚光を浴びてきている。栄養代謝とエピゲノムの関連性における重要な発見は、成人病胎児期発症説に代表される、胎生期の栄養環境が、成人期以降の疾病発症に影響を及ぼすことの発見である。すなわち、胎生期に低栄養状態に曝されることにより、何らかのエピジェネティックな変化を生じ、後天的に糖尿病などの生活習慣病の発症リスクを増大させることが想定されているが、その分子基盤は不明である。 ケトン体代謝の新たな作用点として「ケトン体代謝により制御されるエピゲノム修飾」に着目し、各組織における組織特異的なケトン体代謝の流れによるエピゲノム修飾の変化と糖尿病の関連性を明らかにすることを目的とした。今回、ケトン体代謝の流れの方向を定める2つの代謝酵素に着目しエピゲノム修飾への影響を検討した。その結果、ケトン体が代謝される方向により、ヒストン3のメチル化修飾が制御されることがわかった。この変化は、時間により振動し増減することから、ケトン体の代謝される経路と、代謝する細胞側の日内変動のような時間依存的に変化する状態の相互作用により、ヒストン修飾の変化やそれに伴う遺伝子の発現変動、細胞の状態の変化に関与することが明らかになった。さらに、この代謝酵素の発現の変化は、膵β細胞のストレス抵抗性に関与することが明らかとなった。これらの検討結果から、代謝産物そのものに加え、「代謝の流れ<Metabolic flux>」がエピゲノム修飾や表現型の決定に関与することが明らかとなった。
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