2013 Fiscal Year Research-status Report
プロスタノイドの急性腎不全病態形成における役割解明
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24790246
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小島 史章 旭川医科大学, 医学部, 助教 (30550545)
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Keywords | プロスタノイド |
Research Abstract |
腎障害の一因となる炎症関連因子である症性サイトカインとその受容体の発現についてEPl欠損マウスと野生型マウスを用いて比較検討した結果、シスプラチン投与後の野生型マウスの腎臓で認められるインターロイキンー1β(interleukinl1β: ILll β)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor-α : TNFα)およびTNFα受容体の発現増加が、 EP1欠損マウスでは有意に軽減されることを見出した。また、シスプラチン投与後の野生型マウスで認められる血清中のTNFα量の増加についても、EP1欠損マウスでは有意に軽減されることを見出した。さらに、摘出腎中のチオパルビツール酸反応性物質(TBARS)を測定することで、酸化的ストレスの主要な指標である脂質の過酸化を評価した結果、シスプラチン投与後の腎臓における酸化的ストレスの程度が、 EPl欠損マウスでは野生型マウスに比べて有意に軽減していることが明らかとなった。今回の検討により、シスプラチン誘発急性腎不全の病態形成におけるPGE2-EP1系の更なる重要性に加え、炎症性サイトカインと酸化的ストレスが急性腎障害関連因子としてPGE2-EP1系の標的因子となる可能性が示唆された。現在、EP1括抗薬による腎不全病態の改善が認められる否かを検討するために、シスプラチン投与後の野生型マウスの腎臓で認められる腎障害所見を指標として、EP1括抗薬の投与量や投与経路についての予備的検討を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通り、急性腎障害増悪因子である炎症性サイトカインの産生と酸化的ストレス反応が、シスプラチン誘発腎障害におけるPGE2-EP1シグナル系の標的となることを明らかにすることができた。現在は、最終年度に予定していたEP1拮抗薬を用いた解析の予備的検討も開始しており、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によってシスプラチン誘発急性腎不全の病態形成におけるPGE2-EP1系の重要性が示唆された。また、PGE2-EP1系の標的となる急性腎障害関連因子として炎症性サイトカインと酸化的ストレスの関与を示唆することができた。そこで今後は、EP1括抗薬による腎不全病態の改善が認められる否かを検討する計画である。また、今年度に明らかにすることの出来た腎障害時のPGE2-EP1系の標的となる炎症性サイトカインや酸化的ストレスの動態に対するEP1拮抗薬の作用についても解析を行う予定である。さらに、既に確立している尿細管細胞の初代培養の実験系も活用することで、EP1拮抗薬の急性腎不全治療薬としての有効性と作用メカニズムを検証したいと考えている。
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Research Products
(9 results)