2014 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタノイドの急性腎不全病態形成における役割解明
Project/Area Number |
24790246
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小島 史章 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (30550545)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロスタノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究によって、プロスタグランジン(PG) E2受容体のひとつであるEP1が、シスプラチン誘発急性腎不全の病態形成において増悪因子として働くことを見出した。更に、このPGE2-EP1系の下流の標的因子として、炎症性サイトカインや酸化的ストレスの関与が示唆された。そこで本年度は、EP1拮抗薬の効果を検討した。薬物投与群では対照群に比べて、血清クレアチニンと血液尿素窒素によって評価されるシスプラチン誘発の腎障害の程度が軽減する傾向は認められたものの、当初の予想とは異なり、現段階では統計的に有意な効果を認めることは出来なかった。薬物の投与経路ならびに投与量などについて更に詳細な検討を要する。 シスプラチン投与後の摘出腎を標本として、PGE2の生合成過程に働く酵素群の発現動態について、リアルタイム RT-PCR 法をもちいて経時的に解析した。その結果、シクロオキシゲナーゼ(COX)のひとつであるCOX-2の発現と、COXの下流でPGE2の産生に特異的に働く膜型PGE合成酵素-1(mPGES-1)の発現が共に、シスプラチン投与24時間後より対照群と比較して有意に増加し、その発現の増加は48時間後および72時間後にピークとなることが明らかになった。一方、他のCOXアイソザイムであるCOX-1の発現については、シスプラチン投与群と対照群の間で差を認めなかった。したがって、腎臓におけるCOX-2とmPGES-1の発現の誘導が、シスプラチン誘発急性腎不全の病態形成過程におけるPGE2の過剰産生を生じ、PGE2-EP1系による腎不全病態の進展に関与する可能性が示唆された。 本研究課題によって、PGE2-EP1系の急性腎障害時における役割やその作用機序の一端を明らかにすることができた。本研究成果は、効果的な急性腎不全治療法の開発に重要な情報を提供するものと考えられる。
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