2013 Fiscal Year Research-status Report
ミエリン形成過程におけるニューレグリン切断と活性相関の可視化技術を用いた解析
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24790262
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
樫山 拓 順天堂大学, 医学部, 助教 (90338343)
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Keywords | ニューレグリン / BACE1 / ミエリン |
Research Abstract |
末梢神経のミエリン形成過程において、神経細胞とシュワン細胞の間で適切な細胞間シグナル伝達が行われることが重要である。神経軸索表面に発現するニューレグリン(NRG)の上皮成長因子様ドメインがシュワン細胞のErbB受容体に結合することで、下流シグナルを活性化していると考えられている。この活性化にはNRGがBACE1で切断されることが重要であることが示されているが、一方、同様にNRGを切断するADAMプロテアーゼに切断されるとミエリン形成が抑制されるという結果が報告されている。 本研究では、NRGの各プロテアーゼによる切断調節と切断片の生理活性の違いについて調べることを目的とした。 ウェスタンブロットや免疫染色等で切断片を区別するために、NRGのBACE1とADAMによる切断部位を同定し、切断端特異的な抗体を作製することを計画した。BACE1切断端を認識する抗体は、培養細胞の発現系におけるNRGの切断端を認識し、免疫染色に使えることが分かった。 ミエリン形成に重要なNRGのtypeIIIアイソフォームは膜表面にアンカーされた状態でJuxtacrine様の細胞間シグナル伝達を行うと考えられる。培養細胞の発現系において、BACE阻害剤存在下ではErbBのリン酸化が抑制され、一方、ADAM阻害剤存在下ではErbBのリン酸化が促進することがわかった。この結果は生体内のミエリン形成への切断酵素の影響と矛盾せず、まだ明らかにされていない分子レベルにおけるNRG切断と機能の詳細を調べる上で有用なアッセイ系となると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
NRGのBACE1切断を検出する断端特異的抗体の作製は成功したが、一方、ADAMの切断部位については、多くの候補が見つかり、同時期に出された他のグループの報告を含めると、すべての切断片を検出する抗体を用意することは現実的でないことが分かった。そのため、神経細胞における切断の検出と可視化が困難であると判断し、培養細胞を用いたモデル系を立ち上げ、阻害剤を用いた切断制御による下流シグナルへの影響を調べることにした。in vivoの現象を再現するような結果が得られた。しかし、最終的に内在性のNRGの切断を検出する段階で、それまで目的のタンパク質と考えていたバンドを質量分析で再確認したところ、別のアイソフォームであることが判明し、一方、目的であるNRGは発現が少なく、検出限界以下であることが分かった。以上のことから、内在性NRGの切断を検討するには材料の再検討が必要であることが分かり、検出用の抗体も含め条件を最適化する必要があると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いた「切断制御と切断片の生理活性」の検討については、より詳細な分子機構を調べ、in vivoの現象を説明していく予定である。また、内在性のNRGについては、用いる材料と検出系の最適化を行う。 また、質量分析で見つかった新たなアイソフォームについては、最近、精神疾患に関するリスクファクターとして興味深い報告がされており、このアイソフォームの切断制御を含めた分子的知見を得るために発展させていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画計画に従い、神経細胞内在性NRGの切断と、ErbB活性化の相関について研究を進めていたが、これまで複数の情況証拠から内在性NRGと考えていた分子が、質量分析によるアミノ酸配列決定の結果、別のアイソフォームであることが判明した。 これにより、内在性NRG分子に関する研究データの追加が困難となり、培養細胞系の実験で補完する必要性が生じた。また、内在性NRGの検出は本研究において必須であり、材料や検出系を変えて最適化する必要がある。 このため、研究の一部を次年度に繰り越して行うこととした。 研究の進行具合により細かな変更を行う可能性はあるが、基本的に当初の研究計画書に沿って使用する予定である。ただし、質量分析の結果、新たに見つかった分子についても、本研究テーマと深く関わりがあると考えられるので、解析対象に含めて発展させていく予定である。
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