2012 Fiscal Year Research-status Report
TRPA1を介した細胞内Zn2+情報伝達機構による関節リウマチ病態制御
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24790267
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
波多野 紀行 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (50454319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | TRP channel |
Research Abstract |
平成24年度の研究目標として掲げた、「滑膜線維芽細胞における細胞内亜鉛制御機構の解明」については順調に進行し、多くの研究成果を修めることができた。これまでに、滑膜線維芽細胞におけるTRPA1を介した細胞内亜鉛流入の可視化および測定に成功し、これらの研究成果については論文投稿および学会発表を行った。また、TRPA1以外の細胞内亜鉛制御分子の同定を行い、滑膜線維芽細胞において亜鉛トランスポーターの一部が細胞内亜鉛の蓄積に寄与している可能性を見出した。この研究成果についても学会発表を行った。これら滑膜線維芽細胞における細胞内亜鉛制御機構が分子レベルで解明されることは、関節リウマチ発症機構の解明につながるだけでなく、関節リウマチ治療薬の新たな分子標的を探索する上で有益な情報をもたらすと考えられる。 「細胞内亜鉛制御機構の解明」と同時並行で進める予定であった「DMARDsの再評価」についても、順調に研究計画が進行し、大きな成果をあげることができた。DMARDsに分類されている金製剤オーラノフィンがTRPA1を強力に活性化することを見出し、その活性化機構にはTRPA1の細胞内N末端領域に存在する621番目および633番目のシステインが深く関与することを明らかにした。このオーラノフィンによるTRPA1活性化は、オーラノフィンの副作用に寄与している可能性が考えられた。現在においても作用機序が未解明であるDMARDsは多く、これらDMARDsの作用機序の再解析は抗リウマチ作用の増強および副作用の軽減を考える上で有用な情報に成り得ると考えられる。また、このオーラノフィンによるTRPA1の活性化についても論文投稿および学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請した研究計画において3つの研究目的を掲げた。それは、「滑膜線維芽細胞における細胞内亜鉛制御機構の解明」、「細胞内亜鉛が滑膜線維芽細胞リモデリングに与える影響の解明」、「細胞内亜鉛による関節リウマチ病態形成への寄与」である。各研究目標における達成度は以下の通りである。 「滑膜線維芽細胞における細胞内亜鉛制御機構の解明」については概ね順調に計画を進行しており、その研究成果の一部は既に論文投稿および学会発表を行った。また、当初の研究計画とは異なるが新たな展開もあった。TRPA1以外の細胞内亜鉛制御分子(一部の亜鉛トランスポーター)の同定に成功し、これらの分子による細胞内亜鉛制御機構についても研究を展開し始めた。平成24年度は本目的を達成するために多くの時間を費やし、数多くの研究成果と今後の研究につながる鍵分子の同定を修めることができた。 「細胞内亜鉛が滑膜線維芽細胞リモデリングに与える影響」については、研究計画に遅れが生じており、達成度はおよそ半分である。当初の計画では、本目的を達成するためにsiRNA法を用いる予定ではあったが、siRNAの導入が困難であることが判明したため、本研究計画の進行は遅延した。現在は、選択的阻害剤を用いた検討に切り替え、本目的を達成するための実験が進行中である。 「細胞内亜鉛による関節リウマチ病態形成への寄与」については、平成24年度はまだ研究を実施していない。これはin vitroにおける評価が遅れているためであり、in vitroにおける評価が終了した後に開始したい。 これら3つの研究目標が達成困難である場合に予定していた研究目的である、「DMARDsの再評価」については、予想以上の成果を修めることができた。この研究目標はほぼ完全に達成し、研究成果については論文投稿および学会発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、「滑膜線維芽細胞における細胞内亜鉛制御機構の解明」および「DMARDsの再評価」に多くの時間を費やし、多くの研究成果を修めることができた。「滑膜線維芽細胞における細胞内亜鉛制御機構の解明」については、TRPA1以外の細胞内亜鉛制御分子を同定することができたため、平成25年度はこれら新たな細胞内亜鉛制御分子を介した細胞内亜鉛制御機構についても解明していきたい。 TRPA1を標的としたsiRNAを用いた機能評価については、当初計画していたような結果を出すことができなかった。これはヒト滑膜線維芽細胞におけるsiRNAの導入が予想以上に困難であったことが原因である。様々な手法を用いて検討を行ったが、ヒト滑膜線維芽細胞へのsiRNAの導入は非常に難しいという結論になった。TRPA1の機能評価を達成するために、比較的選択性の高い阻害剤を使用した機能評価に計画を変更し、研究を進行させていきたい。また、阻害剤を用いた実験と同時に、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入についても検討し、研究目標の達成に向けて研究を進行させていきたい。 上記研究計画が進行し、in vitroにおける細胞内亜鉛の重要性を明らかにした後、「細胞内亜鉛による関節リウマチ病態形成への寄与」という研究目標を達成するために、関節リウマチモデルマウスを用いた研究に着手する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、ほとんどの予算を消耗品の購入に充てる予定である。また、siRNAの導入が困難であることが判明したため、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入に関する消耗品の購入に一部の予算を充てる予定である。
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Research Products
(7 results)