2013 Fiscal Year Research-status Report
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24790268
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
天ヶ瀬 葉子 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (90550822)
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Keywords | 遺伝子 / 癌 / シグナル伝達 / 薬理学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在の癌早期発見の概念よりさらに早い前癌状態での診断を可能にすること、安全な薬剤を開発する上で早期に発癌性の有無を見極められるようにすることである。 平成25年度は、前年度中に行った発癌性物質投与によるラットの肝発癌実験によって得られた組織等を用いて各種染色やmRNAの定量を行った。発癌との関連が疑われるNADE, DR6, Aβの3つの蛋白質の関わりや発現を明らかにするため、平成25年度の研究実施計画では、NADE, DR6共発現下Aβ蛋白質を添加して細胞増殖への影響やアポトーシス誘導の程度を検討し3者の機能的な相関をin vitroで検討すること、これらの蛋白質が発現することによってどのような運命決定がなされるかを検討する予定であった。 ① 肝臓から抽出したmRNAにおける、NADE, DR6, Aβ mRNAの経時的発現変化について: NADE, DR6, Aβの3つのmRNAは肝障害、発癌の進行過程で顕著な発現上昇が見られた。これらのmRNAにコードされる蛋白質は、細胞がアポトーシスを起こす際に重要な役割を果たすとされているが、今回の結果では、3つの蛋白質が細胞をアポトーシス以外の運命へ決定している可能性が示唆され、全く新しい知見である。 ② NADEとDR6が定常共発現する細胞株にAβ蛋白質を作用させ、NADEとDR6の結合を蛍光免疫染色法等で示した。これは、DR6にAβが作用する際にNADEの介在が起きているという仮説を立証する手がかりとなる。この系は、平成26年度に予定しているAβ-NADE-DR6 complexが細胞の運命決定にどのような結果をもたらすのか、そのシグナル経路はどのようなものかを明らかにする系として利用でき、研究遂行の上で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の癌早期発見の概念よりさらに早い前癌状態での診断を可能にすること、安全な薬剤を開発する上で早期に発癌性の有無を見極められるようにすることを目的として研究を行っている。発癌性物質を投与したラットの前癌状態にある肝臓でNADE, DR6, Aβの3つの遺伝子の発現上昇が認められ、これらと発癌との関係を明らかにするため平成25年度は研究実施計画に基づき次の点について検討を行った。NADE, DR6を定常共発現させた細胞株を用い、Aβ蛋白質を作用させることでNADEとDR6の結合が見られており、Aβ-NADE-DR6 complexの仮説が立証されつつある。計画ではNADEやDR6の強制発現により、アポトーシスを起こす可能性が考えられたため、2種類の細胞株を用いることを計画していたが、現時点では顕著なアポトーシスが見られないため、現在使用しているNADE, DR6定常発現株のみで事足りている。また、診断への応用をふまえ、血液中のNADEのmRNAを定量する系の検討も進んでおり、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの動物実験では肝障害の進行と肝発癌により全身状態が悪化し、予定より早くラットが死亡した。残りのラットが死亡する前に剖検を行い、組織や血液のサンプリングを行ったが、例数が十分でないため追加実験を行う。また、確実に明らかな癌を産生させる長期の実験に耐えうる条件にするため、長期の実験では条件を変更する。ジエチルニトロソアミン投与により投与期間8週間で十分に遺伝子に傷がついていると推測されることから、最初の8週間はこれまで通り、それ以降は水に変更するかフェノバルビタールを用いた2段階発癌の系に変更して対応する。同時に血液サンプルからNADE, DR6, AβのmRNAを抽出し、定量することで診断に用いることが可能かどうかを検討する。Aβ存在下NADEとDR6が結合するというAβ-NADE-DR6 complexの仮説を立証し、NADE-DR6の結合がdeath domainを介したものなのかを明らかにするため変異型DR6を細胞に導入するなどして検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Aβ存在下NADEとDR6の共役が確認されれば、Aβ-NADE-DR6 complexが細胞の運命をどう変えるのかを検証するための試薬、キット等を購入予定であった。Aβ存在下NADEとDR6の共役は検知できたが、残額では予定していたキットを購入できなかったため次年度に持ち越すことにした。 次年度に持ち越す研究費は、Aβ-NADE-DR6 complexが細胞の運命決定にどのように関わるのかを明らかにするためのアッセイキットを次年度の予算と合わせて購入するために用いる。
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Research Products
(1 results)