2012 Fiscal Year Research-status Report
Baf53aとOct3/4を介したES細胞の自己複製制御機構の解析
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24790274
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
赤木 紀之 金沢大学, 医学系, 助教 (70532183)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ES細胞 / Baf53a / Oct3/4 / クロマチンリモデリング |
Research Abstract |
マウスES細胞はサイトカインLIF刺激により自己複製が可能である。ES細胞の自己複製には、転写因子Oct3/4が重要な役割を果たしている。本研究では、Oct3/4と相互作用する因子を酵母two-hybrid法で探し、クロマチン・リモデリング因子Baf53aを同定した。 Baf53aのES細胞での発現を検証したところ、未分化なES細胞に強く発現し、LIFを除去し分化誘導させても、その発現は維持された。一方、conditional Oct3/4 knockout ES細胞では、Oct3/4の発現停止に伴って、Baf53aの発現も停止した。Oct3/4の発現が停止したES細胞は、栄養外胚葉に分化することから、Baf53aは栄養外胚葉分化に伴い発現が停止することが明らかになった。 またBaf53aとOct3/4の結合領域を決定するために、MBP pulldown assayを行った。その結果、Baf53aはOct3/4のPOU領域、とくにspecificドメインに強く結合し、N末端領域とC末端領域には結合していなかった。一方、Oct3/4はBaf53aのあらゆる領域に結合することが可能であった。 Baf53aの機能を抑制する目的で、Baf53a RNAiをES細胞に導入したところ、ES細胞の増殖能が低下することが判明した。この細胞からRNAを回収し、遺伝子発現の変化を調べたところ、多くの未分化マーカーは変化していないものの、Sox2の発現が大きく抑制され、一方分化マーカーであるGata6、T、Fgf5などが上昇していることを見出した。また、細胞周期制御因子であるサイクリンD1も発現が抑制されていた。 以上から、未分化なES細胞に発現するBaf53aは、Oct3/4と相互作用しES細胞の増殖に関与していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、Baf53aとOct3/4の相互作用部位の決定ができた。即ち、Baf53aはOct3/4のPOU-specific domainに、Oct3/4はBaf53aのあらゆる領域に結合することを見出した。更に、Baf53aがES細胞の増殖能へ関与していることが判明し、Baf53aの機能阻害は、サイクリンD1の発現減少を伴うES細胞の増殖能の低下が明らかとなった。Baf53aがES細胞の増殖能へ関与していることは、新たな知見であると言える。また、Baf53a遺伝子破壊ES細胞の樹立を目指しており、ターゲティング(Tg)ベクターも作成した。このTgベクターを用いて、既に片アリル破壊したES細胞も樹立できている。このことから、予定通り順調に研究は進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに明らかになった「増殖能の低下」の分子機構を解明する必要が挙げられる。遺伝子発現解析から、Baf53aをノックダウンすることでサイクリンD1の発現減少が認められているものの、その他の詳しい情報は得られていない。本年度は、細胞周期関連因子群の発現解析や、Baf53aの過剰発現による増殖能への影響を検証する。また、クロマチン・リモデリング因子であることから、Baf53aの増減に伴って変化する遺伝子群のクロマチン状態も検証する予定である。一方でBaf53aはヒストンアセチル化酵素群とも相互作用することが知られている。このことから、Baf53aノックダウン状態におけるES細胞のヒストンアセチル化状態を検証し、ES細胞のエピジェティクス制御因子としての機能を解明する。 さらにBaf53aのターゲティングベクターも作成し、Baf53a+/- ES細胞も樹立済みである。Baf53a-/- ES細胞の樹立を試みるも、現在までに成功には至っていない。これはBaf53aがES細胞でエッセンシャルな機能を持っているため、容易にはノックアウトES細胞が樹立できないと推定できる。Tet誘導型やCre-LoxPシステムを用いることで、誘導型Baf53aノックアウトES細胞の樹立を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、研究室に既存で、使用期限の迫っている試薬等が残っていた。そのため、そちらを優先的に利用し、やむなく研究費の一部を平成25年度に繰り越す事にした。 従って本年度は、繰り越し分と合わせて、主に消耗品に充てる予定である。具体的には遺伝子導入試薬、細胞培養試薬、合成オリゴ(DNAプライマーや合成RNAi)、遺伝子組み換え関連試薬などを想定している。学会発表も予定しており、一部学会旅費として使用する。また、Ba53aノックアウトES細胞が樹立できた場合には、網羅的な遺伝子発現解析としてアレイ解析を外部委託する予定である。大きな機材等の購入は予定していない。
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Research Products
(7 results)