2012 Fiscal Year Research-status Report
ネクチン様分子によるヘミデスモソームの崩壊・再形成機構
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24790284
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
水谷 清人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50559177)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | Necl-4 / ErbB3 / ヘミデスモソーム / インテグリン / CADM4 |
Research Abstract |
ヘミデスモソームは、正常上皮細胞の細胞膜上に斑点状に散在する細胞-基質間接着構造である。細胞-基質間接着は細胞が周辺環境を認識するうえで重要であり生理的には細胞の形態維持、細胞分化、細胞機能制御などに関与している。一方、がん細胞では細胞-基質間接着が破壊されて接着能が低下するとともに運動能が亢進し、浸潤・転移する。このような観点から、細胞-基質間接着の制御機構を解明することは生物学的にも医学的にも極めて重要である。本年度は、がん抑制因子のネクチン様分子-4(Necl-4)に着目し、Necl-4の細胞-基質間接着制御機構と細胞内シグナル伝達制御機構における役割を検討した。細胞のがん化と関連がある上皮細胞増殖因子受容体(ErbB)ファミリーのうち、Necl-4はErbB3とのみ相互作用した。ヘレグリン刺激依存的なErbB3の下流シグナル活性化は、Necl-4の過剰発現により抑制され、ノックダウンにより亢進した。このシグナル制御機構には、チロシンホスファターゼPTPN13が関与することが明らかとなった。また、Necl-4はヘミデスモソーム構成因子のインテグリンα6β4と結合することが知られている。そこで、ヒト大腸がん培養細胞株のCaco-2細胞を用い、TPA刺激によるヘミデスモソーム様構造の崩壊に対するNecl-4の影響を検討した。Necl-4をノックダウンしたCaco-2細胞ではTPA刺激によるヘミデスモソーム様構造の崩壊が速やかに生じ、Necl-4を過剰発現させた細胞では崩壊が遅くなった。これらの実験結果は、Necl-4がErbB2/ErbB3シグナル伝達の活性化を抑制し、TPA刺激依存的なヘミデスモソームの崩壊を抑制することで、がん抑制因子として機能することを示している。本研究成果は、Genes to Cells誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん抑制因子Necl-4のヘミデスモソーム崩壊抑制機構とErbB2/ErbB3シグナル伝達の抑制機構を明らかにし、学術論文発表を行った。この点は、当初の研究目的で挙げた、がん化した細胞での細胞-基質間接着の制御機構解明につながる成果である。また、Necl-4ががん化シグナルの抑制と細胞-基質間接着制御に関与していることから、Necl-4の機能をさらに解析することで、これらの現象のクロストーク機構を解明する端緒になることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Necl-4がヘミデスモソームの崩壊を抑制する具体的な分子機構の解明と、正常上皮細胞におけるNecl-4の機能およびヘミデスモソームの再形成の過程でNecl-4がどのように関与するかを明らかにしていく。これまでの培養細胞の系だけでなく、組織培養の系を用いて検証することで、より生体に近い環境における細胞-基質間接着機構の解明につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の後半は、得られた成果を学術論文発表するための準備に費やしたので、当初の実験計画の一部が遂行できなかった。そのため、年度後半に使用予定であった予算の一部を次年度に繰り越した。
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