2013 Fiscal Year Research-status Report
胎児後部器官群の協調的発生における細胞移動、血管・神経系組織の影響に関する研究
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24790292
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
松丸 大輔 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 学内助教 (50624152)
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Keywords | 協調的器官形成 / 臍帯下部領域 / Hhシグナル |
Research Abstract |
胎児期の器官形成は、隣接する器官群が相互に影響を及ぼしあいながら進んでいくと考えられる。いくつかの先天性疾患において、隣接する複数の器官群が同時に異常を呈することからも胎児器官群の協調的な発生の重要性が示唆されるが、そのメカニズムは殆ど明らかとなっていない。本研究の目的は、胎児後部領域の器官群に注目し、細胞の移動、及び器官周辺の血管・神経系組織形成が器官群の形成に与える影響を解析することで、協調的発生のメカニズムの一端を明らかにすることである。現在までに得られた研究結果として、器官培養系を用いた組織標識実験により、臍帯下部領域から外生殖器上部領域への細胞移動の存在を示唆した。さらに条件付き遺伝子組換え(Cre-loxP)システムを応用した細胞系譜解析を行なった結果、同領域の細胞群は膀胱組織にも寄与しうる結果を得た。また、血管内皮細胞マーカー遺伝子の発現解析からも臍帯下部と外生殖器上部の関連が示唆された。Shh、Alx4、Gli3遺伝子の複合遺伝子改変マウスの表現型解析から、細胞増殖因子ヘッジホッグ(Hh)シグナルが胎児後部領域器官群の異常に関連する事を示した。Hhシグナル機能獲得型変異マウスの解析から、Hhシグナルが過剰に導入されることが細胞移動を阻害する結果、発生異常につながるという可能性が示唆された。これらの結果は、臍帯下部領域は胎児後部器官群に細胞を『供給』する領域であること、また同領域にHhシグナルの過剰導入などの異常が生じることによって外生殖器や膀胱、腹壁といった広範囲に同時に影響が生じる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究項目のうち細胞移動の影響の解析に関しては、多くの新規知見を得ることができ先天性疾患発症メカニズムの一端を示唆できていると考えられる。研究計画のもう1つの柱である血管・神経系組織の器官形成に及ぼす影響の解析に関しては、一部の遺伝子改変マウスにおける神経走行の異常を見出しているが、主に正常マウスにおける血管内皮マーカーの発現解析等、基本的な解析に留まっている。原因としては、平成24年度末にアメリカより導入した遺伝子改変マウス(Cre組換え酵素の発現依存的に細胞を死滅させることができるマウス)の妊孕性が低く、通常交配を続けたが産仔を得られなかったことにある(同マウスは平成25年9月に体外受精によって産仔を得るに至った)。マウスコロニーの拡大と、実験に使用する複合遺伝子改変マウスの作製を行なっているが、年度内に解析、及びその結果を発表することが出来なかったため、研究に遅れが生じていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度に記述した通り、遺伝子改変マウスが十分に確保できなかったことが原因で、当研究計画の2年目に予定していた解析が遅れており、それらの解析を本年度に行なう予定である。すなわち、昨年度体外受精によって継代したRosa26-DTAマウスを用いて、胎児組織の遺伝学的除去実験を行なう。臍帯下部領域、及び神経系、血管系組織に発現するCreドライバーマウスを用いた解析を予定している。また、Hhシグナル関連遺伝子群の遺伝子改変マウス胚を神経新生因子、血管新生因子存在下で培養し、その影響を解析する。これらの実験の結果を統合し、臍帯下部領域の細胞群の重要性、胎児器官形成における神経・血管系組織の重要性を明らかにしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度末に遺伝子改変マウスを導入し、平成25年度に解析と成果の発表を行なう予定であったが、アメリカより輸入したマウス4匹(Rosa26-DTAマウスの雄雌)を用いて通常交配を続けたが産仔を得られず、平成25年9月に体外受精によってようやく産仔を得た。このように解析するマウス系統を得るまでに想定外に時間がかかり、解析、及びその結果を発表することが出来なかったため、未使用額が生じた。 延長された次年度においては、Rosa26-DTAマウスを用いた遺伝学的細胞除去実験を行なう。臍帯下部領域、及び神経系、血管系組織に発現するCreドライバーマウスを用いた解析を予定しているが、そのためのマウス個体の遺伝型識別や組織学的解析のための酵素、抗体、試薬類の購入と、手術や個体サンプルの保存に用いるプラスチック器具類の購入、また得られた結果をまとめて学会発表、論文発表を行なう経費として未使用額を充てることとしたい。
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Research Products
(3 results)