2012 Fiscal Year Research-status Report
脂質転移タンパク質STARD10のタンパク質複合体を介した脂質代謝への関与の検討
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24790296
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
伊藤 雅方 東邦大学, 医学部, 助教 (20459811)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 脂質 / 胆汁酸 / コレステロール / トリグリセリド / ホスファチジルコリン / lipid droplet / エキソソーム / miRNA |
Research Abstract |
STARD10 (START domain containing 10)は、START (steroidogenic acute regulatory protein-related lipid transfer)ドメインという脂質結合ドメイン を有する脂質転移タンパク質である。STARD10の脂質代謝への関与を明らかにする目的でStard10遺伝子のノックアウトマウス(Stard10-/-)の表現型を解析した。STARD10はウエスタンブロットにより肝臓・胆嚢・腸管に高発現していることが示された。高脂肪食負荷時、Stard10-/-は野生型マウス(WT)と比べ、肝臓の肥大が顕著に抑制され、cholesterol及びtriglyceride含有量の増加も減弱していた。肝臓の胆汁酸含量はWTに比べてStard10-/-が低かった。血清中の遊離脂肪酸濃度もWTに比べStard10-/-で低かった。また、Stard10-/-ではWTと比べ、Cyp8b1等のPPAR(peroxisome proliferator activated receptor)αによって制御される遺伝子の肝臓における発現が低下していた。肝臓及び胆汁中の胆汁酸の成分解析ではコール酸/ケノデオキシコール酸の比がStard10-/-において低く、Cyp8b1の発現量の結果と一致した。また、Stard10-/-の胆汁中のタウリン抱合体の含有量が高かった。胆管から一定時間に分泌された胆汁を回収、測定した結果、胆汁酸分泌がStard10-/-において亢進していることが示された。一方、小腸及び胆嚢の胆汁酸トランスポーターASBT の発現は低下していた。糞中に排泄された胆汁酸量もStard10-/-はWTに比べて有意に高かった。よって、STARD10は胆汁酸分泌及び再吸収の調節を介して脂質代謝制御に関わっていると示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は脂肪滴(lipid droplet)やエキソソーム、ペルオキシソームの形成や機能調節にSTARD10を含むタンパク質複合体が関与しているという仮説を検証をすることである。これまでの研究でStard10遺伝子のノックアウトマウス(Stard10-/-)を解析し、STARD10がPPARαの調節を受ける遺伝子の発現に影響することにより胆汁酸の分泌及び再吸収に関与することを明らかにした。Stard10-/-において高脂肪食による肝臓のlipid dropletの形成の低下が示唆されていたが、本研究において初めてその要因の1つを明らかにすることが出来た。それは、Stard10-/-では胆汁酸の糞便を介した排出の増加により、肝臓中のコレステロールが胆汁酸へと代謝される反応が促進され、lipid dropletに蓄積するための脂質が減少しているからということである。よって、STARD10がlipid droplet 形成へ影響する機構の1つを明らかにできたことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1) lipid droplet形成へのSTARD10分子複合体の関与についての解析 今年度の研究によりSTARD10がlipid droplet 形成にPPARαの調節を介して関与すると示された。これは遺伝子発現の調節によるものであるが、一方、STARD10がlipid dropletに局在していることも免疫染色法により示されている。したがって、STARD10がその脂質転移活性によりlipid droplet形成へ関与している可能性がある。そのことを明らかにするため、肝臓のホモジェネートを超遠心法により分離し、オルガネラのマーカータンパク質とSTARD10の抗体を用いたそれぞれの画分のウエスタンブロットによりSTARD10のオルガネラへの局在について明らかにする。また WTとStard10-/-の肝臓のlipid dropletをショ糖密度勾配による超遠心により、コレステロール及びトリグリセリド(TG)の構成による比重の違いにより分離する。それぞれの画分でlipid dropletのマーカータンパク質であるADRPの発現量をウエスタンブロッティングにより測定し、WTマウスとStard10-/-マウスのlipid dropletの脂質構成とその比率を比較する。また、WTマウスのlipid dropletのそれぞれの画分ではSTARD10の発現量も測定し、lipid dropletの脂質構成への関与を検討する。 2) STARD10とエキソソーム形成の関連の解析 WTマウスの胆汁中のSTARD10が含まれているか検討する。また、エキソソームを胆汁から単離する方法を検討し、WTマウス及びStard10-/-マウスのエキソソーム膜のホスファチジルコリン含有量を測定し、STARD10のエキソソーム形成への関与について検討する。さらに、エキソソーム中のmiRNAについて網羅的に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究の推進方策で示したように研究を遂行するために必要な費用としては、lipid dropletを分画するための超遠心に必要なチューブ等の消耗品、ウエスタンブロットに必要な抗体等の消耗品、エキソソームの単離は超遠心法の他、市販のキット(ExoQuickTM)を用いる方法も検討する予定であり、そのための試薬類、単離したエキソソーム膜のホスファチジルコリン含有量を測定するための消耗品、miRNAの網羅的解析のための費用などに使用する。また、研究の成果を国際学術誌に論文投稿するための費用や学会発表のための旅費等にも使用する。
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