2013 Fiscal Year Research-status Report
脂質転移タンパク質STARD10のタンパク質複合体を介した脂質代謝への関与の検討
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24790296
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
伊藤 雅方 東邦大学, 医学部, 助教 (20459811)
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Keywords | 脂質 / 胆汁酸 / 脂肪酸 / コレステロール / トリグリセリド / ホスファチジルコリン / lipid droplet / miRNA |
Research Abstract |
STARD10 (START domain containing 10)は、START (steroidogenic acute regulatory protein-related lipid transfer)ドメインという脂質結合ドメインを有する脂質転移タンパク質である。STARD10の脂質代謝への関与を明らかにする目的でStard10遺伝子のノッ クアウトマウス(Stard10-/-)の表現型を解析した。STARD10が肝臓、胆嚢及び小腸において発現し、Stard10-/-では肝臓中のケノデオキシコール酸含量増加及び二次胆汁酸含量低下があり、また胆汁酸の胆汁への分泌と糞便中への排泄の増加があることを明らかにした。肝臓でのコール酸産生に関与するCyp8b1と胆汁酸脱抱合に関与するAcot、小腸での胆汁酸再吸収を担うAsbtについて解析し、Stard10-/-での発現低下を明らかにした。これらの遺伝子はPPARαにより制御されると考えられている。そこで、マウス肝癌由来細胞株Hepa1-6を用い、siRNAによるStard10ノックダウンを行ったところ、PPARαの活性が有意に低下した。一方、過剰発現では有意に上昇した。よって、STARD10はPPARα標的遺伝子の発現を正に調節することで胆汁酸を介した脂質代謝の制御に関与すると考えられた。よって、STARD10は胆汁酸分泌及び再吸収の調節を介して脂質代謝制御に関わっていると示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は脂肪滴(lipid droplet)やエキソソーム、ペルオキシソームの形成や機能調節にSTARD10を含むタンパク質複合体が関与しているという仮説を検証をすることである。これまでの研究でStard10遺伝子のノックアウトマウス(Stard10-/-)を解析し、STARD10がPPARαの調節を受ける遺伝子の発現に影響することにより胆汁酸の分泌及び再吸収に関与することを明らかにした。その結果、Stard10-/-では胆汁酸の糞便を介した排出が増加し、肝臓中のコレステロールが胆汁酸へと代謝される反応が促進され、lipid dropletに蓄積するための脂質が減少する。Stard10-/-では高脂肪食による肝臓でのlipid dropletの形成の低下が観察されていたが、本研究において初めてその要因の1つを明らかにすることが出来た。マウス肝癌由来細胞株Hepa1-6を用い、siRNAによるStard10ノックダウンやCMVプロモーターによるSTARD10過剰発現を行ったところ、STARD10の発現とPPARαの活性が相関していた。よって、STARD10がlipid droplet 形成へ影響する分子機構の一端を明らかにすることができ、培養細胞による解析系を確立できたことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究ではSTARD10がlipid droplet 形成にPPARαの調節を介して関与することが示された。このような遺伝子発現の調節によるもの以外に、STARD10がその脂質転移活性によりlipid droplet形成へ関与している可能性が考えられる。STARD10分子複合体の実体を明らかにするために免疫沈降を用いた実験を行う。肝臓のlysateを用いた検討ではStard10-/-でも多くのタンパク質が同定されて解析が困難であった。そこで、STARD10が過剰発現している細胞株を用いることを検討している。これまでの予備的な実験からヒト大腸癌由来細胞株Caco-2でSTARD10が過剰発現していることを見出した。そこで、Caco-2細胞株からSTARD10のノックアウト株をゲノム編集技術を用いて作製し、野生株とノックアウト株からの抽出溶液を抗STARD10抗体を用いて免疫沈降し、沈降されたタンパク質を比較することでSTARD10と相互作用する分子複合体の実体を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に相互作用タンパク質の分析を行い、その結果を基に免疫沈降実験を行うとともに学会発表をする予定であったが、マウス肝臓抽出物由来のタンパク質を用いた相互作用タンパク質の分析の結果、非特異的なものが多数検出されたため、計画を変更し株化細胞であるCaco-2による相互作用タンパク質の解析を行うこととした。そのため、未使用額が生じた。 このため、株化細胞による相互作用タンパク質の解析と学会発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に宛てることとしたい。
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