2012 Fiscal Year Research-status Report
緑内障に関連する遺伝子砂漠領域のリシークエンス解析による発症機序の解明
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24790323
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
中野 正和 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70381944)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子病態学 / ゲノムワイド関連解析 / バリアント / 次世代シーケンサー / 遺伝子発現調節 / 緑内障 |
Research Abstract |
我々は、日本人検体を用いたゲノムワイド関連解析(genome-wide association study, GWAS)を実施し、緑内障の主病型である原発開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma, POAG)に強く関連するバリアントをヒト染色体9p21に存在するCDKN2B-AS1上から5つ同定している(Nakanoら, PLoS ONE, 2012)。しかし、9p21領域からは心疾患や糖尿病等の複数の多因子疾患に関連するバリアントが同定されているものの近傍遺伝子との関連性が明らかにされていない上、CDKN2B-AS1も機能未知のノンコーディング遺伝子であることから、本領域には遠隔遺伝子の発現を制御している未知の機構が潜在している可能性がある。そこで本研究は、本領域を次世代シーケンサーによりリシークエンスし調節配列とその標的遺伝子を同定するすることによって、これらのバリアントが緑内障の発症機序に及ぼす影響を解明することを最終目的とする。 本年度は、9p21領域以外に精査すべき領域を抽出するために、上記のGWASにおいて比較的有意性の高かった上位のバリアントについて、我々が以前実施したPOAGのGWAS(Nakanoら, PNAS, 2009)のジェノタイプデータとの統合解析を実施した。その結果、9p21の統合可能な4つのバリアントについてはいずれのバリアントも有意水準が上昇したものの、他の領域では顕著な上昇は認められなかった。しかし、これらの領域もリシークエンス解析すべきと判断し、標的配列を濃縮するためのlong-range PCR用のプライマーを設計した。 一方、POAGとは別の病型である落屑緑内障についても臨床上および緑内障遺伝学の全体像を把握する上で重要であることから、GWAS用の検体集団を準備しジェノタイプデータの取得を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は緑内障に関連するバリアントが発症機序に及ぼす影響を解明することであることから、本年度の内に精査すべき独自の染色体領域を選定し終え、次世代シーケンサーを用いたリシークエンス解析の準備が整った点において本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。更に、原発開放隅角緑内障とは異なる病型の落屑緑内障についての研究にも着手できたことから、今後緑内障の全体像を捉える上で非常に意義深いと考えられ進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に確定した原発開放隅角緑内障に関連する染色体領域について、新たな検体集団を用いて高精度なシークエンスデータを取得することで、GWASで同定されたバリアントの再現性を確認すると共にin silicoで調節配列を予測し、バリアントとの位置関係を精査する。予測された調節配列上にバリアントが存在した場合には、バリアントの有無が調節活性に及ぼす影響を解析する。また、次世代シーケンサーを用いたchromosome conformation capture法等の技術を駆使して、調節配列の標的遺伝子を同定する。 一方、落屑緑内障についても早期にGWASを実施し、新規バリアントの同定を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は主に染色体上の標的配列の濃縮に必要な物品費を支出し、次世代シーケンサー用の物品費を支出しなかったので、繰り越し分は次世代シーケンサー用の消耗品費に充当する予定である。また、緑内障と正常コントロールの検体を引き続き収集するための人件費を計上している。更に、海外での学会発表のための旅費と論文発表のためのその他の経費を計上している。
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