2012 Fiscal Year Research-status Report
TFAMを中心としたミトコンドリアゲノムの分配調節機構の解明
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24790324
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
笠嶋 克巳 自治医科大学, 医学部, 講師 (80382844)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ヌクレオイド / 分配 |
Research Abstract |
本年度はまず、RNA干渉法により、TFAMノックダウンと同様にmtDNAヌクレオイドを巨大化(mtDNAの分配阻害)させる因子を探索した。約10種のヌクレオイドタンパク質をHeLa細胞でノックダウンした結果、ミトコンドリアでは機能が未知であるATPaseタンパクClpXのノックダウンにより、唯一mtDNAヌクレオイドが巨大化することが明らかとなった。 TFAM関連因子を単離するために、TFAM-DNA複合体と相互作用する因子を同定した。TFAM結合DNAにビオチンを付加し、ミトコンドリア抽出液からストレプトアビジンビーズでTFAM複合体を精製し、質量分析によって相互作用因子を特定した。その結果、既知のTFAM結合因子であるmtSSBに加え、複数のタンパクがTFAM関連因子の候補として考えられた。また、酵母ツーハイブリッドを用いたTFAM結合因子の探索も行った。現在までにミトコンドリアタンパク質は得られていないが、ユビキチン化に関わる因子が結合候補として挙げられた。 ClpXの作用機構を明らかにするために、ClpXノックダウン下でのmtDNAヌクレオイドを詳細に解析した。その結果、ClpXノックダウンによる巨大化ヌクレオイドはTFAMノックダウンによるものと非常に類似していること、TFAMの過剰発現がClpXのノックダウンによるヌクレオイドの巨大化を抑制することがわかった。ClpXはプロテアーゼClpPと複合体を形成し、プロテアーゼとして働くこともわかっているが、TFAMタンパク質の発現量には影響を及ぼさないこともわかった。したがって、ClpXはプロテアーゼとしてではなく、シャペロンとしてTFAMの質的調節を行い、mtDNAの分配に関わることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には、TFAMに関連してmtDNA分配に関わる因子の網羅的探索を試みたが、関連性が明らかになったのは現在のところClpXのみである。しかしながら候補因子は複数得られており、今後早急にTFAMとの関連を明らかにする必要がある。ClpXについては、その機能解析が順調に進んでいる。その機能の詳細な分子機構は未だに不明であるが、TFAMと同一経路でmtDNA分布に関わること、vitroでTFAMのDNA結合活性を上げることなどを明らかにする事ができ、論文として公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに生化学的手法および酵母ツーハイブリッドを用いてTFAM関連因子を探索しているが、TFAMと物理的・機能的に関連している因子はClpXしか単離できていない。そこでまずは初年度で得られたTFAM関連候補因子につき、RNA干渉法を用いたノックダウン解析を行い、TFAMの発現量やmtDNAの分布に影響を及ぼすものを特定する。 TFAM調節因子としてClpXが単離されたが、その分子機構は多くが不明である。したがって、ClpXがいかにTFAMを調節しているのか明らかにする。実際には、ClpXがvivoでもTFAMのDNA結合性を調節しているのか確かめるために、ClpXをノックダウンした細胞から精製したTFAMを用いてそのDNA結合性を解析する。TFAM相互作用因子としてTFAM自身を明らかにしている。そこでTFAM間相互作用に必要なドメインを特定するとともに、ClpXがTFAM間相互作用に与える影響をvitroあるいは細胞を用いた解析によって明らかにする。 生細胞のmtDNAはこれまでにPicoGreenを用いてラベルしてきたが、退色しやすいという問題点があった。そこで他の蛍光色素であるSYBR Green Iを用いてmtDNAを染色したところ、比較的退色しにくいことがわかった。したがって、SYBR Green Iを用いてTFAMノックダウン細胞のmtDNA動態を詳細にタイムラプス解析し、その分配阻害を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、研究費の多くは酵素や試薬などの消耗品として使用する。また成果発表として、国内で開催される国際学会に複数参加する予定であるため、そのための参加費・旅費としても使用する。
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