2013 Fiscal Year Research-status Report
TFAMを中心としたミトコンドリアゲノムの分配調節機構の解明
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24790324
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
笠嶋 克巳 自治医科大学, 医学部, 講師 (80382844)
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 分配 / TFAM |
Research Abstract |
前年度までに酵母ツーハイブリッド解析や生化学的手法によって得られたTFAM相互作用タンパク質候補について、in vitroでの結合実験やRNA干渉法を用いたノックダウン解析を行った。その結果、TFAMと直接的に相互作用しているタンパク質はなく、ノックダウンによってTFAMノックダウンと同様の表現型(ヌクレオイドの巨大化)を示すものもなかった。 Bogenhagen博士らが報告しているヌクレオイド構成タンパク質約40種について、siRNAを用いた網羅的なノックダウンを行い、mtDNAの分布への影響を調べた。その結果、TFAMやClpXに加えて数種の遺伝子のノックダウンによってmtDNAヌクレオイドが巨大化することがわかった。しかしながらさらなる解析から、こうした表現型はsiRNAによるターゲット以外の分解(オフターゲット効果)によることがわかった。以上より、既知のヌクレオイド因子のノックダウンによってヌクレオイドの巨大化を示すのはTFAMとClpXだけであった。 TFAMノックダウンによる巨大ヌクレオイドをSYBR Green Iを用いて染色し、生細胞でタイムラプス解析を行い、その動態を詳細に観察した。その結果、通常頻繁に融合・分裂を繰り返しているヌクレオイドが、TFAMノックダウンでは動きが小さく、分裂が抑えられている様が観察された。 In vivoにおけるTFAM間相互作用ドメインを決める目的で、分割GFP様タンパク質との融合タンパクを用いた相互作用解析を行った。その結果、TFAMが生細胞のミトコンドリア内でも相互作用していることがわかり、DNA結合ドメインの一つがTFAM間相互作用に重要であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までさまざまな手法を用いてTFAMと物理的・機能的に相互作用している因子を探索してきたが、得られたのはClpXのみであり、TFAMと直接相互作用しているのはTFAM自身のみであった。また今年度は、これまでに報告されている約40種のヌクレオイド関連タンパク質の網羅的ノックダウンに着手でき、mtDNAの分布に関係する因子の探索を行った。その結果、mtDNAの分布に異常をきたす新たな因子は得られなかった。これらの結果より、他の関連因子は同定できていないものの、mtDNAの分配・分布調節をTFAMとClpXという少数のヌクレオイド因子が担っていることが強く示唆された。 ClpXに関しては、in vitroではあるがTFAMの多量体形成に影響を及ぼしていることを示唆する予備データが得られている。 また、TFAM間相互作用に必要な領域がある程度わかったこと、タイムラプス解析によるmtDNAの動態解析系も構築されたことから、ほぼ予定通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
TFAM調節因子としてClpXを単離したが、その分子機構は未だに多くが不明である。したがって、ClpXがいかにTFAMを調節しているのかさらに解析を進める。具体的にはまず、TFAM、ClpX間の相互作用ドメインを決定する。一方でTFAMは自己相互作用し、多量体を形成することが分かっている。そこで、ClpXがTFAM間相互作用や多量体の形成に与える影響をvitroあるいは細胞を用いた解析によって明らかにする。TFAMが形成する高次複合体の解析をするために、Blue Native法を用いた未変性タンパク複合体の分離解析を行う。 現在までに、TFAM間相互作用に重要なドメインの予測がある程度できていることから、より詳細にその領域を絞り込む。TFAM間相互作用ができない変異体を作製し、TFAMノックダウンのレスキュー解析などにより、mtDNAの分配・分布調節にTFAM間相互作用が果たす役割を調べる。 TFAMが個体においてもmtDNAの分配に関わることを示すためのモデルとして、線虫を利用する。変異型mtDNAを一定の割合で含む線虫変異体が海外のグループによって単離されている。この株を現在入手しているところであり、これを用いたmtDNA分配解析系を立ち上げる。それと共に、ソーキングRNAiやフィーディングRNAiを介したTFAMホモログ遺伝子のノックダウンにより、分配異常が誘導されて変異型mtDNAの含有率に違いが出るのかどうか調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初海外での成果報告を予定していたが、本年は当該学会が国内で開催されたこともあり、旅費が大きく縮小された。 また、購入予定にしていた実体顕微鏡が研究室内で共用利用できるようになったことから、物品費も縮小したため。 最終年度は1-2年目と同等の直接経費が使えることになるが、主に試薬やキットなどの物品費としての使用を計画している。具体的には線虫を用いた新たな解析系を立ち上げる必要があり、そのための物品費として有効に使用する。
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