2012 Fiscal Year Research-status Report
SIK3シグナルを介した免疫調節機構の解明と新規抗炎症物質の探索
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24790333
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Research Institution | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
Principal Investigator |
佐野坂 真人 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, 研究員 (30510515)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 代謝学 / プロテインキナーゼ / SIK / 炎症 |
Research Abstract |
SIK3欠損マウスは抗肥満・抗メタボリックシンドロームの表現型を示すことから、SIK3欠損によって何らかの炎症シグナルが変化していることが考えられる。SIK3欠損マウスは、高胆汁酸食給餌で野生型と比べて肝臓におけるTNFalphaの発現が高いにも関わらず、炎症マーカーであるCRPの発現は低いことが明らかとなった。この時、SIK3欠損マウスは重度の胆汁うっ滞を起こしている。 野生型およびSIK3欠損マウスから単離した初代培養肝細胞を10ng/mLのIL-6で24時間刺激したところ、野生型マウス由来肝細胞では炎症マーカーCRPの発現は上昇したが、KOマウス由来肝細胞では上昇しなかった。この時、STAT3のリン酸化がKOマウスで低下していた。 また、SIK3のマクロファージにおけるサイトカイン発現に対する発現相関や影響を検討した。RAW264.7マクロファージ様細胞株をLPSで刺激したところ、SIK3の発現はLPS濃度依存的また刺激時間依存的に増加した。SIK3-KOマウスより採取した腹腔内マクロファージでは、野生型マクロファージと比べて、LPS刺激によるIL-6およびIL-12p40のmRNA発現が上昇していた。またこの時、TNFαおよびIL-1βのmRNA発現に変化は見られなかった。反対に、RAW264.7マクロファージ様細胞株にSIK3を強制発現させたところ、IL-6のmRNA発現は低下していた。 この結果はSIK3シグナル経路と炎症シグナルとの関連性を強く示唆したものであり、SIK3欠損によって、炎症性サイトカインにより炎症が惹起されなかったことを示唆している。マクロファージにおいては、SIK3が特にマクロファージにおける二次的応答遺伝子の発現を制御していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実験により、SIK3-KOマウス由来肝細胞を用いた実験によって、SIK3はSTATによるシグナル伝達経路を制御していることが明らかとなり、このことによって急性期タンパクの発現がKOマウスで低下していることが明らかとなった。 更に、SIK3-KOマウス由来マクロファージを用いた実験から、SIK3は炎症性サイトカイン発現を抑制することが明らかとなった。 研究申請書の平成24年度研究計画においては、SIK3シグナルと免疫制御シグナルとの関連性の解明を目的としており、これらの実験結果により、計画どおりにSIK3シグナルと免疫制御シグナルとの関連性の一端を解明することができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト肝細胞株であるHepG2細胞とマウスマクロファージ細胞株であるRAW264.7細胞を用いて、SIK3阻害物質のスクリーニングを行う。研究代表者が所属する医薬基盤研究所・代謝疾患関連タンパク探索プロジェクトでは、SIK3によって抑制されるTORC2と活性化されるMEF2Cのレポーター遺伝子を用いた、SIK3の活性をモニタリングするアッセイ系を構築している。SIK3タンパク質を過剰発現させたHepG2細胞およびRAW264.7細胞ににSIK3によって抑制されるTORC2と活性化されるMEF2Cのレポーター遺伝子を一時的に導入し、様々な化合物で刺激してTORC2(抑制)およびMEF2C(促進)の転写活性を測定する。この実験により、SIK3阻害による抗炎症物質が同定される。 スクリーニングされた化合物の抗炎症作用を解析する。具体的には、炎症に関与する転写因子であるNF-kappaBおよびSTAT3のレポーター遺伝子を構築し、それらを導入したHepG2細胞およびRAW264.7細胞を前項でスクリーニングされてきた化合物で刺激して、その後LPSおよびIL-6で刺激する。NF-kappaBおよびSTAT3の転写活性を測定することによって、炎症シグナルの強度とする。 さらに、LPSを腹腔内投与した野生型マウスにこの阻害物質を投与して、肝臓における急性期タンパク質の発現をRT-PCR法およびウェスタンブロット法にて解析し、さらに血中炎症性サイトカイン濃度をELISAで、脾臓の免疫細胞活性化プロファイルをFACSによって解析する。これらの実験によって、SIK3阻害物質による抗炎症作用が明らかになる。 以上の実験により、新規の抗炎症シグナルの発見と炎症制御のための候補化合物が提案できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)