2012 Fiscal Year Research-status Report
食道癌の増幅遺伝子SOX2のAKT経路を介した腫瘍増殖機序の解明と治療への応用
Project/Area Number |
24790339
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
玄 泰行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80596156)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | SOX2 / 食道扁平上皮癌 / AKT / mTOR / mTORC1 |
Research Abstract |
SOX2の遺伝子増幅をもつ食道扁平上皮癌細胞株を用いて、さまざまなシグナル経路のタンパク質のリン酸化を検出するリン酸化蛋白アレイを行うと、SOX2を抑制した場合にp-AKTおよびp-S6の発現が抑制される結果であった。これらの結果をウェスタンブロッティングで検証し、SOX2をノックダウンすると、p-AKT、p-S6K、p-S6、p-4EBP1の発現が低下することが明らかとなった。一方、SOX2の発現が極めて低い細胞株KYSE30にSOX2を強制発現させた安定発現株(KYSE30-SOX2)は逆に前述のリン酸化蛋白の発現が上昇していた。これらの結果からSOX2はAKT-mTORC1経路を活性化させていることが示された。また、in vitroにおいて、LY294002(PI3K阻害剤)を用いてp-AKTを阻害すると、これらの細胞の増殖は濃度依存性に抑制された。 つぎに、SOX2の安定発現株(KYSE30-SOX2)及びコントロールの細胞を用いてin vivoにおける腫瘍形成をヌードマウスの皮下に移植する皮下移植腫瘍モデルを用いて検討したところ、SOX2はvivoにおける腫瘍形成を促進した。vivoで形成された腫瘍を回収し、タンパクの発現をウェスタンブロッティングで確認し、vitro同様、AKT-mTORC1経路がSOX2の導入に伴い活性化していることが明らかとなった。 このSOX2安定発現株が形成したvivoにおける腫瘍に対して、LY294002あるいは溶媒のみをマウスの腹腔内に投与すると、LY294002の投与によって腫瘍形成は抑制され、腫瘍におけるp-AKTの発現も抑制されていた。以上の結果から食道扁平上皮癌の増幅遺伝子SOX2は食道扁平上皮癌においてAKT-mTORC1経路を活性化させ、腫瘍形成を促進していることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、3年間で予定していた研究計画は、①食道扁平上皮癌におけるSOX2発現亢進に伴うAKT/mTOR経路の活性化、②SOX2発現食道扁平上皮癌におけるAKT/mTOR経路阻害の抗腫瘍効果、③臨床標本におけるSOX2発現によるAKT活性化の臨床病理学的評価の3つであったが、予定通り①についてはin vitroおよびin vivoで確認することができた。また②については、mTOR阻害剤による抗腫瘍効果は検証できていないものの、AKTを阻害することでAKT/mTORC1経路が抑制され、SOX2高発現腫瘍における抗腫瘍効果を確認することができた。以上の結果から、当初予定していた実験はおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から食道扁平上皮癌において、SOX2は遺伝子増幅に伴い発現亢進しており、その結果、AKTの活性化及びその下流であるmTORC1の活性化を通じて、腫瘍形成を促進していることが示された。 今後の課題は①mTORC1阻害剤がSOX2高発現食道扁平上皮癌の増殖を抑制できるかどうかを検討すること、②実際の食道扁平上皮癌臨床標本においてSOX2高発現とAKT-mTORC1経路活性化がみられるかどうかを検討し、またSOX2-AKTの活性化している食道扁平上皮癌の臨床病理学的特徴を明らかにすること、③SOX2がAKT-mTORC1経路を活性化させる機序を明らかにすることであると考えられる。これらを明らかにすることを目的に実験を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
mTORC1阻害剤であるrapamycinを用いてmTORC1経路を阻害し、SOX2高発現食道扁平上皮癌における効果を検証する。in vitroにおいてramapmycinの各濃度におけるAKT/mTORC1経路(p-AKT、p-4E-BP1、p-p70S6K)の発現をwestern blottingで調べ、細胞生存を増殖アッセイを用いて評価する。 SOX2、p-AKTの免疫組織化学を行い、食道扁平上皮癌臨床標本における発現量を評価する。それらの結果と臨床データ(患者背景、予後、治療効果)および病理学的特徴とを照合することで、SOX2-AKT経路の活性化における臨床病理学的意義を明らかにする。
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Research Products
(1 results)