2013 Fiscal Year Research-status Report
食道癌の増幅遺伝子SOX2のAKT経路を介した腫瘍増殖機序の解明と治療への応用
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24790339
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
玄 泰行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80596156)
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Keywords | SOX2 / 食道扁平上皮癌 / AKT / mTORC1 |
Research Abstract |
SOX2の遺伝子増幅に伴う癌促進的シグナル経路を明らかにするため、リン酸化蛋白アレイによるスクリーニングとウェスタンブロッティングによる検証を行い、SOX2の過剰発現がp-AKT-mTORC1経路の亢進(p-AKT、p-S6K、p-S6、p-4EBP1の上昇)をもたらすことを明らかにした。 in vitroにおいて、p-AKTの上流であるPI3Kやp-AKTの下流であるmTORC1を阻害剤を用いて阻害すると、SOX2の遺伝子増幅のある食道扁平上皮癌細胞において、濃度依存性に細胞増殖が抑制された。一方で、MEK阻害剤を用いて他の増殖促進経路であるERK経路を抑制しても増殖は抑制されず、その機序としてはp-AKTの活性化が考えられた。 in vivoにおいて、ヌードマウスの皮下に細胞を移植し、腫瘍形成させると(皮下移植腫瘍モデル)、SOX2強制発現細胞株はコントロールと比較し、腫瘍増殖が亢進している結果であった。これらのサンプルにおいてもin vitroの結果同様、p-AKT-mTORC1経路が亢進している結果であった。さらにSOX2強制発現細胞をin vivoで腫瘍形成させた後、PI3K阻害剤を投与すると、p-AKT-mTORC1経路の抑制を認め、腫瘍増殖は抑制された。 臨床標本において、SOX2とp-AKTの発現を免疫染色で比較すると、SOX2高発現腫瘍において有意にp-AKTの発現も上昇している結果であった。 これらの結果をまとめ、学会発表及び論文発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回、3年間で予定していた研究計画は、①食道扁平上皮癌におけるSOX2発現亢進に伴うAKT/mTOR経路の活性化、②SOX2発現食道扁平上皮癌細胞におけるAKT/mTOR経路阻害の抗腫瘍効果、③臨床標本におけるSOX2発現によるAKT活性化の臨床病理学的評価の3つであった。初年度において①について、in vitro及びin vivoで検証することができた。②については今年度の実験でAKT阻害及びmTORC1阻害により、AKT-mTORC1シグナルあるいはmTORC1シグナルの抑制が確認でき、それによる増殖阻害効果を検証することができた。さらに③についてもtissue micro arrayを用いて食道扁平上皮癌におけるSOX2の発現とp-AKTの発現を調べたところ、臨床病理学的所見との関連は認めなかったが、SOX2の発現とp-AKTの発現に正の相関があることを見いだした。これらの結果をまとめ、学会発表及び論文発表を行い、当初3年間で予定していた計画は順調に遂行することができた。 現在、これらの結果を元に、SOX2がp-AKTを亢進させる機序の解明に取り組んでいる。 本年度まで得た結果を論文発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果を元に以下の点を明らかにするために研究を進める。 ①SOX2がAKT-mTORC1シグナルを亢進させる機序 ②SOX2が発現亢進している食道扁平上皮癌において、実臨床で使用できる分子標的治療薬の反応性 ①については、AKTの上流であるレセプター型チロシンキナーゼの発現やAKTのnegative regulatorであるPTENの発現を調べ、SOX2がそれらの発現を調整するかどうかを確認する。 ②については、EGFR阻害剤やmTOR阻害剤を用いてまずin vitroにおける薬剤感受性をSOX2の発現が高い食道扁平上皮癌細胞とSOX2の発現の低い食道扁平上皮癌細胞で比較し、SOX2の発現及びそれに伴うAKT-mTORC1シグナルの亢進が分子標的治療に及ぼす影響を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた実験が予想以上に順調に遂行することが可能であった。特にin vivoの皮下移植腫瘍モデルを用いた検討において、条件設定のための予備実験がしっかり行えたことで、以後の実験が予定以上に滞りなく、遂行できたことが大きな理由と考えられた。 これまでの結果を基に、SOX2がp-AKT-mTORC1経路を亢進させる機序を解明する。具体的には、p-AKTの正の調節因子である各種レセプター型チロシンキナーゼや負の調節因子であるPTENなどの発現をウェスタンブロッティングで調べ、SOX2のノックダウンや強制発現と組み合わせてSOX2がp-AKTを亢進させる機序について検討する。また、前年度までに使用してきた阻害剤に加え、実臨床への応用を想定し、臨床応用されている各種分子標的治療薬を用いて、SOX2高発現食道扁平上皮癌に対する増殖抑制効果を検証する。
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