2013 Fiscal Year Annual Research Report
EBV感染と宿主細胞との相互作用によるDNAメチル化誘導機構の包括的解析
Project/Area Number |
24790347
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松坂 恵介 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40610150)
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Keywords | エピジェネティクス / Epstein-Barr virus / 病理学 |
Research Abstract |
DNAメチル化は遺伝子発現を制御するエピジェネティクス機構のひとつとして癌や発生分化での重要性が知られている。先行研究の胃癌におけるDNAメチル化の網羅的解析の結果、我々はEpstein-Barr virus (EBV) 陽性胃癌がゲノムワイドにメチル化の亢進した一群であり、in vitroのEBV感染実験により通常型胃癌細胞株にEBV陽性胃癌と同様のメチル化形質を誘導出来ることを明らかにした。 本研究では宿主細胞とEBVの密接な相互作用に着目し、感染早期のDNAメチル化の変化を継時的に解析した。宿主細胞とEBVからマーカー遺伝子を抽出し、パイロシーケンスにより定量的にDNAメチル化の変化を解析した。結果、EBVゲノムのメチル化は感染後11日目から誘導され始め、17日目に完全に入り終えた。一方、宿主細胞のゲノムはEBVゲノムのメチル化が入り終えた17日目から誘導され始め、24日に完全にメチル化された。すなわち、EBVゲノムのメチル化は宿主細胞の変化に先行する形で起こることが明らかとなり、両者の間に秩序だったメカニズムが存在する可能性が伺われた。 また、DNAメチル化アレイを用いたゲノムワイドな解析により、宿主細胞におけるDNAメチル化はゲノム全体にわたり時間的・空間的に同調した形で誘導されており、領域による誘導のばらつきは見いだされなかった。この結果から、EBV感染がもたらすDNAメチル化誘導の圧力は非常に強力であることが示された。 本研究の特色はエピジェネティクス・ウイルス学・病理学と多岐の分野にまたがる生命現象を包括的に理解しようとするところにあり、その成果は基礎生命科学への貢献はもとより、EBV関連腫瘍の発癌予防や治療標的の開発などの臨床への応用も期待される点で意義深い。
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