2012 Fiscal Year Research-status Report
SMARCB1/INI1蛋白陰性悪性腫瘍の再分類と治療への応用
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24790352
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
孝橋 賢一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10529879)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | SMARCB1/INI1 / 悪性ラブドイド腫瘍 / Akt-mTOR経路 |
Research Abstract |
小児SMARCB1/INI1(以下INI1)蛋白陰性腫瘍群38例〔悪性ラブドイド腫瘍(以下MRT)26例、非定型奇形腫様・ラブドイド腫瘍(以下AT/RT)4例、非中枢神経組織原発・分類不能肉腫(以下US)8例〕に関して解析を行った。まず、上皮系、非上皮系(神経、筋など)の形質発現を検討したところ、おおむね一致した発現を得た。また、組織学的に再分類すると、既知のMRTの組織像に合致するものが26例(全例MRT)(以下conventional type)、AT/RTに合致するものが6例(AT/RT 4例、US 2例)(以下AT/R type)、悪性リンパ腫類似の小円形細胞からなるものが6例(US 6例)(small cell type)となった。これらに対して、Akt-mTOR経路関連蛋白(Akt、mTOR、S6RP、4E-BP1)の活性化状況(リン酸化)を免疫組織学的に検討した。Conventional typeでは、Akt、mTOR、S6RPは15-25%、4E-BP1は75%で活性化を認めた。一方、AT/R typeではAkt、mTOR、S6RP、4E-BP1は80-100%で、small cell typeでは、Aktは80%、mTOR、S6RP、4E-BP1は40-60%で活性化を認めた。このように、AT/R typeやsmall cell typeでは、conventional typeよりも高い割合でAkt-mTOR経路が活性化していた。また、各蛋白の活性化群、非活性化群で予後の検討では、Akt、mTOR、S6RP、4E-BP1ともに有意差は認めなかった(P=0.61、P=0.76、P=0.76、P=0.10)。しかし、20ヶ月以上の長期生存例ではmTOR、S6RPで活性化がみとめられないことから、mTOR阻害薬が治療に有用である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初2か年計画の下、INI1蛋白陰性悪性腫瘍(類上皮肉腫および悪性ラブドイド腫瘍、分類不能肉腫)を解析する予定であった。特に、1年目に関しては、cDNAマイクロアレイを施行し、分子標的治療のターゲットとなりうる遺伝子を検索する予定であった。しかし、本課題の研究を施行する前に行っていた、少数例による既知の分子標的治療のターゲットとなりうる複数の蛋白に対する予備実験で、Akt-mTOR経路での良好な結果を得ていた。そのため、Akt-mTOR経路での実験を優先した。その結果、多数例を用いた検討でも、Akt-mTOR経路活性化に関して、また、本年度は小児例に対象を絞ったため、2年目に行う予定にしていた層別化まで行うことができたうえ、病理学的分類と治療関連因子との相関を認めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
INI1蛋白陰性腫瘍群のうち小児発生例に関しては、平成24年度にほぼすべての実験を行いえたので、今後は成人例(類上皮肉腫など)での検討を行う予定にしている。方法は、昨年度と同様に、Akt-mTOR経路関連蛋白の活性化状況(Akt、mTOR、S6RP、4E-BP1のリン酸化)を検討し、臨床病理学的因子と比較を行う。また、悪性ラブドイド腫瘍と類上皮肉腫(特に、近位型類上皮肉腫)とは、組織学的類似性から同一の腫瘍であるとの見解も見受けられため、上記のような分子標的治療の候補遺伝子という点から、どのような差異があるかについても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度と同様な実験計画のため、大きな出費の変更はない。しかしながら、各種実験遂行のための条件設定は終了しているため、昨年度よりも出費は抑制できると考えている。具体的には、リン酸化Akt、mTOR、S6RP、4E-BP1に関する免疫染色やWestern blot、また、統計学的解析である。それらに加え、昨年度の研究成果の発表のための、出張費や論文投稿に係る諸費用が必要となる。それらの出費によっても尚、研究費および時間に余剰が生じた場合には、Akt-mTOR経路関連蛋白のみならず、新たな分子標的治療のマーカーとなりうる候補タンパクに関して検討を追加する予定である。
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