2012 Fiscal Year Research-status Report
新規膵癌(膵管内管状乳頭腫瘍)のマウスモデルの作製
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24790358
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
山口 浩 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20510697)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 膵管内管状乳頭腫瘍 / 膵癌 / 遺伝子改変マウス |
Research Abstract |
Intraductal tubulopapillary neoplasm (ITPN)は,我々が2009年に発表した膵管内腫瘍の新しい疾患概念である.我々は前回の研究で,ITPNの一部においてPIK3CAの変異がみられること,また多くのITPNにおいてAKT経路の活性化が示唆されることを報告した.今回の研究の目的は,マウスにおいて膵特異的にPIK3CAの体細胞変異を導入してITPNに類似した膵管内腫瘍の形成を試みるものである. CreはDNA分子の特定の配列(loxP)同士の間で組換えを起こすたん白質である.このCre-loxPシステムを用いて以下の2種の親マウスを掛け合わせることにより,膵特異的に変異型のPIK3CAが発現する遺伝子改変マウスが作製可能である.①Cre-PDX1マウス.PDX1のプロモーター下にCre組換え酵素を組み込んだマウス(PDX1は高い特異度で膵に発現する遺伝子).②LSL-PIK3CAmutantマウス.内因性のPIK3CA遺伝子のプロモーター領域にloxP-Stop-loxPという配列が挿入され,その下流に変異型PIK3CAの配列が連なった遺伝子改変マウス. 本年度の成果であるが,①についてはMMRRC(米国)より,目的とする遺伝子改変が行われたマウスを凍結精子の形で輸入した.マウスの個体化・微生物検査を本邦理化学研究所に依頼し,当大学動物実験施設に輸送した.②のマウスについては,カナダ・トロント大学から2種の遺伝子改変マウス(E545K,H1047R)の供与を受け,微生物検査を終えた後,同動物実験施設に輸送した.①②のマウスともに,genotypingを行い,必要な遺伝子導入が行われていることを確認した.現在,それぞれのマウスにおいて,遺伝子異常がホモのもの,ヘテロのものを作製する目的で維持・継代を進めている段階である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,大きく分けて2つの段階に分けられる.一つの段階は,掛け合わせに必要な2種の親マウスを準備すること,そして次の段階が,掛け合わせて出来た新しいマウスに,ITPN類似の膵管内腫瘍が出来るかどうかを検証する段階である.本年度は,最終的に2種の親マウスを自施設に入れることが出来,genotypingにより目的とする遺伝子改変が行われていることの確認も終了した.反省点としては,この親マウスの出所がいずれも米国となったため,該当機関との折衝や契約の締結,マウスもしくは凍結精子の空輸,凍結精子のマウスへの個体化,微生物検査などに非常に時間がかかったことである.本来であれば本年度のうちに2種の親マウスの掛け合わせを開始したかったが,上記の諸事のためその段階まで研究を進めることが出来なかった. しかしながら,屯坐をすることなく必要とする親マウスの準備が遂行出来たため,研究自体は確実に目的に向かって進んでいると自己評価する.今回準備したマウスを掛け合わせることにより,膵特異的にPIK3CAの体細胞変異を有する遺伝子改変マウスモデルの作製自体は高い確率で達成出来ると考えている.最終的にはITPN類似の膵腫瘍を有するマウスを得ることが目的であるが,少なくとも今回の研究でPIK3CAの遺伝子変異,すなわちPI3K/AKT経路の異常活性化で膵にどのような形態変化が生じてくるかの解析が十分に可能であろう.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,親マウスの遺伝子異常が,ヘテロであるもの,ホモであるものをそれぞれ作製・維持し,それらが確立できたら早急に掛け合わせを施行したい.経時的にマウスをsacrificeして膵の検索を行い,ITPN類似の腫瘍が発生しているかどうかを中心に,膵の形態的変化の解析を行う.ITPN類似の腫瘍の発生が認められた場合は,免疫組織化学的検討を追加し,ヒトにおけるITPNとcharacterがどこまで共通しているかの詳細な解析を行う. 腫瘍が高頻度に発生するという結果が得られた場合は,自然予後の解析,またmTOR阻害薬の効果の有無の検討を行っていく予定である. 目的とする腫瘍の発生がみられなかった場合,AKT活性化やPTENの抑制などを加えて,より強力にPI3K/AKT経路の活性化が惹起された次世代のマウスの作製も検討したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスの飼育・維持に関し,ゲージ使用量や飼料代などが随時必要となる.Genotypingに必要なprimerや解析に用いる試薬などの消耗品が必要である.腫瘍の発生を見た場合,免疫組織化学的検討に用いる抗体,western blottingに用いる抗体などが必要となる. 以上のようなマウス維持費,物品費が主な研究費の使用対象となる.また,腫瘍の発生がえられた場合は国際学会で結果を発表する予定であり,その旅費等も研究費使用計画の対象となる.
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Research Products
(5 results)