2012 Fiscal Year Research-status Report
高感度in situハイブリダイゼーション法によるC型肝炎ウイルス遺伝子型の同定
Project/Area Number |
24790367
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
塩竈 和也 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (10387699)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | HCV / in situ hybridization / locked nucleic acid / HCV genotyping / nested RT-PCR / ヒト肝臓型HCV感染キメラマウス |
Research Abstract |
平成24年度は、1) LNA/DNAキメラプローブ(HCV共通プローブとHCV genotypingプローブ)の作製、2) ヒト肝臓型HCV感染キメラマウスを用いたin situ ハイブリダイゼーション(ISH)法による至適検出条件の確立とnested RT-PCRによるHCV genotypingを行った。 抗ヒトCK8/18マウスモノクローナル抗体を用いて、ヒト肝臓型HCV感染キメラマウスのホルマリン固定パラフィン切片におけるマウス肝組織とヒト肝組織の染め分けを行った。市販のブロッキング試薬(マウス組織とマウス抗体による免疫染色に有効)を加えた結果、ヒト肝組織のみに陽性シグナルが確認され、明瞭に両組織の分布を鑑別できた。さらに、各HCV亜型別のパラフィン切片からHCV-RNAを抽出して、nested RT-PCRによるHCV genotypingにも成功している。 われわれは、すでに本研究の準備段階でHCV共通ゲノムをターゲットとしたLNA/DNAキメラプローブを作製している。さらなる検出感度の向上を図るため、LNAの組み込む位置が異なるプローブを2種類追加作製した。ヒト肝臓型HCV感染キメラマウスを陽性コントロールとして、ISH法において最も陽性シグナルが明瞭かつ非特異反応が抑制された至適検出条件を確立した。さらに、違う種類のプローブ(RT-PCRを用いたcDNAプローブとcRNAプローブ)を作製して比較したが、LNA/DNAキメラプローブが最も検出感度に優れていた。いずれもRNase処理による陽性シグナルの陰性化を確認している。HCV genotypingプローブ(4種類の遺伝子型×2パターン=8種類)を作製した後、ISH法によるHCV genotypingを行ったが、陽性シグナルは確認されたものの、各HCV遺伝子型別に鑑別できるまでには至っていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、ほぼ研究計画どおりに進行しているが、一部実現できなかった項目が残っており、次年度の研究計画と並行しながら改良を加える。 HCV感染ヒト肝臓型キメラマウス(ホルマリン固定パラフィン切片)を用いた検討では、ヒト特異的CK8/18抗体による免疫染色で、マウス肝組織とヒト肝組織の染め分けが可能となった。さらに、各HCV遺伝子型別(1a型、1b型、2a型、2b型)のパラフィン切片からHCV-RNAを抽出した後、nested RT-PCRによるHCV genotypingも計画どおり成功した。HCV共通プローブを用いた高感度ISH法では、さらにLNAの組み込む位置が異なる3種類のLNA/DNAプローブ、RT-PCRによるcDNAプローブおよびcRNAプローブの計5種類のプローブを用いて条件検討を行った。LNA/DNAキメラプローブとbiotin-freeチラミド増感法の組み合わせが最も優れており、HCVが感染しているヒト肝組織に限って明瞭な陽性シグナルが検出できた。3種類のLNA/DNAキメラプローブは、若干だが陽性シグナルの差が認められ、その中でシグナルが強くかつ非特異反応が最も抑えられたプローブを選出した。本法では、従来ISH法で行われている核酸露出処理後の4%パラホルムアルデヒドによる再固定や、非特異反応を抑えるための操作(塩酸処理、0.25%無水酢酸/0.1 Mトリエタノールアミン処理)を行わなくても、簡便な手法で明瞭なシグナルを検出できることに成功した。 次年度に予定されている臨床検体を対象とした検討のために、本学「疫学・臨床研究等に関する倫理審査委員会」への申請書を提出して、すでに承認を得ている。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに本学「疫学・臨床研究等に関する倫理審査委員会」から臨床検体使用の承認を得ており、平成25年度は、次のステップである臨床検体への応用に移行する。 本学大学病院に保管されているホルマリン固定パラフィン包埋ブロックを対象に、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌の症例を生検、手術材料に分けて各10症例ずつを目途に選出する。その後、臨床検体を用いたnested RT-PCRによるHCV genotypingを行い、HCV亜型の同定を行う。血清データと照らし合わせて、各検体のHCV遺伝子型の一致を確認する。 高感度ISH法は、動物モデルにおける検出条件はすでに確立したが、臨床検体にあわせた検出条件を設定する必要がある。とくに、核酸露出処理については生検と手術材料間で条件が大きく異なる可能性があるため、プロテイナーゼK濃度に注意して条件設定する。適宜ブロッキング処理を施行して、背景染色の抑制を図る。 上記と並行して、課題である高感度ISH法に使用するHCV genotypingプローブを改良する。現在、ターゲットとしているHCV遺伝子領域は、HCV遺伝子型間の塩基配列レベルで相同性が低いとされるNS4領域である。プローブを見直すために、同領域から約50mer程度のプローブを新たに設計して、さらにNS5領域からも同程度の長さのプローブを各HCV遺伝子型別に作製する。「BLASTN」を用いたホモロジー検索により、標的以外の遺伝子と相同性を持たないことを確認する。 すべてのデータ解析後、今年度内に成果発表と英文論文を作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の大半は、実験消耗品にあてる。とくに、高感度ISH法によるHCV genotypingのためのLNA/DNAキメラプローブを重点的に購入する。HCV共通プローブもあわせて追加購入する。高感度ISH法では、市販のbiotin-freeチラミド増感試薬(Dako社製CSAII kit)を検出キットとして採用しているが、本試薬は高価であるため、FITC化チラミドに必要な試薬類を購入して自家製に切り替える。ISH法およびnested RT-PCRは、前年度の試薬を引き続き使用する。しかし、組織切片作製のための試薬・用品、ISH法用試薬・器具、nested RT-PCRのためのRNA抽出キット、RT-PCR用試薬・器具、genotyping用PCRプライマーを適宜追加購入する。学会発表のための国内旅費、英文論文の校正・校閲を外部依頼するための謝金も必要である。
|