2012 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチの滑膜病変で産生される自己抗体の解析:「酵素抗原法」を活用して
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24790368
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
水谷 泰嘉 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (10546229)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 酵素抗原法 / 抗原特異的抗体産生細胞 / 関節リウマチ / コムギ胚芽無細胞蛋白合成系 / AlphaScreen |
Research Abstract |
今年度は、これまでの酵素抗原法による検討で陽性細胞が得られたTRIM21とFBXO2について、免疫吸収試験を実施した。未標識抗原と標識抗原をPBS中で混合し、これを用いて酵素抗原法を実施したところ、TRIM21では、標識抗原単独染色で認められた陽性像が、良好に吸収された。一方FBXO2では、吸収が認められなかった。そこで、抗原希釈液をAlpahScreen(AS)で使用する緩衝液(AS buffer: 0.05M Tris、1%BSA、0.05%Tween20)に変更し、吸収試験を実施したところ、良好な吸収が認められた。単独染色においても、PBS希釈よりも、良好な染色像が得られたことから、他の抗原においても、染色性改善の手段となり得ると期待された。このAS bufferを用いて、組織抽出液でASシグナルの高い抗原を希釈して、対応する滑膜組織切片に対する酵素抗原法を実施した。しかし、陽性形質細胞の検出には至らなかった。一部の抗原で背景染色の減弱が認められたことから、抗原溶液への界面活性剤の添加や、血清タンパク等によるブロッキング処理が、抗原の種類によって有効であることが示唆された。 一方、染色の過程で、二次抗体であるHRP標識抗IgG抗体に反応する少数の形質細胞が滑膜組織中に認められた。二次抗体の交差反応の可能性が疑われるが、rheumatoid factorを検出した可能性もある。そこで、ビオチン標識ヒトγ-globulinをプローブとして酵素抗原法を実施したところ、陽性細胞が検出された。したがってこの陽性シグナルはrheumatoid factorを検出している可能性が高い。今後、ビオチン標識ヒトIgGを用いた検討をさらに加える予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、コムギ胚芽無細胞系で合成した自己抗原を用いた「酵素抗原法」の染色条件を検討することを目的としている。しかし、酵素抗原法の染色性改善を期待して、種々の工夫を検討したものの、良好な結果が得られておらず、目的は達成できていない。その理由として、染色対象としている組織切片上に、標的となる抗体を産生する形質細胞が浸潤していない可能性が考えられる。今後、この点を補えるような対応が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
酵素抗原法で良好な染色像が得られない理由として、染色対象の組織に、対象の抗原に対する特異抗体を産生する形質細胞が浸潤していない可能性がある。組織抽出液のAlphaScreen(AS)のシグナルが高値であることから、組織内の抗体の産生が疑われる。しかし、ASに使用した組織と酵素抗原法に使用した組織は、連続性はあるものの、同一の組織ではない。そのため、ASで認められた抗体を産生する形質細胞が酵素抗原法を実施した組織に確実に存在するとは限らない。そこで、今年度はラットに抗原を免疫して、確実に抗体産生を誘導する。そして、免疫ラットのリンパ節を対象に種々の検討を加える予定である。そのうえで、リウマチ滑膜を対象に、酵素抗原法を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は動物免疫実験に使用する。具体的には1.免疫実験用ラット、2.免疫用精製抗原の作製、3.免疫実験用試薬・消耗品に充てる。また、rheumatoid factorを対象とした酵素抗原法の実験にも充当する予定である。翌年度に請求する研究費は、酵素抗原法の条件検討用試薬類、染色用標識抗原蛋白の合成に使用するほか、愛媛大学での実験・研究打ち合わせおよび学会発表のための旅費として使用する予定である。
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