2012 Fiscal Year Research-status Report
胎盤でのNKG2Dリガンド発現の生理的意義と疾患への関与の解明
Project/Area Number |
24790373
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大塚 紀幸 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00447046)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | NKG2Dリガンド / 胎盤 |
Research Abstract |
平成24年度は、まず本研究の基礎となるデータの確立を目的として、各NKG2Dリガンドの発現変動解析を詳細に行なった。タンパク質レベルでの発現量検討が困難であることから、real-time PCRによる検討に重点を置いた。胎盤形成期から妊娠後期にかけて、MULT-1 mRNA発現の減少とH60c mRNA発現の増加を認めた。但し、これらの発現はRae-1に比較すると低い発現量にとどまっており、病態生理学的意義が大きいとは言えない。 マウスモデルを用いた実証の第一段階として、NKG2Dリガンド-受容体間のinteractionを抗体により阻害する検討を行なった。投与による産仔数には影響はなく、NKG2D受容体阻害による流産率の増加は見られなかった。妊娠期の免疫寛容への寄与はそれほど高くないと考えられた。妊娠初期のNKG2Dリガンド-受容体間阻害による影響の検討では、E6.5においてuNK細胞の浸潤数が減少し、胎盤の血管形成に関与するサイトカインIFN-γとVEGFの発現が低下する傾向が認められた。 これらの傾向から、NKG2Dリガンドの発現が胎盤形成期にuNK細胞の誘導あるいは集積に関与しており、特に胎盤の血管構築に影響を与える可能性が示唆される。胎盤形成期のトロホブラスト浸潤の不全や血管形成が流産や胎児の低体重、子癇前症の要因となっていると考えられており、NKG2Dリガンド発現もその一因となっていると考えられる。本研究結果のさらなる解析が疾患のメカニズム解明に繋がるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NKG2Dリガンド発現の基礎データ確立について、各NKG2Dリガンドがどの程度の役割を果たしているかを確認することができた。 また、実験計画に従ってNKG2D受容体阻害実験を施行し、NKG2Dリガンドの関与が妊娠維持期の免疫寛容よりもむしろ、妊娠初期(胎盤形成期)のuNK誘導あるいは集積に関与していることが示唆され、研究の焦点と方向性を定めることができた。但し、統計学的な有意差が十分に確認できていないため、研究結果について多少の補完が必要である。 また、これらの結果を受けて、胎盤の血管構築等への影響について、形態解析を進める予定であるが、実験手技と解析方法の確立にやや時間を要したため、その途上である。当初の実験計画で挙げていたNKG2Dリガンド発現細胞とuNKのinteractionに関する解析については、研究結果を受けて若干修正の上で施行予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、NKG2D阻害抗体投与実験結果の再確認及び詳細な胎盤形態観察を施行する。具体的には、阻害抗体投与群のサンプル数を増やすとともに、血管形成に関与するサイトカインIFN-γとVEGFのreal-time PCRによる変動の確認を最優先課題として行なう。上述のサイトカインの変化により胎盤形成期の血管構築への影響が予想されることから、既に得られている胎盤のホルマリン固定標本を用いて、詳細な画像解析を行ない検討する。 また、NKG2Dシステムの阻害によりuNK数が減少する機構について、NKG2Dリガンド発現細胞とuNKとのinteractionをin vitroで検討する。uNKにはDBA (Dolichos Biflorus Agglutinin)陽性を示しVEGFを産生する群と、DBA陰性でIFN-γを産生する群が存在することが報告されている(Chen Z et al. Biol Reprod 87:81, 1-9, 2012)。これらの遺伝子発現とサイトカイン産生についても検討に加える。 平成25年度は、流産モデルマウスを用いた疾患への関与の検討を予定している。最近、NKG2D阻害抗体投与により、poly(I:C)投与モデルにおいて流産が抑えられることが他の研究グループにより発表された(Thaxton JE et al. J Immunol 190:3639-47, 2013)。これはIL-10及びTLR活性化経路を介して、胎児の傷害・吸収に関する報告である。今回我々の着目している胎盤形成期への影響について、これらの報告を踏まえて種々の流産モデルを用いた解析を引き続き行なう。 これらに加えて、ヒト流産検体、あるいは症例数が限られているものの妊娠期病理解剖症例でのNKG2Dリガンド発現とNK細胞浸潤の関連について検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は1,259円であり、概ね平成25年度研究費の当初の研究費使用計画に沿って施行予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Involvement of an NKG2D ligand H60c in epidermal dendritic T cell-mediated wound repair2012
Author(s)
Yoshida S, Mohamed RH, Kajikawa M, Koizumi J, Tanaka M, Fugo K, Otsuka N, Maenaka K, Yagita H, Chiba H, Kasahara M
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Journal Title
Journal of Immunology
Volume: 188(8)
Pages: 3972-9
DOI
Peer Reviewed
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