2012 Fiscal Year Research-status Report
ヘミデスモソーム構成分子の毛包幹細胞分裂における役割の解明
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24790376
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松村 寛行 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (70581700)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 17型コラーゲン / 毛包幹細胞 / 細胞極性 / ヘミデスモソーム / aPKC |
Research Abstract |
細胞極性は、哺乳類の幹細胞の自己複製と分化の制御に重要な役割を果たすことが分かってきているが、成体の毛包幹細胞におけるその制御と役割は、全く明らかにされていない。基底膜ヘミデスモソーム構成成分である17型コラーゲンは、表皮基底膜細胞を基底膜へと固定する役割をもつことが知られている。我々は、17型コラーゲンを解析したところ、毛包の基底膜にも発現しており、毛包幹細胞の維持に必須であることを明らかにしてきている(Cell Stem Cell 2011)。本研究では、17型コラーゲンが、どのようにして毛包幹細胞の細胞極性制御に関わるのか、また、その細胞極性の欠損により、どのような表現型を示すのかを解析している。 初めに、免疫染色法により毛包幹細胞の細胞極性を解析したところ、毛包幹細胞は、活発に増殖する時期において、基底膜を軸として、均等分裂および不均等分裂を引き起こすことが分かった。次に、免疫沈降法により17型コラーゲンとの結合分子を解析したところ、細胞極性制御因子であるaPKCと結合することが分かった。また、17型コラーゲンの毛包特異的欠損マウスを作製し解析したところ、毛包幹細胞の無極性の不均等分裂を増加させて、表皮角化細胞へと異所性分化し、均等分裂の減少により毛包幹細胞を枯渇し、最終的に脱毛に至った。また、aPKCの毛包特異的欠損マウスでも、より顕著な脱毛を含めた、同様の表現型を示した。さらに、加齢やゲノムストレスより17型コラーゲンの発現減少を伴って細胞極性を失うこと、逆にヒト型17型コラーゲンをマウスに過剰発現させると加齢やゲノムストレスによる毛包幹細胞の異常を部分的に回避することができることが分かった。これらの結果は、加齢やゲノムストレスに伴う毛包幹細胞の制御異常は、17型コラーゲンによる細胞極性の維持機構の破綻を介して引き起こされることを示唆している(投稿準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、大まかに下記に示す4つの項目である。1、成体の毛包幹細胞での不均等分裂の実態を明らかにする。2、毛包幹細胞特異的に成体17型コラーゲンの欠損を誘導できるマウスを作出し、成体の17型コラーゲン欠損による不均等分裂の異常の有無、その異常により誘発されるものがいかなるものかを明らかにする。3、不均等分裂の制御に必須な極性蛋白質aPKCの毛包幹細胞特異的欠損マウスを作出し、不均等分裂が機能的に幹細胞を維持しているのかを明らかにする。4、加齢と共に分裂極性が低下し、それに伴い毛包幹細胞維持能力が低下しているのか解析することにより、分裂極性の低下が老化による幹細胞の機能維持低下の一因なのかを明らかにする。我々は、これらの目的に対して、一定以上の回答を得ている。例えば、1に対して、免疫染色法によって、毛包幹細胞は、活発に増殖する時期に、基底膜を軸として、均等分裂、不均等分裂を存在することを示し、2に対して、毛包幹細胞特異的なCol17a1 欠損を作出し、このマウスの毛包幹細胞は、細胞極性の異常をきたすことや、毛包幹細胞の運命解析により、このマウスの毛包幹細胞を枯渇させ、脱毛に導く事を解明し、3に対して、毛包幹細胞特異的aPKC欠損マウスを作出し、このマウスの毛包幹細胞は、17型コラーゲン欠損と同様に、毛包幹細胞の細胞極性の異常をきたし、顕著な脱毛を引き起こすことを明らかにし、4に対して、加齢に伴って、分裂極性が低下し、それに伴い毛包幹細胞の維持能力の低下することを解明している。以上のことから、おおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、まず得られた結果に対して、更に磨きをかけて、トップクラスの国際雑誌論文に投稿し、受理させる事を目標としていく。また、この論文受理に関わる下記の課題についても推進していく予定である。1、毛包幹細胞における成体a6インテグリン(ITGA6)の欠損を誘導できるマウスを用いた表現系および分裂極性の解析を行う。17型コラーゲンとITGA6は、毛包幹細胞のヘミデスモソームに発現し、協調して毛包幹細胞の維持に機能していると考えられる。我々は、Cre酵素依存的にITGA6を欠損できるマウス(ITGA6 flox)をGeorges Elisabeth教授(IGBMC,France)との共同研究により既に入手しており、薬剤依存的に毛包幹細胞特異的に、Cre酵素を発現するマウス(K15crePR)との交配と薬剤処理により、成体ITGA6の欠損を毛包幹細胞特異的に誘導できるマウスを作出する。まず、このマウスが、成体17型コラーゲンの欠損の表現型に酷似するのかどうか、不均等分裂の異常の有無、さらに、ITGA6を失った幹細胞の運命を、lineage tracingシステムにより解析する計画である。2、毛包幹細胞特異的に極性タンパク質(Par3)を欠損するマウスを用いた表現型の解析を行う。不均等分裂に重要な役割をもち、頂点側に発現し、足場タンパク質として機能しているPar3をCre酵素依存的に欠損できるマウス(Par3 flox)を大野茂男教授(横浜市立大学医学部)との共同研究により入手しており、上記と同様に、毛包幹細胞特異的欠損マウスを作出し、このマウスの毛幹細胞の不均等分裂の異常の有無、さらに、Par3を失った幹細胞の運命を、lineage tracingシステムにより解析する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)