2012 Fiscal Year Research-status Report
老化に伴う疾患予防及び治療へ向けた老化指標解明のための基盤研究
Project/Area Number |
24790397
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
Principal Investigator |
板倉 陽子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30582746)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 細胞老化 / 個体老化 / レクチンマイクロアレイ / 幹細胞 |
Research Abstract |
現代の高齢社会において、老化はそれに関わる疾患、介護、財政などの面において様々な問題を抱えうる。しかし、老化現象である2つの事象において、「細胞老化」と「個体老化」に関する明らかな相関は未だ認められていない。一方で、様々な研究成果から細胞老化の蓄積が加齢に影響しているのではないかと予測されている。また、老化と呼ばれる機能異常の蓄積が加齢に伴う疾患を導いているのではないかと推測することは容易である。そこで、細胞の種類や状態を鋭敏に反映し、生体内における機能に深く関わる糖鎖を用いて、細胞老化および個体老化における特徴を示し、これら2事象の関連性を明らかにすることを目指した。 今年度は、「老化」を規定するために、由来年齢の異なる細胞を各々長期間培養し、経時的に回収した。さらに、回収した細胞より抽出物を取得し、レクチンマイクロアレイによる糖鎖プロファイル解析を実施した。サンプルには老化モデル細胞として知られる、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(胎児、老齢)を用い、糖鎖プロファイル解析にはエバネッセント波励起型レクチンマイクロアレイを使用した。 その結果、由来部位による大きな差はなかったが、由来細胞の年齢により増殖停止に至る分裂回数は予想通り大きく異なっていた。各培養段階から取得した細胞抽出物では、継代回数に応じた糖鎖プロファイルを示した。また、特定のレクチンシグナルが増加または減少するなど、年齢ごとに異なるプロファイル変化を示した。 以上のことから、由来細胞の年齢により異なる増殖能を示すことと同様に、糖鎖プロファイルも変化していることが示された。また、その変化は継代回数に応じて特有の変化を示すことが示唆された。これらは、糖鎖プロファイル変化が細胞および個体の老化に反映されていることを示唆している。よって、糖鎖プロファイル変化が、細胞老化および個体老化の指標となり得ることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、老化を規定するための各細胞の糖鎖プロファイル情報の取得である。実際に、各由来年齢、継代回数における細胞抽出物より糖鎖プロファイルの取得に成功し、特徴的な変化を得た。一方、遺伝子発現やテロメア長の測定など既存の手法を用いて解析した結果と糖鎖プロファイル情報を比較するための実験では困難を要したため、さらなる条件検討が必要であった。よって、目標である細胞老化・個体老化を規定するための糖鎖情報における比較解析がおおむね終了していることから、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、まずは引き続き老化の規定化を目指した比較解析を行うため、糖鎖プロファイル情報に加え、各段階の細胞に関して既存の手法を用いた糖鎖以外の情報(遺伝子発現やテロメア長など)を取得する。また、分化度を極度に異にする未分化細胞として、本年度までに解析を実施した老化モデル細胞より樹立したiPS細胞の糖鎖プロファイル情報を取得し解析する。さらに、細胞老化および個体老化の相関を明らかとするために、由来する細胞の年齢、および継代回数の異なる細胞のほか、高齢心疾患患者由来の臨床検体から取得した細胞の糖鎖プロファイルデータに関して詳細な比較解析を実施する。最終的には、得られた糖鎖プロファイル情報及びそのほかの解析結果から老化に有意な糖鎖構造変化を抽出し、細胞老化および個体老化を規定したうえで相関関係を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度末から当施設(東京都健康長寿医療センター)の施設移転が実施され、一時的な実験の停止を余儀なくされたため、目的の研究費の使用予定を変更した。来年度は、当初の予定である研究費に加え本年度の残予算を研究消耗品に使用する。
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Research Products
(2 results)