2013 Fiscal Year Research-status Report
老化に伴う疾患予防及び治療へ向けた老化指標解明のための基盤研究
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24790397
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
板倉 陽子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30582746)
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Keywords | 糖鎖プロファイル / レクチンマイクロアレイ / 老化 |
Research Abstract |
現代の高齢社会において、老化はそれに関わる疾患、介護、財政などの様々な問題を抱えうる。しかし、老化現象である2つの事象において、「細胞老化」と「個体老化」に関する明らかな相関は未だ認められていない。一方で、様々な研究成果から細胞老化の蓄積が加齢に影響しているのではないかと予測されている。また、老化と呼ばれる機能異常の蓄積が加齢に伴う疾患を導いているのではないかと推測することは容易である。そこで、細胞の種類や状態を鋭敏に反映し、生体内機能に深く関わる糖鎖を用いて、細胞老化および個体老化における特徴を示し、これら2事象の関連性を明らかにすることを目指した。 2年目となる今年度は細胞老化と個体老化の関連性を示すため、昨年度に引き続きレクチンマイクロアレイ法により糖鎖プロファイルデータを取得すると同時に、統計的に解析した。その結果、胎児及び高齢者由来の細胞それぞれに特徴を示す糖鎖の変化が得られた。継代を重ねた細胞老化を示唆する糖鎖変化と由来年齢の異なる細胞が示唆する個体老化における糖鎖変化の間には統計的に差があることが示された。 また、in vivoおよびin vitroの比較のため、一例として高齢患者由来の臨床検体から取得した細胞の糖鎖プロファイルを同様のレクチンマイクロアレイ法により解析し、特徴的なプロファイルを得た。これまでの解析から、個体差(年齢差など)による有意な差が得られなかったことから、組織による特徴である可能性が大きい。 以上のことから、細胞老化と個体老化を示唆する糖鎖プロファイルの間には統計的にも有意な特徴があり、2種の老化に関わる糖鎖変化の存在が示された。これは、生体内の老化に伴う変化を調べるうえで重要な指標となり得る。一方、様々な臨床検体と細胞における糖鎖プロファイルを比較することで、さらなる老化指標の絞り込みが期待されるため、引き続き解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、細胞老化と個体老化の相関関係を検討し、環境条件の異なる個体老化の糖鎖プロファイルデータを取得することにある。 細胞老化と個体老化を示唆するそれぞれの糖鎖プロファイルデータの統計的な比較解析により、それぞれに特徴的な糖鎖変化を検出した。また、一見異なる糖鎖プロファイルを示した2つの老化に関わる糖鎖変化に共通の特徴が認められたことから、本研究の最大の目的については順調に解析が進んでいるといえる。一方、臨床検体から取得した細胞の糖鎖プロファイルでは解析対象の種別に限りが生じるため、今後追加する検体の解析結果と既に取得した糖鎖プロファイルデータとの比較を慎重に行う必要がある。しかし、特定の部位においては、今後も解析対象を増やすことが可能であり、年齢および疾患との関連性についても検討可能である。 以上により、本年度の達成度はほぼ順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成26年度は、環境条件の異なる個体老化の糖鎖プロファイル情報をさらに取得するため、引き続き高齢患者由来の臨床検体から取得した細胞の糖鎖プロファイルを解析する。同時に、限られた臨床試料の中で、正確な比較解析を目指す。また、分化度を極度に異にする未分化細胞として、昨年度までに解析を実施した老化モデル細胞より樹立したiPS細胞の糖鎖プロファイル情報を取得し解析する。 最終的に細胞老化と個体老化の相関関係を明らかとすることを目指し、広い視野でこれまで取得した糖鎖プロファイルに関する情報を検討する。そして、将来的に老化に伴う疾患の予防や治療へとつながる老化指標の作製を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は当センター(病院、研究所において)の新施設への移行時期と重なり、引っ越しのための準備から引っ越し後の実験環境が整うまでの長期間において、実験停止期間が生じた。また、発注業務等の対応も一時停止する期間が生じた。そのため、実験期間の短縮につながり、予定していた消費量を満たさなかったため、次年度への使用額が発生した。 これまでに出た研究成果をまとめ、海外を含む学会等へ積極的に参加し成果発表を実施する予定である。そのため、当初の計画よりも旅費およびその他の費用がかさむ予定がある。一方、実験の進展に伴い、最終年度の解析に用いられる抗体などが多数必要となる。また、得られた結果の根拠を証明する比較実験のための試料数も今後は増加していくことから、関連する試薬等も十分量必要となるため、繰り越された費用を合わせた額を使用する計画がある。
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Research Products
(4 results)