2014 Fiscal Year Annual Research Report
ネッタイシマカにおける亜種特異的産卵場所選好性の崩壊:同所的分布による行動変化
Project/Area Number |
24790403
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
二見 恭子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30432983)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ネッタイシマカ / 亜種構成 / 環境要因 / 産卵場所選好性 / 国際研究者交流 / ケニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、デング熱感受性の異なるとされるネッタイシマカ2亜種(都市型Aaa、森林型Aaf)について、それぞれの生息環境および行動特性の解明を目的としてきた。 亜種構成と発生源の水質および周辺環境の関係を明らかにするため、西ケニアの都市部、林縁部、さらにこれらの中間的な環境でシマカ幼虫を採集し、羽化させて亜種を同定した。発生源は多岐にわたり、プラスチック容器、陶製容器、タイヤ、樹洞、植物の葉柄(バナナやクワズイモなど)から幼虫が採集された。シマカ幼虫が発見された180個の発生源のうち(人工容器68.3%、自然容器31.7%)、141個の発生源(人工容器85.8%、自然容器14.2%)からネッタイシマカが羽化した。発生したネッタイシマカ全体の80%以上がAafであり、人工容器では81.1%、自然容器では88.4%がAafであったことから、西ケニアでは人工容器、自然容器に関わらず、Aafの割合が高いことが明らかになった。一方で、都市部、中間環境、森林で亜種の割合を比較したところ、都市環境で有意にAaaが多く、さらに人家までの距離が近いほどAaaが多くなった。これらの事から、従来言われていたAaaの生態とある程度一致している事が示された。その一方で、Aafは3地域のどこからも同様の割合で発生しており、Aafがより柔軟に環境に適応している事が示唆された。これは水質についても同様で、Aafは幅広い水質に対応していたが、Aaaはやや限定された水質で発生し、特に濁度、伝導率、色度は狭い範囲に収まった。 興味深いことに、野外で採集したメス1個体が生む子には0-50%の割合でAaaとAafの形質が混在し、メスでAaaの割合が高かった。これは、形態では亜種を分けられないことを示唆している。 また、産卵行動には明確な地域差は認められなかったことから、産卵場所選好性に亜種間の差はないと考えられる。
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