2013 Fiscal Year Research-status Report
マラリアの病態重症化を制御する弱毒化原虫特異的宿主免疫賦活化機構の解明
Project/Area Number |
24790405
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
新倉 保 杏林大学, 医学部, 助教 (30407019)
|
Keywords | マラリア原虫 / Pb ANKA / Pb XAT / MHC class II |
Research Abstract |
強毒株マウスマラリア原虫であるPlasmodium berghei (Pb) ANKAの感染によって引き起こされる脳症は、弱毒株Pb XATを複合感染させることによって抑制される。しかし、その抑制機構の詳細は明らかにされていない。本研究では、Pb XAT複合感染による脳症抑制機構を明らかにするために、赤色蛍光タンパク質 (mCherry) を導入したPb ANKAと緑色蛍光タンパク質 (GFP) を導入したPb XATを用いて複合感染時におけるPb ANKAとPb XATの感染動態を調べた。その結果、複合感染させたマウスにおいて、Pb ANKAが優位に増加することが明らかとなった。一方、Pb XATは感染経過に伴い減少し、感染後15日目には検出されなくなった。これらの結果から、Pb XATは宿主免疫によって選択的に排除されていると推察された。宿主免疫によってPb XATが選択的に排除されていることを明らかにするために、Pb XATの排除に重要な役割を果たすMHC class II (MHC II) を欠損しているマウスにPb ANKAとPb XATを複合感染させ、それぞれの感染動態を調べた。その結果、複合感染させたMHC II欠損マウスにおいて、Pb XATが優位に増加した。一方、Pb ANKAは感染経過に伴い徐々に増加したが、Pb XATと比較して有意に低レベルであった。これらの結果から、Pb ANKAとPb XATを複合感染させた場合、Pb XATは宿主の免疫によって選択的に排除されることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果によって、Pb ANKAの単独感染によって引き起こされる脳症の発症には、MHC IIを介して活性化するCD4+T細胞が関与することが示された。一方で、Pb XATの単独感染における防御免疫の誘導にはMHC IIを介するCD4+T細胞の活性化が重要であることを見出している。Pb ANKA感染、Pb XAT感染ともにCD4+T細胞の活性化にはMHC IIが重要な役割を果たしているが、その活性化機構は両感染間で異なる。本研究によって、Pb ANKAとPb XATを複合感染させたマウスは脳症を発症しないこと、また、複合感染させたマウスのCD4+T細胞はPb XATの排除に関わることが明確に示された。Pb ANKAとPb XATを複合感染させたマウスにおいて、防御免疫に関わるCD4+T細胞が誘導されているという知見が得られた点で、本年度の目的は達成された。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. Pb ANKAとPb XATを複合感染させたマウスにおいて、Pb XATを貪食した抗原提示細胞がMHC IIを介してPb XATの抗原を提示することでCD4+T細胞を活性化していると推察される。MHC II 分子を介したCD4+T細胞の活性化には抗原提示細胞の共刺激分子は必要不可欠であることが知られている。そこで、Pb ANKA感染とPb XAT感染における抗原提示細胞の共刺激分子の発現について解析し、最終的に、複合感染させたマウスにおける抗原提示細胞の共刺激分子の発現について明らかにする。 2. Pb XATはX線照射によって弱毒化された原虫である。弱毒化の原因は遺伝子の突然変異であると推測されるが、原因となる変異は明らかにされていない。そこで、次世代シーケンサーを用いてPb XATの全塩基配列を決定し、親株の塩基配列と比較することで弱毒化の原因遺伝子を特定する。弱毒化の原因遺伝子を特定することで、防御免疫に関わるCD4+T細胞誘導機構の解明の糸口を掴む。 3. これまでの研究成果によって、核酸中間体の取り込みに関わる核酸輸送体と核酸代謝に関わるプリンヌクレオシドホスホリラーゼを2重欠損させることで、Pb ANKAが弱毒化されることを見出している。この遺伝子改変により弱毒化したPb ANKAを野生型Pb ANKAと複合感染させた際、Pb XATと同様の脳症抑制効果を示すかどうかを検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの成果を国際的にアピールするために、2014年8月に開催される国際寄生虫学会(メキシコシティ)と2014年10月に開催される日独原虫病シンポジウム(ドレスデン)での発表を計画している。上記国際学会の出張に係る費用を繰越した。 抗原提示細胞の共刺激分子の発現はRT-PCRおよびフローサイトメトリ―により解析する。RT-PCRに係るDNAポリメラーゼとプライマー等の消耗品、フローサイトメトリ―に係る抗体等の消耗品の購入を計画している。Pb XATの弱毒化と遺伝子変異の関係を明らかにするための遺伝子配列解析に係るDNAポリメラーゼやプライマー等の消耗品の購入を計画している。遺伝子改変により弱毒化したPb ANKAの病原性の解析に係る試薬等の消耗品の購入を計画している。さらに、これまでの成果を国際的にアピールするために、国際寄生虫学会(メキシコシティ)と日独原虫病シンポジウム(ドレスデン)での発表を計画している。
|
Research Products
(19 results)