2012 Fiscal Year Research-status Report
腸炎ビブリオの3型分泌装置1による細胞死誘導機構の解析
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24790416
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 重輝 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (30506499)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腸炎ビブリオ / 3型分泌装置 / エフェクター / 細胞毒性 |
Research Abstract |
我が国における主要な食中毒原因菌である腸炎ビブリオは、培養細胞に対して強い細胞毒性を示す。この細胞毒性は本菌の3型分泌装置1(T3SS1)依存的であるが、その作用機序は不明である。本研究では、腸炎ビブリオのT3SS1による細胞毒性に関与する宿主側因子を同定することで、腸炎ビブリオのT3SS1による細胞死誘導機構の解明を目的とした。T3SS1から分泌されるエフェクターとして、これまでにVepA、VopSなどが同定されている。このうち、VepAについては単独で細胞毒性エフェクターとして機能することを明らかとし、VepAの毒性に関与する因子としてV-ATPaseのcサブユニットを同定している。V-ATPase阻害剤などを用いた解析からVepAの細胞毒性にV-ATPaseのプロトン輸送能は必要ないものの、VepAによってリソソームの内容物の漏出が認められ、VepAがV-ATPaseのcサブユニットへの相互作用を介してリソソームの不安定化を誘導していることを明らかとした。また、VepAの宿主細胞に対する作用の一つとしてオートファジーの誘導が報告されているが、オートファジーを阻害してもVepAへの細胞死への影響は見られず、VepAによる細胞死はオートファジー非依存的であることも明らかとなった。以上より、本研究の結果によってVepAが宿主細胞のリソソームを破壊することで細胞死を引き起こす可能性が示された。また、VopSについても毒性に関係する宿主細胞側因子を探索するため、精製したエピトープタグ融合VopSと細胞抽出液を混合し、プルダウンを行うことで、VopSと相互作用する宿主細胞側の候補分子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
V-ATPaseのVepAによる細胞毒性における役割の解析については、V-ATPaseのプロトン輸送機能はVepAによる細胞毒性に必要でないという、当初の予想に反した結果を得た。しかしながら、VepAはV-ATPaseへの相互作用を介してリソソームを不安定化していることを明らかとし、VepAが宿主細胞のリソソームを破壊することで細胞死を引き起こす可能性を示すことで、V-ATPaseのVepAによる細胞毒性における役割を明らかとすることができた。一方、酵母遺伝子破壊株によるスクリーニングはVepA、VopSについて共に、毒性に関与する新規な遺伝子の同定には至っていない。このうち、VopSについては酵母によるスクリーニングを補完するために計画していたプルダウンによる宿主細胞側相互因子の網羅的な解析により、候補分子を同定することができた。以上より、酵母遺伝子破壊株によるスクリーニングの進捗は芳しくないものの、その他の計画(V-ATPaseのVepAによる細胞毒性における役割の解析、プルダウンによる宿主細胞側相互因子の網羅的な解析)が比較的順調に進展しており、総合的におおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度にプルダウンにより同定した、VopSと相互作用する宿主細胞側因子について、ヒト培養細胞に当該遺伝子を標的とするsiRNAを導入し、その発現をノックダウンする。発現をノックダウンした細胞について、VopSによる細胞毒性を評価することで、同定した因子の細胞毒性への関与を検証する。また、同定した宿主側因子の細胞内のおける機能・局在を解析し、その細胞毒性への役割を検証する。 また、酵母遺伝子破壊株によるスクリーニングを続行し、T3SS1エフェクターによる毒性に関与する宿主細胞側因子の同定を試みる。特にVopSについて、発現非誘導下においても生育コロニー数が少なく、スクリーニングにおける酵母遺伝子破壊株ライブラリーのカバー率が低いことが懸念される。スクリーニング系のスケールアップを行い、酵母遺伝子破壊株ライブラリーのカバー率を向上させることで、この点に対処する。酵母遺伝子破壊株によるスクリーニングから新規な遺伝子が得られた場合、ヒト細胞での解析を行う。ヒトでの相同遺伝子について、siRNAなどにより細胞毒性への関与を検証する。また、同定した宿主側因子について、エフェクターとの相互作用や、その細胞内での機能・局在を検討し、T3SS1による細胞毒性への役割を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(5 results)