2012 Fiscal Year Research-status Report
γーグルタミルトランスペプチダーゼのサルモネラ病原性への影響の解析
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24790419
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中野 政之 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (60398005)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | サルモネラ |
Research Abstract |
平成24年度では、はじめにγーグルタミルトランスペプチダーゼ (ggt) 遺伝子欠損サルモネラ菌を相同組換え法により作製した。作製した変異株を用いてサルモネラの病原性に対するGGTの役割を明らかにすることを目的として、各培養細胞株を用いた解析(腸管上皮由来培養細胞に対する侵入性試験とマクロファージ由来培養細胞を使用したマクロファージ内での生存試験)によりその評価を行ったところ、得られたデータより本解析においては野生型サルモネラとggt遺伝子欠損サルモネラとの間において統計的に有為な差を認めることができず、したがってこの解析においてGGTのサルモネラ病原性に対する効果を認めることができなかった。また、上記以外のサルモネラ病原性についてもGGTの役割を検証することを目的として、ggt遺伝子欠損株が示す性状にについて解析(耐酸性試験、バイオフィルムの形成能、過酸化水素耐性試験など)を行ったところ、いずれの解析においても残念ながらGGTのサルモネラの病原性に対する効果を認めることができなかった。これまでのGGTに関する報告により、GGTタンパク質の産生は通常の培養条件よりも低温条件(20度程度)下においてその発現量が増大することが報告されているが、サルモネラにおいても大腸菌の場合と同様に37度での培養条件よりも20度の方がGGT活性の増大が認められた。 また、同時に組換えGGTタンパク質の作製も行ったが、得られた組換えタンパク質の大部分が残念ながらinclusion bodyを形成することがわかっている。現在は、この問題を解消するために使用するベクターの選定を行うと同時に、最適な実験条件の検討も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、サルモネラの病原性におけるGGTの役割について明らかにすることを目的として、特に平成24年度ではin vitroでの解析を中心に検証を行った。そこで本研究の申請内容の計画に従い研究を推進するために、はじめに一般的にサルモネラの病原性で最も重要であると認識されている2点(培養細胞に対する侵入性や貪食細胞内での生存率)について解析を行ったところ、この点に関するサルモネラの病原性とGGTとの関連性を示す結果は得られなかった。そのため、サルモネラの病原性とGGTとの関連性について多角的な観点から検証を行ったが、サルモネラの病原性を検証するポイントやその手法は多岐に及ぶために当初の計画段階で予定していた期間よりも多くの時間を費やすこと必要となった。本研究の計画では、平成24年度にてサルモネラのおける病原性を含めたGGTの役割について明らかにすることを目標としていたが、GGTとサルモネラ病原性との関連性については現時点では不明である。残念ながら現状では研究計画の目標に到達しておらず、このため当初の計画や研究の推進に若干の遅れが生じている状態であると思われる。しかしながら、本研究内容はこれまでには全く行われていないものであり、サルモネラの病原性とGGTとの関連性について評価するには多角的に十分な検証を行うことにより結論を導きだすことが必要であり、このような基礎的な検証に多くの時間を費やすことは致し方ないものと考えている。また、平成24年度では本研究の基盤となるデータを蓄積することも目的としており、その点においては計画通りに行われていると確信しており、十分な検証や基盤となるデータをより多く蓄積することは今後の研究の進展に大いに役立つものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでも述べたように、これまでの精力的な解析にも関わらずサルモネラの病原性におけるGGTの役割については不明な状態にあるので、サルモネラの病原性とGGTの関連性に対する結論を出すことを最優先として研究を行う必要があると理解している。これまでの解析により、サルモネラの病原性として最も重要であると広く認識されている宿主細胞に対する侵入性や貪食細胞内での生存にはGGTが関与しないことが推測されているので、それ以外の観点(実験動物を用いた解析など)からの検証を行うことで評価する。加えて、平成25年度ではサルモネラに存在するGGTの詳細な性状解析やggt遺伝子欠損サルモネラ菌を用いた解析を行うことにより、サルモネラにおけるGGTの病原性以外の部分での役割の有無についても検証することも計画している。これまではサルモネラが保有するGGTは他のGGTに認められている活性部位や保存領域が存在していることはアミノ酸配列より明らかとなっているが、サルモネラにおけるGGTの役割やその存在意義などについては議論されておらず、またGGTのタンパク質としての性状などについても同様に全く解析が行われていないのが現状である。そこで本年度は、すでに作製済みのggt遺伝子欠損サルモネラ菌を用いることにより野生株との性状を様々な解析から比較することで、これまで明らかにされていなかったサルモネラGGTの役割を検証する。また、同時に組換えタンパク質を作製し、作製した組換えGGTの性状(至適な活性を示す諸条件など)を解析することを行う。これらの解析を行うことで、GGTのサルモネラ病原性における役割やその存在意義、さらにGGTタンパク質の性状を含めた多くの新たなデータを得ることが出来るものと推測しており、精力的に研究活動を推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として327,016円が発生したが、これは計画していた研究内容に変更が生じたため、これに伴って研究費の使用計画にも若干の変更が必要となったことが原因である。 平成25年度では、様々な消耗品(プラスチック製品、試薬類、ガラス器具など)は研究を推進するためには必須であるので、これらは必要に応じて購入する。また設備備品の購入については、本研究の申請書にて申請済みの機器である「上皮細胞抵抗測定装置」はサルモネラの病原性を解析するための機器としては非常に有用であるので、購入することを予定している。 さらに、研究成果の発表や他の研究者との意見交換を行うために関連学会に参加することは今後の研究の方向性を見極めるために大切なことであると考えているので、そのために必要な旅費として使用する。加えて、研究活動に必要な機器などの使用料として予算を適切に執行する。
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