2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞侵入性細菌における菌体のユビキチン化関連因子の解析
Project/Area Number |
24790420
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
吉川 悠子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (00580523)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細菌 / リステリア / 感染症 / オートファジー / ユビキチン |
Research Abstract |
細胞内侵入性細菌であるリステリアは、細胞内運動性に関与するActAタンパク質により宿主タンパク質を菌体周囲に積極的に集積することで、オートファジーを回避する。欠損または機能不全により、ActAタンパク質が宿主タンパク質を集積できない場合、菌体が直接ユビキチン化され、細胞内分解系の一つであるオートファジーにより選択的に捕捉・分解される。また、サルモネラなどリステリア以外の細胞内侵入性細菌でも、菌体のユビキチン化がオートファジーによる菌体の認識に重要な役割を果たすことが報告されている。しかしながら、直接的な菌体へのユビキチン化の機序は未だ明らかでない。そこで本研究では、リステリア菌体側のユビキチン修飾を受ける分子や宿主側のユビキチン修飾分子の同定および解析を試み、ユビキチン修飾系の宿主細胞の自然免疫システムにおける役割の解明を目的とした。 まず、in vitroユビキチネーションアッセイと液体クロマトグラフィー質量分析法を組み合わせた方法にて得られた、リステリア菌体側の2種類の候補分子について解析を行った。それぞれリコンビナントタンパク質を作製し、in vitroユビキチネーションアッセイを試みたところ、このうち1種類の菌体側因子が直接ユビキチン化を受けることが分かった。しかしながら、この候補因子の菌体表面での発現は、ウェスタンブロッティングおよび免疫蛍光抗体法では観察されなかった。 また、平行して、得られた宿主側の候補因子について解析を行った。RNAi法にてそれぞれ宿主側候補因子の発現をノックダウンさせたMDCK細胞に、オートファジーに認識されるリステリアactA変異株を感染させた。その結果、ノックダウンにより、菌の宿主細胞への侵入効率およびユビキチン化される菌体の割合を低下させる候補因子が存在することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitroユビキチネーションアッセイの後に、6 Mグアニジン添加による変性条件下でユビキチン化タンパクを精製し、得られた2種類のリステリアのユビキチン化に関連する菌側因子をさらに解析した。その結果、いずれも菌体表面にて、直接的にユビキチン化の標的となる証拠は観察されなかった。このことから、宿主細胞内でリステリアの菌体表面の構造は、直接ユビキチン化を受けていない可能性が示唆された。したがって、in vitroユビキチネーションアッセイ後、非変性条件下でユビキチン化タンパク質の精製を行い、菌体表面に結合している宿主ユビキチン化タンパク質を含め、さらに網羅的な解析が望まれる。細胞内運動性に関与する宿主タンパク質を集積できないリステリアがユビキチン化を受け、オートファジーに認識されることを合わせると、菌体の間接的なユビキチン化を仲介する宿主タンパク質は、細胞侵入性細菌の細胞内センサーとして機能している可能性が考えられる。 宿主側の候補因子の探索では、ノックダウンにより、リステリアの宿主細胞への侵入効率およびユビキチン化される菌体の割合が低下した候補因子が得られた。in vitroユビキチネーションアッセイにて、この候補因子が直接的に菌体のユビキチン化に関与している証拠が得られるならば、宿主細胞の病原体に対する防御機能のさらなる解明につながるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
リステリア菌体のユビキチン化に関与する因子の探索において、ユビキチン化タンパク質の精製を非変性条件下でのプルダウンアッセイでも行い、液体クロマトグラフィー質量分析法で解析する。この場合、菌体表面の構造に結合した宿主タンパク質を介するユビキチンも解析対象となることから、ユビキチンに関連する複数のシグナル伝達系が複雑に絡みあっている可能性が考えられ、その分子機構の解明に努める。 また、これまでに得られている宿主側因子のリコンビナントタンパク質を作製し、これらを用いたin vitro ユビキチネーションを行い、リステリアに対するユビキチン化に直接関与するかを観察する。オートファジーの標的となるactA変異株をMDCK細胞に感染させ、各感染ステージにおける宿主側候補因子の発現変動をリアルタイムRT-PCR法にて解析を行う。さらに、感染時における宿主側候補因子の影響を観察するために、リポフェクション法またはエレクトロポレーション法にて宿主側候補因子の発現ベクターを宿主細胞に導入する。その後、宿主側候補因子を恒常的に過剰発現している細胞をクローニングし、actA欠損株を感染させ、細胞への侵入効率とともにユビキチン化された菌またはオートファゴソーム内の菌の割合を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画の変更に伴い、「備品費」でリアルタイムPCR装置を購入する予定である。「物品費」は、感染実験に必要な細胞培養用の培地、血清、ピペット、培養フラスコなど、また免疫学的および生化学的解析に必須である宿主側因子の特異抗体、発現ベクター、siRNAなどに用いる試薬を購入する。また、一般試薬・一般器具類、および遺伝子組換え用の特殊試薬の購入にも充てる。「旅費」は情報収集もしくは学会発表のために利用し、「謝金」は研究補助・資料整理のための人件費として使用する予定である。「その他」は、印刷製本または投稿料などの費用である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Human granulocytic anaplasmosis in Japan.2013
Author(s)
Ohashi N., Gaowa, Wuritu, Kawamori F., Wu D., Yoshikawa Y., Chiya S., Fukunaga K., Funato T., Shiojiri M., Nakajima H., Hamauzu Y., Takano A., Kawabata H., Ando S., and Kishimoto T.
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Journal Title
Emerging Infectious Diseases
Volume: 19
Pages: 289-292
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Rickettsiae in ticks, 2007-2011 Japan.2013
Author(s)
Gaowa, Ohashi N., Aochi M., Wuritu, Wu D., Yoshikawa Y., Kawamori F., Honda T., Fujita H., Takada N., Oikawa Y., Kawabata H., Ando S., and Kishimoto T.
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Journal Title
Emerging Infectious Diseases
Volume: 19
Pages: 338-340
DOI
Peer Reviewed
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