2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24790421
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
岡 真優子 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (40347498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マクロファージ / 結核 / HIF-1alpha / 糖代謝 / 低酸素 |
Research Abstract |
本研究では、マクロファージに発現するhypoxia-inducible factor-1alpha (HIF-1alpha) タンパク質が調節する解糖系代謝と結核菌の増殖との関係を詳細に解析する。宿主内で持続潜伏感染する結核菌は、宿主からエネルギー産生に重要なグルコースを獲得して生命を維持する巧妙な戦略を持つことが考えられる。しかし、菌と宿主との間でどのようにグルコース調節がなされているかについては不明である。申請者は、マクロファージの糖代謝に重要な役割をもつHIF-1alphaに着目し、細胞内結核菌の増殖にグルコースが及ぼす影響を明らかにする。今年度は、①結核菌感染によるマクロファージでのHIF-1alpha発現機構の解明、②マクロファージの糖代謝による細胞内結核菌の増殖への影響、について検討した。 まず、結核菌感染による野生型マウス骨髄由来(WT)マクロファージでのHIF-1alphaの発現をWestern blot法により検討した。Mycobacterium bovis BCG感染後12時間でHIF-1alphaは発現し、また加熱処理を行ったBCGを添加した場合も同様に発現した。よって、菌体成分がHIF-1alpha発現の増大に関与していることが示唆された。さらに、BCG感染は、HIF-1alpha mRNAを誘導しており転写を調節する菌体成分の探索を行っている。 次に、結核菌の増殖に影響する宿主の糖代謝酵素を同定するため、WTマクロファージに結核菌を感染させ、乳酸脱水素酵素(LDH)およびPDHリン酸化酵素の阻害剤存在下に結核菌数をルシフェラーゼ法で測定した。LDH阻害剤存在下では、感染後4および8日目のマクロファージ内の菌数が多かった。今後、結核菌感染マクロファージ内の糖代謝物を測定し、宿主の細胞内での菌の増殖との関係を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、肺結核肉芽腫の低酸素環境とマクロファージに発現するHIF-1alphaタンパク質が、宿主の糖代謝と菌の増殖へ及ぼす影響を明らかにするため、平成24年度は次の2項目について解析を行う計画を立てた。 実験1. 結核菌感染によるマクロファージでのHIF-1alpha発現機構の解明をする。結核菌の糖脂質および分泌タンパク質から発現調節因子を同定し、そのシグナル伝達機構を明らかにする。 実験2. マクロファージの糖代謝による細胞内結核菌の増殖への影響を解析する。HIF-1alphaによって調節されている解糖経路を中心に、糖代謝酵素阻害剤およびsiRNAを用いて菌の増殖に影響を及ぼす糖代謝酵素を同定する。 上記の計画に基づき、HIF-1alphaタンパク質の発現およびmRNAが結核菌感染に伴って増加することを定量解析した。そして、HIF-1alphaタンパク質の安定化ではなく転写活性化に伴った機構を見いだした。現在は、HIF-1alphaを誘導する主要因を明らかにするため、菌培養液から精製した分泌タンパク質や組換えタンパク質を用いて検討している。また、HIF-1alphaによって調節される酵素の阻害剤または糖代謝物を用いて、細胞内結核菌増殖に重要な糖代謝物を同定した。さらに、網羅的に細胞内の糖代謝物をTOF-MSで解析している。今後は、siRNAを合成して糖代謝酵素の役割を明らかにする。 以上の通り、新規的で大変興味深い結果が得られており、大きな問題もなく計画通り遂行できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、肺結核肉芽腫の低酸素環境とマクロファージに発現するHIF-1alphaタンパク質が、宿主の糖代謝と菌の増殖へ及ぼす影響を明らかにするため、次の3つの実験内容を中心に研究を行う。 実験1.結核菌感染によるマクロファージでのHIF-1alpha発現機構の解明。結核菌感染12時間後のマクロファージにHIF-1alphaの発現が増大させる結核菌由来の因子を同定する。これまでに菌体外に分泌されるタンパク質を組換え体として精製しており、これらによるHIF-1alphaの発現への影響を検討する。シグナル伝達機構については、TLR2,4,または9の各欠損マウスマクロファージを用いた解析を行う。また、酸素存在下でのHIF-1alphaの発現調節に関与することが知られているシグナル伝達機構(MAPキナーゼ、mTORなど)についても検討する。 実験2.結核菌感染マクロファージでの糖およびその代謝物の定量。TOF-MS/MS法による網羅的な糖メタボローム解析を行う。HIF-1alpha欠損および野生型マウス骨髄由来マクロファージを用いて、感染による糖代謝物量を比較することにより、HIF-1alphaタンパク質の役割が明らかになると考える。本研究ではLysM-Creマウス(Cre-loxPシステム)を交配させて生まれてきた骨髄系細胞のHIF-1alpha欠損コンディショナルノックアウトマウスを用いる。 実験3. 低酸素による細胞内結核菌への影響。結核菌は、低酸素下で休眠期タンパク質の発現を増大するが、低酸素状態の細胞内での菌の形態(増殖または休眠)についての詳細はわかっていない。そこで、これまでに明らかにされている休眠菌に発現する遺伝子について、感染後の経時的発現変化をreal-time PCR法を用いて調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年10月に大阪市立大学大学院医学研究科から京都府立大学大学院生命環境科学研究科へ異動した。現在の研究室には、セーフティーキャビネットが設置されておらず、BSL2の実験を行えない。本研究の遂行のために、セーフティキャビネットの購入を検討している。また、細胞培養、タンパク質および遺伝子解析には、試薬ならびに消耗品が必要となることから、研究費の多くをこれらに当てる。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Antigen 85A and mycobacterial DNA-binding protein 1 are targets of immunoglobulin G in individuals with past tuberculosis2013
Author(s)
Osada-Oka M, Tateishi Y, Hirayama Y, Ozeki Y, Niki M, Kitada S, Maekura R, Tsujimura K, Koide Y, Ohara N, Yamamoto T, Kobayashi K, Matsumoto S
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Journal Title
Microbiol Immunol
Volume: 57
Pages: 30-37
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Tolvaptan improves left ventricular dysfunction after myocardial infarction in rats2012
Author(s)
Yamazaki T, Izumi Y, Nakamura Y, Yamashita N, Fujiki H, Osada-Oka M, Shiota M, Hanatani A, Shimada K, Iwao H, Yoshiyama M.
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Journal Title
Circ Heart Fail
Volume: 5
Pages: 794-802
DOI
Peer Reviewed
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