2013 Fiscal Year Annual Research Report
腸管病原性大腸菌III型分泌装置による宿主獲得免疫の制御機構と感染における意義
Project/Area Number |
24790423
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
永井 武 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60418655)
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Keywords | 腸管病原性大腸菌 / III型分泌機構 / 感染免疫 / 樹状細胞 / T細胞 |
Research Abstract |
近年、粘膜病原細菌の感染戦略が分子レベルから個体レベルに至るまで、詳細に明らかになってきた。その中で、とくに粘膜病原細菌が保有するIII型分泌機構によって宿主の機能を操作し、感染を成立させていることが明らかになっている。しかしながら、III型分泌機構が宿主の免疫機構をどのように制御しているかに関しては、未だに不明な点が多い。そこで、III型分泌機構を保有する病原性大腸菌(enteropathogenic E. coli; EPEC)をモデルとして、どのように宿主の免疫系、特に獲得免疫系を制御しているかについて研究を行った。 まず、実際EPECのIII型分泌機構が宿主の獲得免疫系に影響を与えている可能性について検討を行った。EPECのマウス感染モデル菌であるCitrobacter rodentium (C. rodentium)の野生型とIII型分泌装置欠損株をマウスに投与した。3週間後、獲得免疫系の重要な指標であるT細胞の分化バランスを測定した結果、今まで報告されている通りどちらの株でも強いTh1反応が見られたが、野生株のみTh2細胞の分化が観察された。次にEPEC、骨髄由来樹状細胞および単離したナイーブT細胞を用いることで、in vivoでの現象をin vitroで再現する系を構築した。これにより、EPECが分泌するエフェクター分子のうちあるエフェクター(X)が樹状細胞のIL-12およびIL-27の産生を抑制することで、特異的にTh2分化を誘導していることが明らかとなった。さらに、C. rodentiumでXの欠損株を作成してマウスに投与したところ、in vivoでもエフェクターXがTh2分化に関与していることが明らかとなった。その結果、腸管病原性大腸菌はIII型分泌機構を用いて、Th2分化を誘導することで、感染を有利にしていることを明らかにした。
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