2012 Fiscal Year Research-status Report
コロナウイルスnsp1蛋白質と宿主因子を介したウイルス複製機構の解明とその応用
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24790439
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神谷 亘 大阪大学, 微生物病研究所, 特任准教授 (60551421)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ウイルス / 感染症 / RNA / ヘリケース |
Research Abstract |
ウイルスは自身の複製に多くの宿主由来の因子を巧みに利用する。そのような宿主因子の中でもRNAヘリケースは、その多機能性から様々な方法でウイルスの複製機構を制御していると考えられる。我々はSARSコロナウイルスのnsp1タンパク質と結合する宿主因子としてRNAヘリケース群を同定している。本年度は、nsp1タンパク質と特異的に結合するRNAヘリケースの結合の確認を、培養細胞を用いて共免疫沈降法により解析を行った。その結果、DDX17がnsp1タンパク質と結合することが確認できた。しかしながら、このDDX17とnsp1タンパク質の結合は弱いものであった。さらに、nsp1タンパク質と結合するRNAヘリケース群の解析を進めた結果、upf1とnsp1タンパク質が特異的に結合することが分かった。Upf1は、細胞内で異常なRNAを認識するnonsense mediated RNA decay (NMD)に関わる重要な因子の一つである。SARSコロナウイルスのnsp1タンパク質は、40Sリボゾームと結合して翻訳を阻害すると同時にRNAを切断することが分かっている。しかしながら、nsp1タンパク質自体にRNAを分解するような活性は認められない。これらのことから、nsp1タンパク質は、宿主細胞内のRNA分解経路の一つであるNMDに関与するUpf1との結合を介してRNAの分解を引き起こしている可能性が示唆された。 宿主細胞のmRNAは常に異常なRNAを認識するRNA品質管理機構により監視されている。今までに、ウイルスタンパク質が宿主のRNA分解機構に関わる報告は少なく、今回の結果は、ウイルス感染時における宿主RNA分解機構の役割に新しい知見をもたらす可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書で記載した通り平成24年度はnsp1タンパク質と特異的に結合するヘリケースの同定に成功した。さらに、nsp1タンパク質とRNAヘリケースとの結合実験も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、申請書に記載の通り研究計画を実施する予定である。大きな研究の変更などはない。予定の研究計画を遂行することで、研究目標を達成できると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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