2012 Fiscal Year Research-status Report
アレナウイルスの細胞侵入機構の解析と新規受容体の探索
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24790451
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
谷 英樹 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 主任研究官 (20397706)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞侵入機構 |
Research Abstract |
出血熱ウイルス感染症は致死率が高く重篤な疾患を引き起こすため、ワクチン及び有効な治療法の開発が急務である。しかしながら、出血熱ウイルスの多くはバイオセーフティーレベル4病原体に指定されているために、本国はもとより世界的にも研究への取り組みが難しく、病態やウイルスの生活環に関する知見は乏しい。本研究では、特にアレナウイルス感染症の治療・予防法の確立のために、ラッサウイルスをはじめ各種南米アレナウイルスおよび新興アレナウイルスのエンベロープ蛋白質(GP)を外套したシュードタイプVSVを作製し、GPの性状解析および細胞指向性、細胞侵入機構の解析を行った。本年度、各種アレナウイルスのGPの発現および糖鎖修飾等を共通に検出するために、タグを付加した発現プラスミドを作製し、これらを用いてシュードタイプウイルスを作製した。その結果、シュードタイプウイルス上に外套されているGPはどの種のアレナウイルスGPにおいてもハイマンノース型の糖鎖修飾を受けていることが明らかとなった。さらに、様々な哺乳類細胞への感染感受性およびpH依存的な細胞侵入を確認することができた。また、新興アレナウイルスであるルジョウイルスは他のアレナウイルス種と異なり、低pHによる細胞融合活性は認められず、このウイルスは細胞融合の際に細胞表面にはない何らかの分子を介して細胞融合が誘導されていることが推測された。さらに、このウイルスはこれまで他のアレナウイルスで用いられているような既存の受容体を利用しない細胞侵入機構を示すことも明らかとなった。今回の研究において、新たなアレナウイルス種の新規細胞侵入機構解明の手がかりを掴めたことは、今後アレナウイルスに対する治療法を考える上でも意義深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画通りに実験を行うことができ、新たな知見も得られており順調に進展していると考えている。カテプシンによるGPの解裂に関しては、実験を行ったものの予想された事象とは反する結果となり多少の実験の変更を余儀なくされてはいるが、来年度以降の実験計画に支障ないものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、ルジョウイルスがこれまで報告されてきたアレナウイルス受容体候補のいずれにも依存しない細胞侵入形態をとることが明らかとなった。そこで今後、このルジョウイルスの細胞侵入に関与する宿主因子の探索および同定を検討する。最近、エボラウイルスに関して細胞侵入後、エンドソーム内での膜融合に必須の分子の存在が明らかにされている。エボラウイルスのGPを発現させた細胞では、低pH処理しても巨細胞の形成が見られずこれは細胞表面に膜融合に関与する分子がないためではないかと推測される。ルジョウイルスにおいても当該実験において巨細胞の形成が見られておらず、エボラウイルスの細胞侵入と同様な分子の必要性も考えられる。そこで、膜融合に関する脂質分子の代謝や合成を阻害するような薬剤等を用いて、ルジョウイルスの感染性を評価する。エボラウイルスの細胞侵入に関する分子についてもエボラウイルスのシュードタイプウイルスを作製し、コントロールとして用いることで比較、評価を行う。 これとは別に、アレナウイルスの細胞侵入に関与するシグナル伝達分子の探索も行う。ウイルスの細胞侵入の際には様々なシグナル伝達分子が関与することで膜の形態変化を誘導し、ウイルス侵入が可能になることが明らかとなっている。そこで、チロシンキナーゼ阻害剤のライブラリーを用いてシュードタイプウイルスの感染を指標にスクリーニングを行う。感染を阻害するような候補薬剤が同定されたら、その薬剤のターゲット分子候補を特定し、感染に関与しているであろう分子を同定する。シグナル伝達分子を特定できればこの上流に位置するウイルス結合受容体や細胞表面受容体の探索も検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
一般的なウイルスの増幅や感染実験のための細胞培養に必要な試薬および器具の購入を行う。ルジョウイルスの膜融合に関与する分子同定のための阻害剤や試薬類の購入を行う。エボラウイルスのシュードタイプウイルスを作製するためにGP発現プラスミドの構築およびウイルス作製に必要な試薬類の購入を行う。ウイルスの細胞侵入に関与するシグナル伝達分子の探索のために、チロシンキナーゼ阻害剤のライブラリーの購入を行う。日本ウイルス学会において成果を発表する予定であり、そのための旅費および参加費等に使用する。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Serological assays based on recombinant viral proteins for the diagnosis of viral hemorrhagic fevers caused by arenaviruses2012
Author(s)
Kie Yamamoto, Koichiro Iha, Satoshi Taniguchi, Shuetsu Fukushi, Hideki Tani, Tomoki Yoshikawa, Shigeru Kyuwa, Roger Hewson, Masayuki Saijo, and Shigeru Morikawa
Organizer
XVIII International Congress for Tropical Medicine and Malaria
Place of Presentation
Rio de Janeiro, Brazil
Year and Date
20120923-20120927
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