2013 Fiscal Year Research-status Report
ロタウイルス感染症の防御免疫におけるT細胞の役割に関する研究
Project/Area Number |
24790454
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
藤井 克樹 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (40518122)
|
Keywords | ロタウイルス / マウス / 動物実験 / T細胞 |
Research Abstract |
本研究はマウスロタウイルスを用いて、ロタウイルス感染症における宿主免疫応答を詳細に調べることを目的としている。前年度までに、実験に使用するマウスロタウイルスEW株を入手し、その全塩基配列を解析した。今年度では、このEW株を定量するためのreal-time PCR解析法、およびCD抗原のreal-time PCR解析法を確立し、更にマウスへの感染実験を開始した。 具体的には、EW株に対するreal-time PCRは、NSP3の5’末端付近の保存性の高い領域をターゲットとし、標準品を作製してコピー数の絶対定量を可能にした。また、CD3、CD4、CD8のreal-time PCRによる絶対定量法も確立した。これにより、便や腸管サンプル中のウイルス排泄量や局所における免疫細胞の増殖の様子を解析することができ、TCRレパトア解析を行うにあたり最適なサンプル採取のタイミングを知ることができる。動物実験では、生後10日のマウスにEW株を経口接種して、ウイルス用量依存的にマウスが下痢を発症することを確認し、DD50(Dose causing diarrhea in 50% of animals)を算出することができた。便中および腸管内のウイルス量を測定したところ、接種から5日後に最大となることが判明した。また、CD抗原の定量を行った結果、CD3は接種から5日目以降、経日的に発現が上昇していた。CD8はCD3と同様に発現が上昇する傾向を示したが、CD4の上昇率はCD3、CD8と比較して穏やかだった。 以上、本年度の実験結果から、幼若マウスにロタウイルスを感染させた時の病態や免疫応答についての知見を得ることができた。これらの知見を活かして、次年度にはTCRレパトア解析を行い、ロタウイルス感染マウスの腸管に特異的に集積しているT細胞のTCRパターンを明らかにする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにマウスロタウイルスの遺伝子を定量するためreal-time PCR解析法は報告されておらず、本年度に確立したEW株NSP3に対するreal-time PCR解析法は、今後のマウスロタウイルスを用いた研究を行う上で非常に有用である。また、CD抗原に対するreal-time PCR解析法も確立したことにより、ウイルス接種後に局所において集積している免疫細胞の数の種類、すなわち炎症の程度と質を解析できるようになった。これにより、TCRレパトア解析を行うためのサンプルを採取する最適なタイミングを特定することができた。以上の結果から、今後の解析をより効率的に進めることが可能となった。また、マウスへの感染実験を行い、保有しているウイルス液のDD50を算出できたため、マウスロタウイルス研究の基盤は概ね整ったと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度から本格的なTCRレパトア解析を行う。まずロタウイルス感染時に誘導されるウイルス特異的T細胞が持つTCRを効率よく特定するため、生後10日のマウスにウイルスを感染させ、感染から5-10日前後まで経時的に腸管サンプルを採取する。また、生後10日のマウスは免疫機能が未熟と考えられるため、生後8週程度の成熟マウスや、複数回感染させたマウスでも同様のTCRを持ったT細胞が誘導されているか否かを解析する予定である。TCRレパトア解析は従来法に加え、次世代シーケンサーを用いた解析法を試みる。特に、2013年に報告された次世代シーケンサーによるマウスのTCR解析方法(Front Immunol. 2013, 23;4:456, Ilgar Z. Mamedov et al)を本研究に応用できるか否か検討を行う。 ロタウイルスの感染部位に特異的に集積するT細胞のTCR配列パターンが特定されれば、そのTCRを持つT細胞のクローニングを行う。クローニングとエピトープ決定法に関しては申請書に記載した通りの従来法で行うのが最も効率的であると考えている。ロタウイルス特異的T細胞のクローニングに成功すれば、随時T細胞のマウスへの移入実験を行い、防御免疫における各T細胞クローンの役割について解析を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬類の購入額が計画当初より低く抑えられたため、約17万円が未使用となった。 次年度は、実験動物としてBALB/cマウス60匹×1500円/匹=9万円が必要である。また、TCRレパトア解析に使用する酵素類として、逆転写酵素、制限酵素、DNA合成酵素などの購入に40万円(約5000円/サンプル×80サンプル)が必要である。また、次世代シーケンス解析に用いる試薬代として100万円程度が必要である。また、学会に参加して成果を発表するため、交通費・宿泊費として8万円を予定している。 以上、合計157万円を使用することを予定している。
|
-
[Journal Article] Identification of novel bovine group A rotavirus G15P[14] strain from epizootic diarrhea of adult cows by de novo sequencing using a next-generation sequencer.2014
Author(s)
Masuda Tsuneyuki, Nagai Makoto, Yamasato Hiroshi, Tsuchiaka Shinobu, Okazaki Sachiko, Katayama Yukie, Oba Mami, Nishiura Naomi, Sassa Yukiko, Omatsu Tsutomu, Furuya Tetsuya, Koyama Satoshi, Shirai Junsuke, Taniguchi Koki, Fujii Yoshiki, Todaka Reiko, Katayama Kazuhiko, Mizutani Tetsuya
-
Journal Title
Vet Microbiol
Volume: 171
Pages: 66-73
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Detection of Bovine Group A Rotavirus Using Rapid Antigen Detection Kits, RT-PCR and Next-Generation DNA Sequencing.2013
Author(s)
Minami-Fukuda Fujiko, Nagai Makoto, Takai Hikaru, Murakami Toshiaki, Ozawa Tadashi, Tsuchiaka Shinobu, Okazaki Sachiko, Katayama Yukie, Oba Mami, Nishiura Naomi, Sassa Yukiko, Omatsu Tsutomu, Furuya Tetsuya, Koyama Satoshi, Shirai Junsuke, Tsunemitsu Hiroshi, Fujii Yoshiki, Katayama Kazuhiko, Mizutani Tetsuya
-
Journal Title
J Vet Med Sci.
Volume: 75
Pages: 1651-5
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Norovirus binding to intestinal epithelial cells is independent of histo-blood group antigens.2013
Author(s)
Murakami Kosuke, Kurihara Chie, Oka Tomoichiro, Shimoike Takashi, Fujii Yoshiki, Takai-Todaka Reiko, Park YoungBin, Wakita Takaji, Matsuda Tsukasa, Hokari Ryota, Miura Soichiro and Katayama Kazuhiko
-
Journal Title
PLoS ONE
Volume: 8
Pages: e66534
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-