2012 Fiscal Year Research-status Report
水痘帯状疱疹ウイルス特異的CTL抗原の探索とワクチン接種に伴う細胞性免疫の解析
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24790456
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
金井 亨輔 近畿大学, 医学部, 助教 (20596621)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水痘帯状疱疹ウイルス(VZV) / 感染防御 / 細胞性免疫 |
Research Abstract |
水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の感染防御には、細胞障害性T細胞を主力とする細胞性免疫(CMI)が大きく関わっている。CMIを誘導するVZVの主要な抗原を明らかにするため、ELISPOT法による抗原のスクリーニングを行った。他のヘルペスウイルスで既知のCMI抗原蛋白は核に存在することから、21種のVZV核蛋白を個別に発現させたHEK293T細胞の核抽出液を抗原とし、20名の水痘既往のある健常人ボランティアから得た末梢血単核球(PBMC)にCMI応答を共通して誘導する蛋白を探索した。結果、ORF8, 61, 62, 63, 66は80%以上の検体でCMI応答を誘導した。このうちORF62, 63の抗原性は既知であるが、最も強く高頻度にCMIを誘導したのはORF63であった。ORF8, 61, 66は今回の我々の検討で初めて明らかとなった。 このうち、ORF61, 66のCMI抗原となるエピトープの同定を試みた。エピトープ領域を絞り込むため、ORF61, 66をそれぞれ3断片に分けて抗原とし、ORF61, 66に対し強いCMI応答を引き起こした4名の健常人PBMCを用いて比較した。結果、ORF66は共通したCMI応答が見られず以降の解析を断念した。ORF61はC末端断片で共通して応答が見られたことから、この領域をカバーする22種のオリゴペプチドを抗原としたELISPOT法によりエピトープ同定を試みた。結果、ORF61のアミノ酸番号288-307及び348-367の2配列で共通してCMI応答が見られ、これら領域がエピトープと考えられた。 これまで一般的に用いられてきたVZV特異的CMI定量ELISPOTでは、VZV粒子を含む感染細胞抽出液が用いられてきたが、本研究成果は標準化した抗原を用いた定量法が樹立できる可能性を示唆する。これらの成果をまとめた論文を近日中に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度交付申請時に、平成24年度中に水痘罹患歴のある健常人ボランティア及び水痘ワクチン接種を受けた健常人において強いCMI応答を誘導するVZV核蛋白の同定を計画し、平成25年度には同定した核蛋白における抗原エピトープ部位を同定し、同定エピトープを用いたテトラマー法による検出法を樹立することを計画した。 現時点までに、健常人20名のPBMC検体を用いた、21種のVZV蛋白を対象としたELISPOT法による抗原スクリーニングを計画通り終了した。これにより、5種の高頻度に強いCMI応答を引き起こす核蛋白を同定した。水痘罹患歴のある健常人におけるCMI応答が、ELISPOT法によって検出可能であったことから、ワクチン接種者に対する検討は取りやめた。平成25年度に行う予定であったCMI抗原エピトープの同定を前倒しして行い、ORF61のエピトープ領域の同定が既に終了している。以上の進捗状況から、本研究は当初の計画以上に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において高頻度にCMI応答を引き起こすVZV核蛋白の同定に成功した。しかしながら、ヒトサイトメガロウイルスのコードする核蛋白であるpp65のような、単独で全ウイルス抗原に比肩する強いCMI応答を引き起こす抗原蛋白は見い出せず、VZVに対するCMI応答が複数の蛋白によって引き起こされている可能性が考えられた。過去にORF62, 63のCMIエピトープが同定されており、今回我々もORF61のエピトープを同定したが、複数のエピトープペプチドを用い、それぞれにテトラマーを作成するのは妥当ではないと判断し、テトラマー法によるCMIの定量法の樹立を断念した。これにより研究計画の変更が必要となった。 さらに、本研究代表者は、平成24年9月に国立感染症研究所ウイルス第一部第四室研究員を退職し、同年10月より近畿大学医学部細菌学教室助教に着任した。本研究室はケモカインを軸とした研究を得意とし、またマウスとマウスヘルペスウイルスMHV68を用いたin vivoでの研究系を有している。 以上の理由により、今後はマウスを用いてMHV68に対するCMI応答へのケモカインの関与の検討を行う方向に研究を展開していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定より早く研究が進展したこと、またワクチン接種者でのスクリーニングが不要になったことから、研究費の繰り越しが可能となった。研究計画の変更に伴い、現在マウスとMHV68を用いてのin vivoでの研究を開始するための予備的な検討を開始している。平成25年度も引き続き新たに試薬、抗体、キット及びその他の消耗品が必要であることから、未執行経費を繰り越して平成25年度に請求する研究費と合わせて使用する予定である。
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[Journal Article] EBNA-2 -deleted Epstein-Barr virus from P3HR-1 can infect rabbits with lower efficiency than prototype Epstein-Barr virus from B95-8.2013
Author(s)
Sano H, Nagata K, Kato K, Kanai K, Yamamoto K, Okuno K, Kuwamoto S, Higaki-Mori H, Sugihara H, Kato M, Murakami I, Kanzaki S, Hayashi K.
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Journal Title
Intervirology
Volume: 56(2)
Pages: 114-121
DOI
Peer Reviewed
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