2012 Fiscal Year Research-status Report
小腸自然免疫のリンパ系細胞と肥満細胞の機能的な相互関係の解明
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24790474
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
李 英愛 大阪大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (60610681)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自然リンパ系細胞(ILC / マスト細胞前駆体 / 小腸 / IL-22 / マスト細胞プロテアーゼ / 細胞分化 / マスト細胞 |
Research Abstract |
小腸自然リンパ系細胞(innate lymphoid cell:ILC)は腸上皮細胞の恒常性を維持し、IL-22を発現し病原性細菌感染を防御する。我々はLin-c-Kit+Sca-1-細胞がIL-22、抗菌ペプチド、Csf2rb2、マスト細胞プロテアーゼ(mast cell protease:MCPT)、Rorcを高発現することを見出した。さらに、Lin-c-Kit+Sca-1- 細胞を、Lin-c-Kit+NKp46-CD4- 細胞, CD4+ LTi-様細胞、NKp46+ ILC22細胞に区別し、Lin-c-Kit+NKp46-CD4- 細胞がIL-1βとIL-23の刺激でIL-22を高発現することを示した。また、Lin-c-Kit+NKp46-CD4-細胞群の大部分はIL-7Rα+CD34-β7int 細胞であり、IL-7Rα-細胞を3サブセット(CD34+β7int, CD34-β7int, およびCD34intβ7hi 細胞)に分類した。IL-7Rα+CD34-β7int細胞はIL-1βとIL-23の共刺激でIL-17FとIL-22の転写産物を高発現する。IL-7Rα-CD34-β7int 細胞はα-defensinを高発現するが分化せず、IL-7Rα-CD34+β7int とIL-7Rα-CD34intβ7hi細胞は、サイトカイン混合物と1週間培養すると主にMCPTの転写産物を発現し、ほぼ完全にマスト細胞に分化した。従って、IL-7Rα-CD34+β7int および IL-7Rα-CD34intβ7hi細胞群はマスト細胞前駆体であり、IL-7Rα+CD34-β7int (CD4- LTi様細胞) とIL-7Rα-CD34-β7int 細胞群は腸内恒常性を維持し、それぞれIL-22とα-defensin を高発現させ腸内を防御していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小腸固有層での自然リンパ系細胞(ILC)の新しい機能を探るために、ILCとそうでない細胞群の遺伝子発現プロファイルをマイクロアレイによって比較した。すべての測定解析データはNational Center for Biotechnology Information Gene Expression Omnibusに提供した(受入番号GSE40882)。我々は、CD4- LTi様細胞が、IL-22の主な供給源と報告されているNKp46+ ILC22細胞よりも、IL-17FとIL-22を高発現することを見出した。 また、小腸固有層におけるIL-7Rα-CD34+β7int およびIL-7Rα-CD34intβ7hi細胞が、腸内マスト細胞前駆体として報告されているLin-CD45+CD34+FcεRI+β7hi細胞よりも未熟なマスト細胞前駆体であることを見出した。マスト細胞は定常状態ではほとんど検出されないこと、MCPT5およびCPA3を主に産出する成熟マスト細胞が炎症反応を制御していることから、これらの2つの細胞群は、小腸固有層におけるマスト細胞プロテアーゼMCPT1およびMCPT2の供給源として機能していると考えられる。つまり、Lin-CD45+CD34+FcεRI+β7hi細胞よりも未成熟なマスト細胞前駆体(IL-7Rα-CD34+β7int およびIL-7Rα-CD34intβ7hi 細胞)が定常状態における小腸固有層に存在し、マスト細胞プロテアーゼMCPT-1およびMCPT-2を高発現することで成熟したマスト細胞よりも腸上皮恒常性維持のために機能している。我々のこの結果は、さらに未成熟なマスト細胞前駆体の発見と、小腸での定常状態ではそれらの機能が重要であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)腸マスト細胞前駆体とCD4- LTi様細胞のin vivoにおける機能解析 4つのサブセット(IL-7Rα+CD34-β7int, IL-7Rα-CD34+β7int, IL-7Rα-CD34-β7int, IL-7Rα-CD34intβ7hi)はマウスの腸炎症反応を制御していると考えられる。これらのサブセットにおけるサイトカイン発現を計測し、炎症マウスモデル(寄生虫感染あるいは4%DDSによる大腸炎マウスモデル)に適用する。 (2)TLR3刺激による小腸固有層、骨髄および胸腺由来マスト細胞の機能比較 Poly(I:C)による障害は小腸に特有である。TLR3アゴニスト処置後の小腸固有層、骨髄あるいは胸腺由来マスト細胞の、Th1、Th2、およびTh17のサイトカイン発現量、マスト細胞の脱顆粒、およびマスト細胞プロテアーゼ発現を比較し、小腸固有層由来マスト細胞がTLR3の活性化によりPoly(I:C)による障害を制御していることを検証する。これにより、マスト細胞が異なる組織において異なる機能を発現するのは、TLR3シグナル伝達による制御を受けているからであることが示されると期待する。 (3)小腸疾病状態にあるマスト細胞欠損マウスでのマスト細胞再構成効果の確認 予備実験により、骨髄由来マスト細胞に比べて小腸固有層由来マスト細胞においてTLR3が高発現していることがわかっている。野生型およびマスト細胞欠損マウスでのPoly(I:C)による小腸への障害を比較することで、TLR3シグナル伝達異常による腸恒常性への障害における小腸固有層由来マスト細胞の新しい役割が明らかになると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はない。平成24年度の研究費を平成25年度のマウスを用いたin vivo実験のために繰り越すが、平成25年度は当初計画の通り以下の項目について研究費を執行する。 1.4サブセット(IL-7Rα+CD34-β7int, IL-7Rα-CD34+β7int, IL-7Rα-CD34-β7int, and IL-7Rα-CD34intβ7hi 細胞)の機能解析のための、炎症マウスモデルを用いた実験に必要なマウス、試薬および消耗品など購入費用。2.上記の4サブセットのin vivoでの分化を調べるための適合移植実験に必要なマウス、試薬および消耗品などの購入費用。3.小腸疾病でのマスト細胞の機能解析のために必要なマスト細胞欠損マウス、試薬および試薬の購入費用。4.国内外の会議等の情報交換のための会合に参加するための旅費。5.論文等の出版等の費用。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Journal of Dermatological Science2012
Author(s)
Hee Jin Byun, Kwang Hyun Cho, Hee Chul Eun, Min-Jung Lee, Youngae Lee, Serah Lee, Jin Ho Chung
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Journal Title
Lipid ingredients in moisturizers can modulate skin responses to UV in barrier-disrupted human skin in vivo.
Volume: 65
Pages: 110-117
DOI
Peer Reviewed
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