2012 Fiscal Year Research-status Report
実験的自己免疫性脳脊髄炎(多発性硬化症)に完全寛解を導入できる新規治療方法の創成
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24790483
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
吉田 侑矢 摂南大学, 薬学部, 助教 (50581435)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 免疫寛容 / 自己抗原 / FTY720 |
Research Abstract |
多発性硬化症に完全寛解を導入できる新たな治療方法を臨床に供給するために、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に対するFTY720と自己抗原併用療法の有用性を検討した。 EAEマウスをFTY720群 (0.3 mg/kg, 週6回)、MOG35-55群 (10 μg/mouse, 週1回)、FTY720+MOG35-55併用群およびプラセボ群の4群に分け、3-4週間治療し、その後休薬した。 1. 外観所見: FTY720群は、休薬約1週間後に全個体で重度の再燃が確認された。一方、FTY720+MOG35-55併用群では、その再燃が顕著に抑制された。 2. メモリーT細胞に及ぼす影響: 治療完了時に所属リンパ節を採取し、フローサイトメーターでメモリーT細胞について解析した。FTY720群では、CD4+CD44+CD62L- (エフェクターメモリー) T細胞の割合が顕著に増加していた。このことから、再燃にはメモリーT細胞のホーミングの解除が関与している可能性が示唆された。一方、FTY720+MOG35-55併用群でも同様にエフェクターメモリーT細胞の割合が増加していた。従って、本併用療法が休薬後に免疫寛容を導入できた要因が他に存在すると考えられた。 3. 制御性T細胞に及ぼす影響: 2.と同様にフローサイトメーターで制御性T細胞について解析した。その結果、FTY720+MOG35-55併用群は、FTY720群と比較して、有意にCD4+Foxp3+ (制御性) T細胞の割合が増加していた。また、IL-10を高産生すると報告されているCD4+CD44highFoxp3+ T細胞の割合が顕著に増加していた。これらのことから、FTY720+MOG35-55併用療法は機能的な制御性T細胞を誘導し、免疫寛容を導入している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画とその達成度について記述する。 当初24年度計画: EAEマウスをFTY720単独群、MOG35-55単独群、FTY720+MOG35-55併用群およびプラセボ群の4群に分け、3週間治療する。1)治療完了時の脊髄を採取し、組織化学的に解析する。2)治療完了時の所属リンパ節由来リンパ球を採取後、抗CD4抗体、抗CD44抗体および細胞内サイトカイン染色し、フローサイトメーターでサブセット解析する。3)治療完了時の所属リンパ節由来リンパ球からCD4+CD44+細胞を分取する。分取した細胞をDyna beads Mouse T-Activator CD3/CD28およびMOG35-55存在下で48時間培養し、培養上清中の炎症性サイトカイン濃度を酵素免疫測定法で測定する。4)3)の培養後の細胞を回収し、2)と同様の方法でサブセット解析する。5)3)で分取したCD4+CD44+T細胞をCFSE染色した後、同様にDynabeads Mouse T-Activator CD3/CD28およびMOG35-55存在下で48時間培養する。培養後、7-AADで染色し、細胞増殖および生存率をフローサイトメーターで調べる。 達成度: 1)および2)については計画通り遂行した。3)および4)については、測定方法を細胞内サイトカイン染色法に変更し、まとめて実施した。しかし、顕著な差がみられなかったため、5)の必要性については検討中である。 休薬約1週間後のT細胞サブセットの変化について検討を加える必要性が得られたが、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画と今後の研究の推進方策について記述する。 当初25年度計画: 24年度の研究実施計画と同様の方法および群でEAEマウスを作製し、3週間治療する。治療完了後追加免疫し、病態について組織レベルおよびサイトカインレベルで解析する。次に、他系統のマウスで作製したEAEでもFTY720と自己抗原併用療法が有用であるか否かについて組織レベルおよびサイトカインレベルで検討する。 研究の推進方策: 後者で使用予定のモデルは慢性再発性EAEである。今後は、後者の計画を先に実施し、本治療方法の有用性を証明した後、慢性再発性EAEモデルを用いて、前者内容の検討を加える。 また、24年度の結果から休薬約1週間後のT細胞サブセットの変化について検討を加える必要性が考えられた。従って、当初計画に加えて、以下内容についても検討する。EAEマウスを作製し、24年度に実施した研究と同様の方法および群で3-4週間治療する。休薬約1週間後に鼠頚リンパ節を採取し、フローサイトメーターでT細胞サブセット解析する。 上記方法で本治療法の有用性を証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)