2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒトパラインフルエンザ2型ウイルスを用いた粘膜免疫誘導型結核ワクチンの開発
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24790492
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Research Institution | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
Principal Investigator |
渡邉 健太 独立行政法人医薬基盤研究所, 霊長類医科学研究センター, 研究員 (20582208)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 結核 / ワクチン / ヒトパラインフルエンザ2型ウイルス |
Research Abstract |
BCGは現在広く用いられている結核ワクチンであるが、成人での結核予防効果は明らかになっていない。このため、成人でも効果のある結核ワクチンの開発が必要である。また、結核の予防には呼吸器粘膜における結核菌特異的な免疫反応の誘導が求められる。粘膜の免疫反応は皮下接種等の全身投与では誘導が困難であり、粘膜面に直接、抗原を伝達する必要がある。そこで本研究では、呼吸器粘膜に対する有効なベクターとしてヒトパラインフルエンザ2型ウイルス(hPIV2)を用いた結核ワクチンの開発を行った。hPIV2ベクターに、結核予防ワクチン抗原として有効であることが知られているAg85Bを組み込んだリコンビナントhPIV2(rhPIV2-Ag85B)を作製た。これをマウスに経鼻投与することで免疫し、そのワクチン効果を検討した。rhPIV2-Ag85Bを複数回免疫したマウスにおいて結核菌の攻撃接種を行ったところ、免疫マウスの肺においては結核菌の菌数に顕著な減少が認められた。これは既存のBCGを免疫した群と比較しても有意に低い値であった。また、免疫マウスから脾臓並びに肺縦隔リンパ節細胞を分離し、これらをAg85Bで刺激培養したところ、各種サイトカインの産生増加がみられた。さらに、抗原特異的なIFN-γ産生細胞数の上昇も認められた。一方、ヒト呼吸器上皮細胞を用いた解析においては、rhPIV2-Ag85B感染細胞でRIG-Iレセプターを介してIFN-βの産生が増大していることが確認された。このことは、hPIV2ベクター自体がアジュバント効果を持ち、呼吸器粘膜の活性化に作用し得ることを示唆するものである。以上の結果より、rhPIV2-Ag85Bは新しい結核ワクチンとして有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、作製したrhPIV2-Ag85Bワクチンをマウスに経鼻投与し、誘導される呼吸器粘膜の免疫反応を解析し、また、結核菌の攻撃接種試験も行い、実際の感染防御効果について既存のBCGと比較して検討することで、結核ワクチンとしての有用性を評価する計画であった。実際には、マウスを用いたrhPIV2-Ag85Bワクチンの免疫学的解析は問題なく進行し、その新規結核ワクチンとしての有用性を評価できる段階まで研究を進めることができた。さらに、ヒト呼吸器上皮細胞を用いた感染実験を行うことで、細胞レベルでの解析結果も得られ、hPIV2ベクター自体がアジュバント活性を有する、という有用性が示された。これらは当初の計画通りであり、今後の発展的な研究を行うにあたって基礎となる知見を得ることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究結果を元に、その応用的な研究として、カニクイザルを用いた免疫反応の解析とワクチン効果を検討する。実験で用いるカニクイザルは既に確保されており、研究施設としても霊長類に特化した設備も保持していることから問題はない。ここでは至適ワクチン投与量の検討、あるいはブースター効果の機序解析を行い、より効果が高く実用的なワクチンプログラムの確立を目指す。さらに、rhPIV2-Ag85B投与によって引き起こされる呼吸器の炎症や、ウイルスの脳移行等の有無を病理学的に診断し、ワクチンの安全性・毒性についての評価も行う。 さらに、日本国内ではBCGの予防接種が行われている現状を踏まえて、あらかじめBCGを免疫した群を作製し、rhPIV2-Ag85B投与によるブースター効果の機序を解析する。これによりワクチン効果の増強が期待でき、より効果的で実用的な結核ワクチンプログラムの開発につなげることが可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)