2013 Fiscal Year Research-status Report
卒前医学教育改革の支援システム基盤の構築ー英国医事委員会の役割から
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24790499
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴原 真知子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40625068)
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Keywords | 卒前医学教育 / 自己主導型学習 / 専門職教育 |
Research Abstract |
本研究は、イギリスにおいて現代医学教育改革を牽引してきた民間機関「英国医事委員会(General Medical Council、以下GMCとする)」に着目し、①教育改革組織としてどのような役割や特徴をもつのか、②医学部における教育実践レベルでの改革をどのように実現しているのか、③GMCによる教育質保証の現状と課題はどのように評価することができ、④日本の医学教育の現状に対する具体的示唆とは何か、を明らかにすることを目的としている。 初年度は、特に①及び③に焦点化した調査・研究を実施した。二年目にあたる平成25年度は、特に②の点に焦点化した調査を行った。具体的には、a)教育質保証プロセスにおける医学生の活用、b) 入試改革の実際、c)医学教育改革に着手された1970年代から現在に至るまでの成人教育概念「自己主導型学習(Self-Directed Learning)」の需要・普及過程とその実際を、小テーマとして設定し、調査・研究作業を行った。イギリス調査は、2013年8月と2013年9月の二回、実施した。これらの調査では、Queen Mary CollegeやSt George's, KIng's Collegeなどのロンドン市内の医学校に加えて、University of Aberdeen, Hull & York Medical School, Cardiff University Medical Schoolなどを視察した。また、これらの研究成果については、学会等を通して積極的に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、先行研究の検討や国内外の調査を通してGMCの全体像や主幹事業である教育質保証事業のプロセス及び基本機能を明らかにすることを目指した。その研究成果を踏まえて、平成25年度の研究では、a)教育質保証プロセスにおける医学生の活用、b) 入試改革の実際、c)医学教育改革に着手された1970年代から現在に至るまでの成人教育概念「自己主導型学習(Self-Directed Learning)」の需要・普及過程とその実際を、小テーマとして設定した。平成25年度の調査・研究から、明らかにされた点は、下記の通りである。 a)イギリス医学部での教師主導型学習から自己主導型学習の移行は1970年代後半から取り組まれてきたものであり、その過程においてGMCはその構成員がほぼ医師のみで成立していた同業者組合的な性格から、医師免許をもたない様々な専門職者や患者、医学生などを交えたInter-Professionalな組織として発展したこと、b)イギリスにおける医学教育改革は、単なる政策レベルではなく、カリキュラム開発から教育方法、評価方法、組織構図に至るまで及んできたこと、c) 特に入試では、自己主導型学習という新しい教育モデルで求められる学習スキルを含めたNon-Academic能力が注目され、それに伴って新しい入試方法が開発されつつあること、c)近年では、Widening Particiapationという入学者の多様化政策が採られ医学教育実践に影響を及ぼしていること、が明らかとなった。 これらの点が明確になったという点で本研究は「おおむね順調に進展している」と言えるが、これらの点を論文などとして発表するまでにはおらず、さらなる調査・分析・考察を必要とする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究の最終年度であるため調査を継続すると同時に、分析・考察により時間を割き、本研究課題の成果をとりまとめることを目指す。特に、次の三点に焦点化して作業を進める。 ① 1970年代以降、GMCを中心にどのように自己主導型学習への転換がなされたのか:この点については、政策の変化を掴むだけでなく、いくつかの医学校をサンプルとして抽出し、カリキュラム開発や教育方法、評価方法、医学部組織のあり方などの点で、どのような変化を経たかを調査する必要がある。また、特に1990年代からの医学部変革期に関わってきた医学部教員などへのインタビューから、どのような課題に直面してきたかなど医学教育実践現場での変化のプロセスを理解することを目指す。 ② 新しい入学者の選抜や、医学部入学者多様化政策 Widening Participationの方策と方法はどのようなものか:イギリスでは、自己主導型学習への転換に伴って、従来必要とされた知識中心型の学力観に代わり、自己主導型学習を遂行するために求められる学習スキルを入学時に測る方向へとシフトしている。これらの方法は具体的にどのようなものなのか、またこのような入学者多様化政策が医学部カリキュラムにどのように影響を及ぼしているのかを明らかにする。 ③ 日本の医学部における実態と課題とは何か:イギリス医学教育改革についての本研究の成果が日本医学教育が抱える課題への示唆となるためには、日本の医学部における実態と課題の把握が不可欠である。国内ですでに発表されている論文や代表者によるインタビュー調査などを通して明らかにする。特に、どの点で、自己主導型学習への転換が求められると考えられるのか、また自己主導型学習への転換において考えられる課題は何かに焦点を当てる。
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Research Products
(6 results)