2012 Fiscal Year Research-status Report
困難な医療面接‘悪い知らせ’に要求される医師側のコンピテンシーについての研究
Project/Area Number |
24790506
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
菅原 亜紀子 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (40566808)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医療コミュニケーション / 悪い知らせ / 医学教育 / RIAS / SPIKES |
Research Abstract |
本研究は、困難な医療面接‘悪い知らせ’を行う際に求められる医師のコンピテンシーを明らかにする目的で開始した。平成24年度は、研究代表者が担当する福島県立医科大学医学部5年生の医療面接実習において、悪い知らせ「がん告知」の面接事例のデータ収集を中心におこなった。平成24年度は医学生28名の面接事例を収集した。 具体的には、対象の医療面接について①音声・動画の記録、②ファシリテータ(教員)による評価、③医学生による自己評価、②模擬患者による評価をおこなってデータを収集した。面接事例の収集に当たっては、がん患者シナリオの作成や模擬患者のトレーニング、評価項目の設定、ポストアンケートの作成について、入念に検討し準備を行った。また、医療現場の会話分析法であるRoter Interaction Analysis System(RIAS)の分析者(コーダー)としての認定を研究代表者および研究協力者が受け、分析準備を進めている。 悪い知らせを伝える際のプロトコルであるSPIKESプロトコル(Buckman R 1992)に従って設定した評価項目についてのファシリテータ評価から、医学生は、患者が病状をどの様に捉えているの把握や医学的情報の伝達に長じている一方、患者が望む情報の程度の理解が困難である傾向が明らかとなった。また、医学生のそれまでの死別体験や身近ながん患者の存在は、悪い知らせを伝える際のスキルに影響しないことが示唆された。 医療面接実習を通して、医学生の悪い知らせにおけるコミュニケーションの特徴を把握することができた。さらに、会話分析や非言語のコミュニケーション要素の分析を進めることで、医療現場で‘悪い知らせ’を行う際に必要な医師のコンピテンシーについて様々な角度から明らかにされると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・医療面接の録音、録画や評価、アンケートによるデータ収集の仕組みを確立させた ・患者シナリオ、医療面接評価表、ポストアンケート等の設定に問題はなく、順調にデータ収集が進んでいる ・音声分析については検討が必要である ・会話分析については、研究代表者および研究協力者がRIAS(医療現場の会話分析法)の分析者(コーダー)としての認定を受け、準備が整えられている 以上の理由から、本研究は当初の研究計画どおり順調に進展していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度以降は、医療面接事例の収集を継続するとともに、RIASによる会話分析、音声分析を中心に進める予定である。 医療面接の客観評価は医学部教員と面接を担当した模擬患者によって実施しているが、更に面接を担当していない模擬患者や一般市民による評価を加える。具体的には録画した医療面接ビデオを観察して評価をおこなってもらう。 研究初年度である平成24年度は、医療面接の録音、録画や評価、アンケートによるデータ収集の仕組みを確立し、データ収集を進めることが中心となったが、今後は研究結果を定期的にまとめて、医学教育学会等で研究成果を報告していく。研究補助者の協力によりより効率的に研究を推進できるよう工夫していく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の医療面接事例収集は、従来実施していた本学医学部の医療面接実習に合わせておこなったため、模擬患者への謝金の支出が抑えられた。 次年度使用額として計上した費用は、一般市民等による医療面接の客観評価を行うための費用(交通費・謝金等)や、医学生以外の医師による医療面接データを収集するための費用(交通費・謝金等)、研究補助者への謝金等に充てる予定である。
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