2013 Fiscal Year Research-status Report
困難な医療面接‘悪い知らせ’に要求される医師側のコンピテンシーについての研究
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24790506
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
菅原 亜紀子 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (40566808)
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Keywords | 医療コミュニケーション / 悪い知らせ / 医学教育 / RIAS / 性差 / SPIKES |
Research Abstract |
本研究では、がん告知などの‘悪い知らせ’を行う際の医師側のコミュニケーション特性や、求められる医師のコンピテンシーについて検討している。平成25年度は、第一に、前年度に引き続き福島県立医科大学医学部5年生の医療面接実習での「がん告知」面接事例24例を収集した。具体的に収集したデータは、①動画・音声、②ファシリテータによる評価、③医学生による自己評価、④模擬患者による評価である。平成24年度の28例と合わせて計52例が集まった。 第二に、平成24年度に収集した28例の面接事例について、言語的コミュニケーション分析として患者-医師の相互作用分析システム(RIAS)による会話分析を、非言語的コミュニケーション分析として独自に作成した評価表(アイコンタクト、うなずき、声の大きさ、会話のテンポなどの項目)による分析を実施した。 言語的コミュニケーション分析によって、臨床経験のない医学生が告知を行った際に予想される医療面接の特性が明らかとなった。医学生の発言は、「会話促進・連携」、患者への同意や理解を示す発言などの「患者-医師関係の構築」、「情報交換」に関するものが約1/3ずつであった。情報交換では、医学的な情報提供に偏って患者の心理社会的内容の質問が乏しいという特徴があり、患者の生活背景や心理に配慮したアプローチを学ぶ必要性が考えられた。 また、ファシリテータ評価では女子医学生が男子医学生よりも高評価であり、悪い知らせのコミュニケーションパフォーマンスに性差が確認された。具体的には、うなずきやあいづちによる会話促進、共感的な対応、面接進行のスムーズさの点で女子医学生が高評価であった。医療コミュニケーション学習の初期段階から準備状況そのものに性差が存在する可能性が示唆された。 今後は、これらの結果を統合して‘悪い知らせ’を行う際に求められる医師のコンピテンシーについて考察していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・平成24年度、25年度ともに順調に面接事例を収集して50例を超えている。 ・音声分析については、音声データ収集を継続しているが、教育現場を対象としている点から録音環境が必ずしも一定せず、分析が困難な状況にある。音声分析ソフトによる方法よりも人による評価の方が対話の対象(患者)が受ける印象を反映すると考え、評価表による方法を検討し、分析を進めている。 ・言語コミュニケーション分析は平成24年度に収集した28例の患者-医師の相互作用分析システム(RIAS)分析が終了した。 ・非言語コミュニケーション分析についても同じく28例の分析が終了した。 ・研究の進捗状況ついての成果発表を行い、他の研究者からと意見交換を行った。 以上の理由から、本研究はおおむね当初の計画どおり順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究課題の最終年度である。平成25年度に収集した医療面接事例の分析を行なうとともに、言語的コミュニケーション、非言語的コミュニケーション、コミュニケーションパフォーマンスの客観評価の分析結果を統合して‘悪い知らせ’を行う際に求められる医師のコンピテンシーについて考察していく。 研究実績について国内・国際学会での成果発表を積極的に行い、学術論文としてまとめる。 研究計画の段階では、医学生のほか臨床経験レベルの異なる医師を対象として‘悪い知らせ’の医療面接事例を収集する予定であったが、コミュニケーション教育に応用するという目的から、医学生の面接事例をできるだけ多く集めることとした。臨床経験のない医学生が悪い知らせを行った際のコミュニケーション特性や求められるコンピテンシーを明らかにすることで、‘悪い知らせ’のコミュニケーション教育で重視すべきポイントを提唱することができると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度同様、平成25年度も医療面接事例の収集は従来の本学医学部医療面接実習に合わせておこなったため、模擬患者への謝金・旅費の支出や撮影費用を抑えることができた。 また、研究最終年度である次年度に複数の学会(国際学会を含む)での成果発表を予定しているため、当初計画よりも多くの予算が必要と判断した。 次年度の研究費は、研究補助者への謝金・旅費、データ分析に使用するデータベースソフトウェア等の費用、文献収集に係る費用、学会発表に係る旅費、参加費等(日本シミュレーション医療教育学会学術大会、日本医学教育学会大会、ヨーロッパ医学教育学会AMEE2014、アジア太平洋医学教育学会12thAPMECを予定)、雑誌論文執筆、投稿に係る経費(英文校閲料、論文投稿料など)に充てる予定である。
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