2014 Fiscal Year Annual Research Report
非正規雇用の増加は健康と医療の格差を拡大したのか―20年間の経時的分析から
Project/Area Number |
24790516
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
可知 悠子 日本医科大学, 医学部, 助教 (10579337)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非正規雇用 / 健康格差 / 医療格差 / コホート研究 / 反復横断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】非正規雇用者の健康問題に対する政策を考えるために、非正規雇用の健康影響に関するエビデンスを整理する必要がある。しかし、わが国では事例研究や横断研究による報告が主であり、コホート研究などによる信頼性の高いエビデンスが絶対的に不足していた。そこで、本研究では信頼性の高いエビデンスの構築のために、以下の2つの研究を行うことを計画した:(1)非正規雇用が健康を悪化させるかどうかの因果関係にせまるための「コホート研究」;(2)過去20年間に、非正規雇用の増加により健康と医療の格差が拡大したかどうかを明らかにするための「反復横断研究」。
【研究の成果】研究の結果、以下のようにわが国初のコホート研究による知見を得た:(1)一般住民を対象とした「コホート研究」により、非正規雇用は健康(特にメンタルヘルス)に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。具体的には、厚生労働省「中高年者縦断調査」の2005年のデータを基に、うつ・不安障害のなかった労働者を抽出し、2009年まで最大4年間追跡して、うつ・不安障害発症の有無を調べた。その結果、中高年の「男性」と「未婚女性」の非正規労働者は正社員に比べて、発症する割合が2倍高い実態を明らかになった;(2)官庁統計のデータを用いた「反復横断研究」により、過去20年間における非正規雇用の増加は健康と医療の格差の増減にほとんど影響を及ぼしていないことが明らかとなった。具体的には、厚生労働省「国民生活基礎調査(1986-2007)」に参加した、働く世代(20-59歳)の男女を対象に、反復横断研究を行った。その結果、健康と医療の格差の増減に影響した要因として、男性では失業が、女性では離婚が重要になってきていることが明らかになった。
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