2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレス性ミトコンドリア障害に対するグルタチオントランスンフェラーゼの役割
Project/Area Number |
24790533
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
今泉 直樹 琉球大学, 医学部, 助教 (10547384)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ミトコンドリア / グルタチオントランスフェラーゼ / 膜透過性遷移 / 酸化ストレス / 肝障害 |
Research Abstract |
ミトコンドリア膜結合性グルタチオントランスフェラーゼ(mtMGST1)が酸化ストレス性ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)孔(pore)の構成成分として働いているかを明らかにするため、本年度はmtMGST1とMPT関連タンパクであるadenine nucleotide translocase(ANT)の精製を行い、ミトコンドリア膜孔複合体(MPC)形成の評価を行った。 ラット肝ミトコンドリア内膜からカラムクロマトグラフィーにて単一蛋白のmtMGST1を精製し、2種類のANT(30 kDaと48 kDa)の部分精製画分を得た。そして、精製したmtMGST1と2種類のANTにリン脂質や酸化剤であるperoxynitrite(PON)の存在/非存在下で反応させ、抗MGST1抗体、抗ANT抗体を用い、Western blotにて高分子蛋白(HMP)の有無を確認した。するとmtMGST1と48 kDaのANT、カルジオリピンを混合し、PONを作用させた場合にのみHMPの形成が確認された。これに2-mercaptoethanolを作用させるとHMPは消失した。一方、mtMGST1と30 kDaのANTとリン脂質、PONを反応させた場合や、MGST1と2種類のANT単独を反応させた場合ではHMPは確認されなかった。以上のことは、カルジオリピンを多く含むミトコンドリア内膜では酸化ストレスによりmtMGST1が特異的に48 kDa のANTとジスルフィド結合を介してMPCを形成することを裏付けた。今後は、もう一つのMPC構成蛋白と考えられるcyclophilin Dについて精製を行い、mtMGST1およびANTとMPCを形成するか検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的はmtMGST1が酸化ストレス性MPT poreの構成成分として働いているかを明らかにし、そのMPT poreの開口(opening)メカニズムを解明し、mtMGST1阻害剤が酸化ストレス性肝障害の抑制薬となり得るか病態モデルラットを用いて検討することである。 平成24年度はミトコンドリア内膜からmtMGST1、ANTを分離精製し、酸化剤を与えた際に、カルジオリピン存在下でHMP形成が確認され、これらのタンパクが酸化ストレスによりMPT poreを形成する事を示唆するデータが得られた。また、平成25年度以降の計画予定である培養細胞を用いたMPTへのmtMGST1の影響の検討をスタートさせた。酸化ストレス性肝障害についてもモデル動物作製を試みた。アセトアミノフェンを用いた投与条件の検討を行い、ミトコンドリア膜透過性機能評価を始めた。 平成24年度から平成25年度にかけての研究計画はmtMGSTの精製、一次構造決定、抗体作製と機能解析及びリン脂質を用いて人工膜を作製し、酸化剤を作用させた場合、これらがMPT poreを形成するかであり、現在までの達成度はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度はMPT poreの形成にmtMGST1、ANTそしてリン脂質、特にカルジオリピンが関係している事が明らかとなった。そこで、平成25年度は、精製されたmtMGST1、ANTに加えCypDを精製し、カルジオリピンを含むリン脂質を用いて人工膜を作製し、酸化剤を作用させた際にMPT poreとして機能するか検討する。MPT poreとしての機能は、蛍光色素等を用いた透過性の変化、アポトーシスのシグナルとなるチトクロムcとの結合性、GST活性などで評価する。精製したラット肝ミトコンドリア内膜mtMGST1の一次構造を決定し、抗体を作製する。この抗体を用いた免疫沈降法により、ANT、CypDとのinteractionを確認する。また、培養細胞を用いたMGST1の過剰発現細胞を作製し、培養液に種々のmtMGST1活性化剤や酸化ストレスを与えた後、ミトコンドリアを分離し、GST 活性、ミトコンドリア膨化反応(swelling)、チトクロムcを測定すると共に細胞形態等を蛍光顕微鏡で観察し、アポトーシスとの関連を検討する。これらは平成26年度以降も継続して行う。平成26年度以降はモデル動物を用いたMPT阻害剤、促進剤の探索、評価を進めていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度計上されていた海外旅費について、海外の学会参加が平成25年度へ変更となったため、次年度に使用する研究費が生じた。よってこの研究費は平成25年度に海外学会参加旅費として使用予定である。その他の平成25年度の研究費については大きな変更は無い。MPT関連タンパクの精製やin vivo実験に用いる動物およびその管理費、機能解析に用いられる生化学実験試薬、電気泳動関連試薬、細胞培養試薬類、チップ等の消耗品、学会参加による国内旅費として使用予定である。現在までの研究計画はおおむね順調にしており、平成25年度以降の研究費についても計画通りに使用予定である。
|
Research Products
(1 results)