2013 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレス性ミトコンドリア障害に対するグルタチオントランスンフェラーゼの役割
Project/Area Number |
24790533
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
今泉 直樹 琉球大学, 医学部, 助教 (10547384)
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Keywords | ミトコンドリア / グルタチオントランスフェラーゼ / 膜透過性遷移 / 酸化ストレス / 肝障害 |
Research Abstract |
本研究はミトコンドリア膜結合性グルタチオントランスフェラーゼ(mtMGST1)が酸化ストレス性ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)孔(pore)の構成成分として働いているかどうかを明らかにする事を目的としている。 平成25年度はMPT現象に対し鍵となるミトコンドリア内膜の透過性の亢進とmtMGST1の関係を明らかにするため、ミトコンドリア内膜に存在するmtMGST1の一次構造について検討を行った。加えて、内膜mtMGST1の効率的な精製方法の検討を行った。mtMGST1はミトコンドリア内膜、外膜両方に存在が確認されているがその構造について詳細な検討はなされていない。ミトコンドリア内膜、外膜各々からmtMGST1を精製したところ、その比活性に違いが見られ、電気泳動でも分子量、等電点にわずかな違いが観察された。N末端アミノ酸解析では、十分量のタンパクを検出に用いたにもかかわらず検出感度以下となったためN末端アミノ酸が翻訳後修飾によりブロックされている可能性が示唆された。内膜、外膜mtMGST1の違いの理由として、構造的な違い、周囲の環境(他のタンパクや脂質との相互作用)、修飾の影響などが推測され、それぞれ異なる構造を持つ可能性が示唆された。また、mtMGST1の効率的な精製方法はまだ確立されておらず、14週齢前後のラットから精製したmtMGST1の比活性が高いことが明らかとなり、今後の抗体作製、人工膜再構成実験等の研究の進展に大きく影響する結果を得られた。 一方、酸化ストレス性肝障害モデルの検討を行うため、アセトアミノフェンを用いた実験系の有用性を検討した。ラットよりもスモールスケールのマウスを用いたアセトアミノフェン肝毒性を天然抗酸化物質で評価したところ、MPTの変化と毒性の軽減作用が確認された。また、培養細胞を用いたMPTの検討も同時に開始した。今後、これらのモデル、測定方法を用いてGST阻害剤の検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はミトコンドリア内膜と外膜からmtMGST1を分離精製し、その違いについて検討を行った。また、ミトコンドリア内膜からの効率的なmtMGST1精製方法の検討も行った。一方、ガラクトサミン/LPSよりも実際に病態として問題となっているアセトアミノフェン肝障害モデルを用い、酸化ストレス性肝障害について検討を行った。 当初の計画では抗体作製を行う予定であったが、研究の進捗状況を考慮し、先に病態モデルや培養細胞の検討を進めており、現在の研究目的の達成度はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度はmtNGST1の精製と一次構造の解析、病体モデルの検討を行った。平成26年度は、引き続きmtNGST1の精製と一次構造の解析を行い、細胞を用いた検討を中心に行う予定である。精製mtMGST1を用いたMPTとの関連性を確認する一方、マウス初代培養肝細胞を用いた酸ストレス性MPTの評価系も検討し、メカニズムの解明を行う。人工膜の再構成実験についてはリコンビナントを用いた検討を予定している。また、GST活性化剤、阻害剤を用いた動物実験についても同様に進める。よって、次年度は初代培養肝細胞、精製、人工膜再構成等に用いる試薬、動物購入費に研究費を使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度計上されていた海外旅費について、海外の学会参加が平成26年度以降へ変更となったため、次年度に使用する研究費が生じた。よってこの研究費は平成26年度以降に海外学会参加旅費として使用予定である。 平成26年度の研究費については大きな変更は無い。MPT関連タンパクの精製やin vivo実験に用いる動物およびその管理費、機能解析に用いられる生化学実験試薬、電気泳動関連試薬、細胞培養試薬類、チップ等の消耗品、学会参加による国内旅費として使用予定である。現在までの研究計画はおおむね順調にしており、平成26年度以降の研究費についても計画通りに使用予定である。
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