2013 Fiscal Year Research-status Report
立体構造情報を利用したメタロ型カルバペネム分解酵素の阻害剤創製と細菌検査への応用
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24790570
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和知野 純一 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00535651)
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Keywords | メタロ-β-ラクタマーゼ / SMB-1 / D-captopril |
Research Abstract |
本年度はメタロ-β-ラクタマーゼSMB-1とD-captoprilの共結晶を作製し、X線結晶構造解析による構造決定を行った。D-captopril複合体については1.8Aで構造を決定することができた。D-captopril複合体とnative体の構造を比較したところ、全体像に大きな違いは見られなかった。native体の活性中心には2つの亜鉛原子があり、その間に水分子が存在する一方で、D-captopril複合体の活性中心には水分子に相当する電子密度は観察されず、D-captoprilが持つチオール基(-SH)が活性中心の亜鉛に配位している様子が観察された。現段階ではD-captoprilのチオール基以外の電子密度を観察することができていない。したがって、今後、D-captoprilとSMB-1メタロ-β-ラクタマーゼの結合様式を完全にあきらかにするために、共結晶の作製方法を改善する予定である。 臨床の現場では、メタロ-β-ラクタマーゼ産生株を特定する際に、平板培地を用いたディスク拡散試験法が用いられている。そこで、D-captoprilがSMB-1メタロ-β-ラクタマーゼ産生株の検出に使用できるか否かを検討することとした。SMB-1メタロ-β-ラクタマーゼ産生株を平板に塗布し、D-captoprilを阻害剤として染み込ませディスクとβ-ラクタム薬を含んだディスクを隣接して置き、培養後、β-ラクタム薬を含んだディスク周囲の発育阻止帯を観察した。その結果、D-captoprilの影響により、発育阻止帯の形状が大きく変化することがわかった。したがって、D-captoprilはin vivoにおいてもSMB-1メタロ-β-ラクタマーゼの酵素活性を抑制することができ、SMB-1メタロ-β-ラクタマーゼ産生株検出系のための阻害剤として有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度得られた構造情報を利用し、D-captoprilによるSMB-1メタロ-β-ラクタマーゼ阻害機構の一端をあきらかにした。本年度及び来年度はSMB-1メタロ-β-ラクタマーゼに対する新しい阻害剤を見出すことに焦点をおいているため、昨年度報告したmercaptpacetate以外に新たな阻害剤候補物質を特定できたことは、今後の阻害剤開発の基盤となる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに化合物を増やし、今年度と同様の検討を行う予定である。SMB-1メタロ-β-ラクタマーゼの活性中心には亜鉛原子が存在するため、チオール基(-SH)を持つ化合物は全般的に阻害剤として機能すると予測される。本研究では最終的に細菌検査に応用可能な阻害剤を特定することを目的としているため、化合物の分子量としては500以下、さらに、細菌のそのものに低毒性である化合物を念頭に、化合物のスクリーニングを行う予定である。現在、このような条件下にてin silico screeningによる阻害剤探索を行っている。in silico screeninigにより見出した化合物についても、その阻害効果をあわせて検討する予定である。
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Research Products
(9 results)