2012 Fiscal Year Research-status Report
新たに開発した動物モデルを用いた末梢動脈疾患に伴う疼痛機序の解明
Project/Area Number |
24790575
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
堀 紀代美 金沢大学, 医学系, 助教 (40595443)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 末梢動脈疾患 / PAD / 虚血性疼痛 / 痛覚過敏 / 筋痛 / 間歇性跛行 / P2X3 / ASIC3 |
Research Abstract |
【目的】末梢動脈疾患(PAD)で見られる虚血性疼痛のメカニズムを明らかにするため、PADモデルラットの虚血肢にみられる筋の痛覚過敏の解析を行った。 【方法】本年度は全身麻酔下でラットの総腸骨動脈および腸腰動脈を結紮することにより下肢の血流を阻害したPADモデルラットを作成し、下肢の血管造影を行い、下肢の血流量、下肢の皮膚温を確認した。またこれまで予備実験としてデータを取得してきた皮膚および筋の機械刺激、熱刺激に対する疼痛行動をさらに観察した。またPADモデルラットの動脈結紮による筋組織の壊死および再生の有無を調べるため、ラットの下腿の皮膚や腓腹筋を組織学的に染色して観察した。さらにこれまでに行った行動薬理学評価により関与が示唆されたイオンチャネルP2X3、ASICSの中で、P2X3の後根神経節の腓腹筋の知覚ニューロンにおける発現を調べた。 【結果】PADラットでは処置後6週まで皮膚血流の減少が認められ、4週まで皮膚温の低下が認められた。皮膚の機械的痛覚過敏は1週まで、筋の機械的痛覚過敏は3週まで確認され、間歇性跛行は12週まで続いた。また処置後4日では筋の壊死像が観察された。腓腹筋の知覚ニューロンにおけるP2X3の発現量は下肢の血流を阻害したPADラットと対照群で変化は認められなかった。 【結論】本年度の成果により、PADラットは、慢性的な筋の痛覚過敏と間歇性跛行を呈し、末梢性動脈疾患の痛みのメカニズムの解明に有用であることがわかった。また、下肢の血流阻害による筋の痛覚過敏には、P2X3,2/3 の活性化およびASICsの関与が示唆され、PADにおける痛覚過敏の発現に重要と思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床で見られるPADと似た病態である慢性的な筋の痛覚過敏と間歇性跛行を呈するPADモデルラットが開発できた。本モデルラットによる解析により虚血性疼痛のメカニズムを明らかにできる。 これまでの行動薬理評価と平成24年度の成果より、下肢の血流阻害による筋の痛覚過敏には、P2X3,2/3 の活性化およびASICsの関与が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基にして、平成25年度はPAD モデルラットの痛覚の変化に関与する分子メカニズムを明らかにすることを目的に新たなイオンチャネルや成長因子の関与について行動薬理学的に評価する。 これまでの機械刺激や熱刺激による痛覚行動に加え、冷刺激に対する疼痛行動を評価し、冷痛覚との関与が報告されるイオンチャネルTRPA1 およびTRPM8 の拮抗薬を投与して疼痛行動の変化を確認する。 また、同様に動脈結紮によって痛覚が亢進したラットに栄養因子のVEGF 受容体VEGFR2の拮抗薬および抗VEGF 中和抗体、NGF 受容体TrkA の阻害薬および抗NGF中和抗体をそれぞれ投与して疼痛行動の変化を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
若干の研究実施の順序変更により今年度には購入を見合わせていた機器・試薬があり、繰越が生じたが、次年度に購入、実施を計画している。 次年度に計上された研究費は行動薬理評価に使用する薬剤の購入が中心となる。イオンチャネルTRPA1 の拮抗薬(HC-030031)およびTRPM8 の拮抗薬(BCTC)、栄養因子のVEGF 受容体VEGFR2 の拮抗薬(PTK787)および抗VEGF 中和抗体、NGF 受容体TrkA の阻害薬(K252a)および抗NGF 中和抗体PM8 の拮抗薬(BCTC)を購入して解析を加える予定である。
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Research Products
(13 results)