2013 Fiscal Year Research-status Report
新たに開発した動物モデルを用いた末梢動脈疾患に伴う疼痛機序の解明
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24790575
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
堀 紀代美 金沢大学, 医学系, 助教 (40595443)
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Keywords | 末梢動脈疾患 / PAD / 虚血性疼痛 / 冷痛覚過敏 / TRPA1 / TRPM8 |
Research Abstract |
【目的】末梢動脈疾患(PAD)で見られる虚血性疼痛のメカニズムを明らかにするため、本年度はPADモデルラットの虚血肢にみられる冷痛覚過敏の解析を行った。 【方法】昨年度同様全身麻酔下でラットの総腸骨動脈および腸腰動脈を結紮することにより下肢の血流を阻害したPADモデルラットを作成し、機械刺激、熱刺激に加え、皮膚の冷刺激に対する疼痛行動を観察した。また、動脈結紮によって痛覚が亢進したラットに、近年冷刺激により活性化されると報告されるイオンチャネルTRPA1の拮抗薬(HC-030031)およびTRPM8の拮抗薬(capsazepine)を投与して冷痛覚行動の変化を確認することにより行動薬理学的に検討を行った。 【結果】PADラットでは処置後皮膚の機械的痛覚過敏は1週まで、筋の機械的痛覚過敏は3週まで確認され、間歇性跛行は12週まで続いた。それに対し、皮膚の冷刺激に対しては処置後7日目までは特に行動変化は見られなかったものの、10日目から14日目まで冷刺激に対して痛覚過敏行動が認められた。冷痛覚過敏が認められた14日目の行動薬理学的評価によりTRPA1拮抗薬は皮膚の冷痛覚過敏を抑制した。 【考察】本年度の成果により、PADラットは、慢性的な筋の痛覚過敏と間歇性跛行に加え、冷痛覚過敏を呈し、末梢性動脈疾患の低温環境での痛み発現のメカニズムの解明に有用であることがわかった。また、下肢の血流阻害による冷痛覚過敏には、TRPA1 の活性化の関与が示唆され、PADにおける痛覚過敏の発現に重要と思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の成果により開発した慢性的な筋の痛覚過敏と間歇性跛行を呈するPADモデルラットについて、これまでの機械刺激や熱刺激による痛覚行動に加え、低温度刺激に対してして冷痛覚過敏を呈することが明らかになった。本モデルの更なる解析によりPADの冷痛覚過敏のメカニズムを明らかにできる。 また、行動薬理評価の成果より、下肢の血流阻害による皮膚の冷痛覚過敏には、TRPA1の関与が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度、25年度に得られた結果を基にして、平成26年度はPAD モデルラットの痛覚の変化に関与する分子メカニズムを明らかにすることを目的に成長因子の関与について行動薬理学的評価と知覚神経の免疫組織学的評価を実施する。 成長因子の行動学的評価については、動脈結紮によって痛覚が亢進したラットに成長因子のVEGF 受容体VEGFR2の拮抗薬および抗VEGF 中和抗体、NGF 受容体TrkA の阻害薬および抗NGF中和抗体をそれぞれ投与して疼痛行動の変化を評価する。 知覚神経の免疫組織学的評価については、動脈結紮によって痛覚が亢進したラットの後根神経節(DRG)において、免疫組織化学的にイオンチャネルTRPM8、TRPA1、そして、VEGF受容体VEGFR2およびNGF受容体TrkAの発現を検索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度から26年度にかけて行う計画であった成長因子の行動薬理学的評価を26年度に開始する。そのため、25年度に予定していたVEGF 受容体VEGFR2の拮抗薬および抗VEGF 中和抗体、NGF 受容体TrkA の阻害薬および抗NGF中和抗体の購入は、その予算を繰り越して26年度に実施するため。 平成26年度は免疫染色に使用する抗体薬剤の購入が中心となる。イオンチャネルTRPA1 、TRPM8 、成長因子のVEGF 受容体VEGFR2およびNGFの抗体(1次抗体)および2次抗体を購入してその発現に関する解析を加える予定である。平成25年度に購入しなかった成長因子の拮抗薬および中和抗体はその予算を繰り越して平成26年度に購入する。 また本研究の最終年度である平成26年度にはこれまでに得られた研究成果を広く社会に発表・報告するための国内外の関連学会への参加、および、国際的に評価された学術雑誌へ論文掲載のために、旅費および学術論文投稿料への使用も予定している。
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Research Products
(6 results)