2012 Fiscal Year Research-status Report
選択的COX-2阻害剤の椎間板性腰痛に対する効果の基礎研究
Project/Area Number |
24790579
|
Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
澤地 恭昇 東京医科大学, 医学部, ポストドクター (20571152)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 腰痛 / 椎間板変性 / 神経侵入 / NGF / MMP / NSAIDs / Prostaglandin |
Research Abstract |
近年,椎間板性腰痛の分子機構が明らかになりつつあり,椎間板変性に伴い近傍の神経線維がその中心部に侵入すると考えられている.椎間板変性には細胞外基質分解酵素が,また神経線維侵入には神経成長因子(NGF)が重要な役割を担うが,これら発現調節機構は不明である.本研究は,腰痛保存的治療に汎用される選択的COX-2阻害剤の有用性および問題点を明らかにし,またその問題点を克服しうる新規薬剤開発の礎となる研究を行うことを目的とし検討を行っている. 昨年度は,ヒト椎間板細胞の培養法として,2次元の単層培養法と3次元のalginate beads培養法を試み,その結果,単層培養およびalginate beads培養法ともに炎症性サイトカインであるIL-1による当該遺伝子群の発現誘導が認められ,培養法による相違は観察されなかった.これらの結果より以降の研究には単層培養法を用いて検討を行った. 単層培養したヒト椎間板細胞において,IL-1により誘導されるMMP-1およびNGF発現は選択的COX-2阻害剤により有意に促進することが明らかとなった.逆にこれら遺伝子群の発現促進は,外因性にPGE2を添加することにより抑制されたことら,PGE2は当該遺伝子群の発現をnegative feedback様に抑制する生理活性を有することが判明した.さらにPGE2によるMMP-1およびNGF発現抑制機序は,EP1おいびEP2/4受容体を介することが明らかとなった. 以上より,炎症メディエーターであるPGE2は,急性炎症・疼痛に関与する一方で,椎間板性腰痛の病態形成に関わる細胞外基質分解酵素およびNGF発現に対して抑制効果を持つことが初めて明らかとなった.従って,選択的COX-2阻害剤によるPGE2産生抑制を目的とした腰痛治療の限界が強く示唆され,今後,腰痛病態形成を制御しうる新規薬剤開発が期待される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は,ヒト椎間板由来細胞の培養法の確立とCOX-2阻害剤による細胞外基質分解酵素およびNGF発現増強の分子機構の解明を研究計画としたが,培養法の確立を行いながら,炎症性サイトカインであるIL-1による当該遺伝子群の発現調節機構の詳細(濃度依存性,継時的変化)を平行して行い,それらの特徴を理解することができ,本研究遂行に向けた詳細な条件を決めることが出来た.この成果により,COX-2阻害剤の効果およびPGE2の生理活性発現の分子機構の解明がおおむね予定通り進んだ. しかしながら,siRNAによる各種EP受容体のノックダウンを試みたが成功せず,各種受容体の拮抗剤による同定にとどまってしまったことは当初の計画と異なってしまった. また,細胞内情報伝達経路の解明においても,preliminaryな結果は得られているものの,完全な解明には至っていない.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果をもとに,本年度はPGE2による細胞外基質分解酵素およびNGF発現抑制の分子機構を,細胞内情報伝達経路等を含め詳細に解析し,当該遺伝子群の発現を制御しうる標的分子の同定を引き続きみる. さらに,in vivoにおける選択的COX-2阻害剤の効果を検討するため,ラットにおけるニコチン誘発椎間板変性モデルを用いて,培養細胞系で得られた結果の生体内での再現を試みる研究を計画している.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,昨年度の基礎結果に基づき選択的COX-2阻害剤による細胞外基質酵素およびNGF発現増強の分子機構およびPGE2によるEP2/4を介した当該遺伝子発現抑制の細胞内情報伝達経路を解明すべく,各種リン酸化阻害剤,シグナル分子に対するsiRNA関連試薬,cAMP関連試薬の購入する.また,これら試薬の効果を確認するため,細胞外基質分解酵素群およびNGFに対する抗体,ELISA kitおよび遺伝子解析試薬の購入も予定している.さらに,実験効率を上げるべく,Bio-plexによる網羅的な解析を行うための試薬の購入も計画している. また,in vivoにおける選択的COX-2阻害剤の効果を検討するため,ラットにおけるニコチン誘発椎間板変性モデルの作成およびその解析に必要な実験動物,モデル作成器具および解析試薬等の購入を計画している.
|
Research Products
(8 results)